◇SH0146◇ミャンマー:M&A法制と実務(下)  長谷川良和(2014/11/26)

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ミャンマー・M&A法制と実務(下)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 長谷川 良 和

 前回、「ミャンマー・M&A法制と実務(上)」の中で、ミャンマーでM&Aの対象となる主な会社の分類を紹介するとともに、ミャンマーにおけるM&Aの主な形態のうち、(1)株式譲渡又は新株発行による外国企業による株式取得の方法について、その概要を説明した。本稿は、その続編として、(2)ミャンマーの会社の持株会社であるミャンマー以外の国の会社の株式取得の方法、及び(3)ミャンマーの会社の事業譲受の方法について概要を説明し、上場会社を対象とするM&Aの法制についてもごく簡単に言及したい。

3. M&Aの主な方法(続き)

 (2)     ミャンマーの会社の持株会社であるミャンマー以外の国の会社の株式取得

 ミャンマーの会社の株式を直接取得する場合に加え、実務上は、ミャンマーの会社の持株会社であるミャンマー国外に所在する会社の株式を取得するスキームが検討されることもある。例えば、シンガポール・ミャンマー間の租税条約の利点、シンガポールの低減税率、合弁の設計自由度、政治的安定性その他の事情等を考慮して、ミャンマー国内で設立された会社の買収のために、当該会社の持株会社としてのシンガポールの会社の株式を取得する例等が挙げられる。

 (3)     ミャンマーの会社の事業を譲り受ける方法

 「ミャンマー・M&A法制と実務(上)」で述べたとおり、国内会社の株式を外国企業が取得することは困難な場合が多いため、実務上は、外国企業が国内会社を買収する場合には事業譲受の形態で行うことが少なくない。具体的には、譲受人がミャンマー国内に組成する買収SPC又は既存の外国会社が国内会社の事業を譲り受ける。なお、譲受けの対価として、金銭を交付する方法以外にも、当該買収SPC又は既存の外国会社の株式を交付する方法等が考えられる。

 外国会社及び外国投資承認を得た会社は、それぞれ営業許可で許された事業及び外国投資承認を受けた事業以外の事業を行うことができないことから、事業譲受により譲受人が営業許可で許された事業及び外国投資承認を受けていない新たな事業を行うこととなる場合には、それに応じた営業許可や外国投資承認を取得する必要がある点は留意が必要である。

 (4)     上場会社M&A法制

 2013年7月に証券取引法が成立し、現在、2015年のヤンゴン証券取引所の開設に向けて準備が進められているが、証券取引法上、日本の公開買付に相当するような買収法制は定められていない。なお、投資家及び公衆の利益保護の観点から証券市場に影響を及ぼす欺罔行為や市場操作等は禁止されている。

4. 他の留意事項

 上記の他、M&A等に関し、個別の事業法により、株式保有の制限や規制当局の許認可が必要とされることもある。それ以外にも個々の案件に応じて検討項目は異なることから、実際に案件を検討する場合には、個別の事情に応じ法制や実務を十分確認する必要があろう。なお、現時点では日本の独禁法に見られるような、市場における競争を実質的に制限するM&Aを規制する企業結合法制はミャンマーには存在しないが、現在、競争法が制定準備中であり、近い将来成立することが見込まれている。

 

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