◇SH2071◇実学・企業法務(第167回)法務目線の業界探訪〔Ⅳ〕建設・不動産 齋藤憲道(2018/09/06)

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実学・企業法務(第167回)

法務目線の業界探訪〔Ⅳ〕建設・不動産

同志社大学法学部

企業法務教育スーパーバイザー

齋 藤 憲 道

 

〔Ⅳ〕建設(ゼネコン、戸建て、下請)、不動産取引

5. 建設に関する紛争解決の仕組み

(1) 指定住宅紛争処理機関「住宅紛争審査会」(住宅品質確保法)による解決

  1. ・ 国土交通大臣は、弁護士会・一般社団法人等であって、紛争処理業務を公正・適確に行うことが できるものを、その申請により「指定住宅紛争処理機関」に指定して公示する[1]。(66条)
  2. ・ 国土交通大臣が、指定住宅紛争処理機関の行う紛争処理業務支援・住宅購入者等の利益保護・住宅紛争の迅速適正な解決を図る「住宅紛争処理支援センター」を1つだけ指定する(82条)。

    1. (注) 公益財団法人「住宅リフォーム・紛争処理支援センター」が指定されている。
    2. 2016年度の新規相談件数は30,163件であった。(「住宅相談と紛争処理の状況 CHORD REPORT 2017」より)
      (内訳)新築等住宅19,759件、リフォーム10,404件
          相談者区分:   消費者84%、消費生活センター・地方公共団体7%、事業者6%、その他3%
          対象となった住宅:戸建住宅79%、共同住宅等21%

(2)「建設工事紛争審査会(建設業法)による解決

 「建設工事の請負契約に関する紛争」の簡易・迅速・妥当な解決を図るため、建設業法に基づいて国土交通省(中央建設工事紛争審査会)及び各都道府県(都道府県建設工事紛争審査会)に設置されるADR(裁判外紛争解決手続)である。

 当事者の申請に基づいて斡旋・調停・仲裁を行う。

  1. 2016年度の建設工事紛争審査会の申請件数は次の通り[2]
  2. (合計132件) 中央33件、都道府県99件、合計132件(斡旋25、調停86、仲裁21)
  3. 当事者類型別:個人発注者→請負人53  法人発注者→請負人19  請負人→個人発注者19
  4.        請負人→法人発注者22  下請負人→元請負人18  元請負人→下請負人1
  5. 工事種類別: 建築工事98、土木工事13、設備工事13、電気工事3、他5
  6. 紛争類型別: 工事瑕疵51、工事遅延2、工事代金争い40、契約解除15、下請代金争い18、他6

(3)「裁判」による解決

  1. ○ 訴訟の現状[3]
     金銭を目的とする建築関係訴訟事件(地方裁判所における民事第1審新受件数、2016年度)には、①建築瑕疵による損害賠償1,498件と、②建築請負代金等471件がある[4]
     平均審理期間(2016年度、速報値)は、①建築瑕疵による損害賠償では25.1カ月を要するが、②建築請負代金等では16.5カ月と相対的に短い。
     
  2. ○ 裁判の専門委員制度(2004年4月から導入)
  3. ・建築、医療、知的財産権、不動産等の専門家(大学教授・研究者等)が裁判所に非常勤で採用される。
    (注) 専門委員の訴訟への関与・指定・任免は、民事訴訟法92条の2、92条の5、92条の7の規定による。
  4. ・ 専門委員は、専門的な事項について裁判所のアドバイザー的立場から分かり易く説明するが、その説明内容は裁判の証拠にならない。また、裁判の当事者から尋問を受けることは想定されていない。
    (注1) 専門委員は、裁判所に所属する非常勤職員(任期2年)であり、常勤職員である裁判所調査官(裁判所の命令を受けて調査・報告する。調査結果は、証拠とされない。)、裁判所職員ではない鑑定人(裁判所から求められた鑑定事項について意見を述べる。この意見は証拠になり、裁判の基礎になる。)と異なる。
    (注2) 専門委員は、訴訟の当事者双方の同意を得たうえで、争点整理・証拠調べ(証人尋問他)・和解勧告に関与する。


[1] 全国52の弁護士会に住宅紛争審査会が設置されている。(2016年3月現在)

[2] 国土交通省資料より

[3] 裁判所HP「司法統計」より。「第一審通常訴訟新受件数―事件の種類別―全地方裁判所」等。

[4] 「建築瑕疵損害賠償」は建物建築に関する設計・監理・施工等の建築瑕疵を理由とし、「建築請負代金等」は建物建築に関する請負代金・工事代金・設計料・報酬金等の請求を理由とするものをいう。なお、金銭目的以外に、「建物を目的とする訴え23,494件」、「土地を目的とする訴え7,437件」がある(いずれも2016年度)。

 

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