◇SH1911◇実学・企業法務(第147回)法務目線の業界探訪〔Ⅲ〕自動車 齋藤憲道(2018/06/18)

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実学・企業法務(第147回)

法務目線の業界探訪〔Ⅲ〕自動車

同志社大学法学部

企業法務教育スーパーバイザー

齋 藤 憲 道

 

〔Ⅲ〕自動車

5. 自動車産業は、大規模ですそ野が広い総合産業

(9) 自動車利用のためのインフラ整備

 道路、交通制御、駐車場等の整備が自動車の安全かつ効果的な運用に欠かせない。

 これに必要な事項を定めた主な法律を、次に列挙する。

  1.   道路交通法
    運転免許(64条、84条1項)、横断歩道(2条1項4号)、信号機(2条1項14号)、道路標識(2条1項15号)、道路標示(2条1項16号)
    自動車教習所(98条~100条、97条)
  2.  道路法
    道路に関し、路線の指定・認定、管理、構造、保全、費用負担区分等を定める。(1条)
  3.  高速自動車国道法
    道路法以外に、路線の指定・整備計画・管理・構造・保全等について定める。
  4. (参考)道路の種類[1] ※以下の記載は、(左側)道路管理者=(右側)費用負担
    1 高速自動車国道 国土交通大臣=高速道路会社(一部、国・都道府県・政令市)
    2 一般国道    国土交通大臣(直轄国道)/都道府県・政令市(補助国道)=国・都道府県・政令市
    3 都道府県道   都道府県・政令市=都道府県・政令市
    4 市町村道    市町村=市町村
  5.  道路整備特別措置法
    道路法・高速自動車国道法の例外を定め、有料道路について規定する。
  6.  道路標識設置基準[2]
    道路法上の「道路」に道路管理者が道路標識を整備する場合に適用する。                      
  7.  駐車場法
    都市における、一般公共の用に供する駐車場施設の整備に必要な事項を定める[3]
    1 路上駐車場[4]
    2 路外駐車場(都市計画駐車場、届出駐車場、建築物の駐車施設附置義務、他)[5]
  8. (参考)駐車場法の運用に関係する法令(例)
    道路法、道路交通法(駐車)、都市計画法(商業地域、第1種住居地域等)、都市公園法、建築基準法、消防法、都道府県の駐車条例(大衆の集合場所や倉庫・工場等に駐車場の附置義務等)

(10) 運送業(旅客、貨物、宅配便)

  1.  旅客[6]  一般旅客自動車運送事業(乗合、貸切、乗用)、特定旅客自動車運送事業
  2.  貨物[7]  一般貨物自動車運送事業、特定貨物自動車運送事業、貨物軽自動車運送事業
  3. 「物流総合効率化法」に関係する新業態の出現への対応

(11) 不具合情報の収集、事故相談、紛争解決の仕組み(例)

 自動車は社会生活に欠かせない重要な資産だが、一たび事故が起きると、生命にかかわる重大事故になることが多く、その場合、被害者だけでなく加害者も心身・金銭の両面で大きな苦痛と負担を背負うことになる。

 このような経緯を踏まえて、自動車の不具合(欠陥を含む)をできるだけ早期に発見してメーカーに安全対策を促すとともに、交通事故トラブルの公平・公正かつ迅速な解決を図る目的で、さまざまな組織・団体が編成され、啓発・支援等の活動を行っている。

 以下に、官民の組織等を例示する。

  1. ① 国土交通省「自動車不具合情報ホットライン 0120-744-960」
    自動車の利用者等からの情報を直接受け付け、内容を確認した上で公表する。
  2. ② 苦情、相談
    ・ 総合的な窓口(行政や民間の機関を紹介) 独立行政法人自動車事故対策機構 
    ・ 公的な相談機関
     (事故)市町村の交通事故相談窓口(又は法律相談窓口)
         公益財団法人日弁連交通事故相談センター
     (医療)医療安全支援センター(都道府県、保健所を設置する市及び特別区)
     (福祉)都道府県のリハビリセンター等で、高次機能障害に関する相談に対応
     (交通遺児)公益財団法人交通遺児等育成基金、公益財団法人交通遺児育英会
    ・ 各種の被害者団体
    ・ 保険会社(自動車保険、生命保険)、共済
  3. ③ 紛争解決
    ・ ADR(裁判外紛争解決手続)
     公益財団法人交通事故紛争処理センター、公益財団法人日弁連交通事故相談センター、一般社団法人日本損害保険協会(そんぽADRセンター)
  4. ・ 裁判

 

日本の自動車関連産業と就業人口  日本自動車工業会HP資料より[8]

 自動車関連就業人口529万人(全国比8.3%)

  1. 1 製造部門 81.4万人
    自動車製造業(二輪自動車を含む)18.8万人、自動車部分品・付属品製造業60.9万人、自動車車体・付随車製造業1.7万人
  2. 2 利用部門 269.4万人
    道路貨物運送業171.4万人、道路旅客運送業56.0万人、運輸に付帯するサービス業等37.1万人、自動車賃貸業4.9万人
  3. 3 関連部門 35.2万人
    ガソリンステーション33.6万人、損害保険1.3万人、自動車リサイクル0.3万人
  4. 4 資材部門 39.6万人
    電気機械器具製造業6.3万人、非鉄金属製造業1.7万人、鉄鋼業10.8万人、金属製品製造業3.6万人、化学工業・繊維工業・石油精製業2.0万人、プラスチック・ゴム・ガラス9.3万人、電子部品・デバイス製造業2.7万人、情報通信機械器具製造業0.2万人、生産用機械器具製造業3.0万人
  5. 5 販売・整備部門 103.1万人
    小売業(二輪車含む。新車・中古車・自動車部分品・付属品等)57.7万人、卸売業(二輪車含む。中古車・中古部品・自動車部分品・付属品等)19.0万人、自動車整備業26.4万人


[1] 高速自動車国道法4条、道路法5条、7条、8条

[2] 道路標識には「道路管理者」が設置するものと「都道府県公安委員会」が設置するものがある。(同基準2‐6)

[3] 駐車場法1条、2条1号、2号

[4] 駐車場法5条

[5] 駐車場法3条、10条、12条、20条、20条の2

[6] 道路運送法3条以下

[7] 道路運送法46条以下、貨物自動車運送事業法2条

[8] 総務省「労働力調査(平成27年平均)」、経済産業省「平成26年工業統計表」「平成24年簡易延長産業連関表」等をもとに作成されたもの。

 

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