◇SH1914◇消費者庁、「広告表示に接する消費者の視線に関する実態調査報告書」を公表(2018/06/19)

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消費者庁、「広告表示に接する消費者の視線に関する実態調査報告書」を公表

――視線の動きの分析等をもとに、求められる表示方法等を整理――

 

 消費者庁は6月7日、「広告表示に接する消費者の視線に関する実態調査報告書」を公表した。

 事業者が商品・サービスの内容や取引条件について訴求する「強調表示」や、例外条件や制約条件などがある旨の「打消し表示」は、わかりやすく適切に行わなければ、一般消費者に誤認され、不当表示として景品表示法上問題となるおそれがある。そこで消費者庁では、平成29年7月に「打消し表示に関する実態調査報告書」(以下、「前回調査報告書」)、平成30年5月に「スマートフォンにおける打消し表示に関する実態調査報告書」を公表し、消費者意識調査の結果に基づき、打消し表示に関する景品表示法上の考え方や事業者に求められる表示方法等を明らかにしてきたところである。

 消費者庁は今般、一般消費者が動画広告、紙面広告およびスマートフォンのWebページを閲覧する際に、どのような表示の見方をしているかについて実態を把握するため、対象者が表示例を閲覧している間の視線の停留やその軌跡、停留時間を計測するとともに、表示の内容を認識していたか否かについてインタビュー調査を行った。そして、これらの調査結果に基づき、各種媒体ごとに打消し表示に関する景品表示法上の考え方や求められる表示方法等を整理したものである。また、「参考資料」として、「打消し表示に関する表示方法及び表示内容に関する留意点」も合わせて公表している。

 以下、今回の実態調査報告書の概要を紹介する。

 

短時間の動画広告を視聴する一般消費者の表示の見方を踏まえた留意点

 動画広告を視聴する一般消費者は、次々と切り替わる文字、音声、画像等のうち、限られた時間の中で注意を向けた表示の内容を認識する。画面が表示された時間に一般消費者が認識できる情報の量には制約があり、さらに、注意を引き付ける表示は強い印象を残す一方、他の表示はすぐに消えて印象に残らない。

 今回の調査では、短時間の表示画面において、文字と音声が同じ内容を表示している場合、文字と音声が別の内容を表示しているときと比べて、表示の内容が認識されやすい傾向がみられた。

 また、この場合であっても、注意を引き付ける商品画像等が表示されているときは、音声が流れる間に画像の方に視線が停留し、文字の表示の内容を認識できない可能性があることが示された。

 これらの結果及び前回調査報告書で示した考え方を踏まえ、動画広告に関する景品表示法上の考え方を改めて整理すると、一般消費者の注意を引き付けるような画像、音声、その他目立つ表示と共に、商品・サービスの選択にとって重要な内容の打消し表示が表示されており、画面の表示されている時間内に、当該打消し表示に一般消費者の注意が向かないような場合は、景品表示法上問題となるおそれがある。

 動画広告において、商品・サービスの選択にとって重要な内容を表示する場合には、例えば、文字と音声で同じ内容を表示するとともに、当該表示の内容だけに一般消費者の注意が向くように、他の情報を同一画面に含めないようにすることが求められる。

(報告書ではこの後、複数の情報を画面に表示する際に留意すべきことについて、今回調査を実施した類型に即して整理している)

 

紙面広告を閲覧する際の一般消費者の表示の見方を踏まえた留意点

 今回の調査の結果、紙面広告を閲覧する一般消費者は、動画広告(Webサイトに掲載されているような場合を除く)のように閲覧する際に時間的な制約がなく、能動的に見ることができるにもかかわらず、強調表示に注意を向けた場合に、当該強調表示から離れた箇所には注意が向かない可能性があり、強調表示から離れた箇所に表示された打消し表示については認識されにくい傾向があることが判明した。

 このことから、打消し表示が強調表示から離れた箇所に表示されている場合、強調表示に隣接した箇所に、離れた箇所に打消し表示があることが認識できるような記述や記号などがないときは、一般消費者が打消し表示の内容を認識できないおそれがあることに留意する必要がある。特に、(紙面広告の隅に掲載されており、)小さい文字だけで構成された注意書きが一括して表示されている箇所は、一般消費者の注意が向かない可能性があることも今回の調査において判明した。打消し表示をこのような表示のみで行うことは強調表示に関して一般消費者の誤認を招くおそれがあることに留意し、強調表示と打消し表示を一体として認識できるように表示する必要がある。

 今回の調査結果から、打消し表示の内容を理解するために他の情報と関連付けて理解する必要がある場合であって、打消し表示とそれも関連する情報が一体として認識できるように表示されていないときは、一般消費者が打消し表示の内容を認識できないおそれがあることに留意する必要がある。

 さらに、今回の調査で明らかになったように、打消し表示が強調表示に隣接した箇所に表示されている場合であっても、強調表示と文字のバランスが著しく悪いような小さな文字で表示されていたり、強調表示と違う字体や色で表示されていたり、打消し表示の背景が強調表示の背景と異なっていたりするときは、一般消費者が強調表示と打消し表示を一体として認識できないおそれがあることにも留意する必要がある。

 これらのことからすると、打消し表示は、強調表示に隣接した箇所に表示した上で、文字の大きさのバランス、色、背景等から一般消費者が両者を一体として認識できるよう表示することが求められる。また、打消し表示の文脈において、強調表示との関係性がよく理解できるように、その表現振りにも工夫することも求められる。

 

スマートフォンのWebページを閲覧する際の一般消費者の表示の見方を踏まえた留意点

 スマートフォンの表示に対する一般消費者の接し方として、自身の関心のある情報や目立つ表示だけを拾い読みする傾向があるが、今回の調査でも次のことが確認された。

  1. ① 目立つ表示には長く視線が停留しやすい一方、それと隣接した箇所にある目立たない表示には視線が停留しにくい。
  2. ② 注意を向けた表示から離れた箇所にある表示には視線が停留しにくい。

 このため、例えば、スマートフォンで強調表示に隣接した箇所に打消し表示が表示されていたとしても、目立つように表示された強調表示や画像に注意が引き付けられる場合であって、他の表示等によっても強調表示よりも小さな文字の打消し表示に気付かないものであるときは、景品表示法上問題となるおそれがある。

 強調表示の近くに打消し表示の存在を連想させる「※」等の記号が表示されていたとしても、強調表示が表示されている位置から離れた別の画面に打消し表示が表示されている場合、当該打消し表示が離れたところに表示された強調表示に対する打消し表示であることについて、他の表示等によっても認識できないものであるときは、景品表示法上問題となるおそれがある。

 スマートフォンのWebページを閲覧する際、様々な情報を関連付けて理解することが難しいという特徴は、今回の調査で全ての表示例に共通してみられた。このことからすると、打消し表示の内容が正しく認識されるためには、必要な情報を関連付けて理解できるように表示した上で、強調表示と打消し表示とが一体として認識されるように、強調表示に隣接した箇所に打消し表示を表示するとともに、例えば、文字の大きさのバランス、文字の色や背景の色等に留意することが求められる。

 

おわりに

  1. 《消費者に向けて》
  2.    今回の調査では、例えば、閲覧時間に制限がない紙面広告やスマートフォンのWebページにおいても、強調表示に隣接した箇所に表示された打消し表示を見落としている者が多くみられた。
  3.    また、これらの者の中には、例えば、大きな文字で目立つように表示された強調表示に注意が引き付けられたことにより、打消し表示には注意が向かなかった者がいた一方で、インタビュー調査において、(i)文字が小さい表示はあまり意味がないのではないと思ってしまう、(ii)とりあえず大きい文字だけを見て、小さな文字は見ない、(iii)文字が小さいと読み飛ばしてしまうといった意見も聞かれている。
  4.    また、前回調査報告書では、Webアンケート回答者1,000 人のうち、58.9%が普段から新聞広告の打消し表示を読まないと回答しており、広告表示に接する際、打消し表示を読まない一般消費者が相当数いるという実態を明らかにしている。
  5.    これらのことからすると、強調表示に隣接した箇所にも打消し表示が表示されていることがあるので、消費者においても、普段から、隣接した箇所も含めて、例外条件、制約条件等に注意して見ることが、誤認を防ぐ有効な手段であるといえる。
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  7. 《事業者に向けて》
  8.    今回の調査の結果、各媒体の広告表示を閲覧する一般消費者が、どういう表示に注意が引き付けられやすいか、要素別の要因が明らかになった。
  9.    事業者においては、前回調査、スマートフォンにおける調査及び今回の調査の結果を踏まえ、商品・サービスの選択にとって重要な内容の打消し表示を一般消費者が認識できない場合は、景品表示法上問題となるおそれがあることに留意し、一般消費者が適切に打消し表示の内容を認識できるように、要素別の特徴を生かした適切な情報提供を行う必要がある。

 

 

  1. 消費者庁、「広告表示に接する消費者の視線に関する実態調査報告書」の公表について(6月7日)
    http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/#180607
  2. ○「広告表示に接する消費者の視線に関する実態調査報告書」の公表について
    http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_180607_0001.pdf
  3. ○ 広告表示に接する消費者の視線に関する実態調査報告書
    http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_180607_0002.pdf
  4. ○ 広告表示に接する消費者の視線に関する実態調査報告書(概要)
    http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_180607_0003.pdf
  5. ○ 参考資料 打消し表示に関する表示方法及び表示内容に関する留意点(実態調査報告書のまとめ)
    http://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_180607_0004.pdf
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  7. 参考
    SH1304 消費者庁、「打消し表示に関する実態調査報告書」を公表(2017/07/25)
    https://www.shojihomu-portal.jp/article?articleId=4083196
  8.   SH1872 消費者庁、「スマートフォンにおける打消し表示に関する実態調査報告書」を公表(2018/05/30)
    https://www.shojihomu-portal.jp/article?articleId=6276144

 

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