◇SH1919◇チェックアンドバランスが機能するコーポレートガバナンス(7) 饗庭靖之(2018/06/21)

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チェックアンドバランスが機能するコーポレートガバナンス(7)

首都東京法律事務所

弁護士 饗 庭 靖 之

 

8 次期代表取締役候補者や業務執行取締役が、代表取締役の意向に左右されないことを保証する制度的仕組み

 取締役会が、代表取締役などの業務執行者に対する監督機能を果たすために、次期代表取締役候補者や業務執行取締役などの主として社内出身の取締役が、これらの者についての実質的な人事権を有する代表取締役に支配されないようにすることが必要である。そのことを実現する制度的仕組みを検討する。

 このことをまず、業務執行者の人事のうち最も重要な次期代表取締役の選定手続につき検討する。

 会社事業を持続的に発展させ、会社価値を向上させるために判断していく主体である次期代表取締役の選定は、会社の命運に関わる重要事項である。

 次期代表取締役候補者が、現代表取締役の意向に沿うように行動することを強いられる可能性を排除するためには、次期代表取締役の選定過程から恣意性を排除する必要がある。

 次期代表取締役を恣意性なく選定するためには、人選についての基準の明確性が確保され、公正に候補者が「選抜」されることと、代表取締役たる能力を獲得するように「育成」していくことを内容とする「後継者計画」が行われることが必要である。

 この点につき、東京証券取引所・有価証券上場規程436条の3のコーポレートガバナンス・コード(以下「コーポレートガバナンス・コード」という。)は、補充原則4-1③で「取締役会は、会社の目指すところ(経営理念等)や具体的な経営戦略を踏まえ、最高経営責任者等の後継者の計画(プランニング)について適切に監督を行うべきである」としている。

 後継者計画の内容は、候補者を「選抜」する過程と、候補者を「育成」していく過程を併行して行い、最終的に次期代表取締役を選定するに至るまでの過程を取締役会が監督して行っていくことである。

 候補者を「選抜」する過程は、会社の経営理念や経営戦略に照らして、最高経営責任者として必要な能力についての評価基準を作り、評価基準に適う人材を社内外から次期代表取締役候補者として選抜することである。

 候補者を「育成」していく過程は、会社事業の財・サービスの顧客への提供を通じて顧客満足度を上げていくことを会社全体として合目的的に事業活動させることができる能力を備えるよう候補者を育成していくことである。

 社内の事業環境や人材に精通していない社外者が これらの後継者計画を行う過程でイニシアティブをとっていくことは難しいであろうことからは、候補者の選定方針と候補者リストの第一案は、現在の最高経営責任者側が作成し、取締役会がそれが妥当なものかを審査して候補者の選抜の内容を確定し、その実行過程を監督することが必要だと考えられる[1]

 会社の企業価値向上のために必要な経営者の能力の基準を定め、候補者にその能力を備えるよう育成するためにキャリアパスを用意するのも、現在の最高経営責任者側が行い、取締役会が、最高経営責任者として必要な能力を候補者に培うための育成の過程が妥当なものかを審査し、育成を実行していく過程を監督することが必要だと考えられる。

 以上のように、社外取締役を含めた取締役会による監督の下で代表取締役個人の意向に依存しない、客観的で恣意性が排除された後継者計画の立案と実行により次期代表取締役の選定がなされることが必要である。このことにより、次期代表取締役候補者が現代表取締役の意向に左右されて、行動の独立性に影響を受ける可能性を排除することができる。

 業務執行取締役についても、取締役会の構成員として、業務執行者に対する監視を行っていくためには、代表取締役の意向に左右されて、行動の独立性に影響を受ける可能性を排除することが必要である。このため、次期代表取締役の選定方針と育成計画について取締役会が監督する後継者計画の仕組みが、業務執行取締役やその候補者に対する人事権の行使に対しても、拡げて行われる必要がある。

 次期代表取締役候補者の後継者育成計画は、業務執行取締役の育成、選抜と一体として行われることが適切だと考えられ、取締役会による監督の下での、次期代表取締役と業務執行取締役についての後継者計画が行われるべきと考えられる。



[1] 西本強「次期社長の選定に向けて――後継者計画(サクセッション・プラン)と選定時の対応」中村直人編著『コーポレートガバナンスハンドブック』(商事法務、2017)145頁

 

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