◇SH1571◇コンプライアンス経営とCSR経営の組織論的考察(37)―第3ステップ「行動を考える」の職場討議 岩倉秀雄(2018/01/09)

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コンプライアンス経営とCSR経営の組織論的考察(37)

―第3ステップ「行動を考える」の職場討議―

経営倫理実践研究センターフェロー

岩 倉 秀 雄

 

 前回は、組織風土改革運動の途中で事件報道が再燃し、第3ステップの職場討議が沈滞に向かった時に、関東評議会委員長の講演によって、組織の原点や社会的役割を気付かされ、組織成員が感銘を受けて運動が再び盛り上がったことを述べた。

 今回は、その第3ステップ「行動を考える」の職場討議結果について述べる。

 

【第3ステップ「行動を考える」の職場討議】

 これまでの運動は、第1ステップで「事件は何故起きたのか」を反省し、その反省に立って第2ステップで「新生○○のあるべき姿」を考えてきた。第3ステップの職場討議は、そのあるべき姿になるために、組織として、職場として「どんな行動を起こすべきか」について具体的に考えるもので、その内容は下表のとおりであった。

 

表.運動の第3ステップ「行動を考える」の議論のまとめ
(チャレンジ「新生・○○」運動NEW No.4を基に筆者がまとめた)

1. 信頼回復のために必要な行動は何か

 

  1. ⑴ 組織自身の行動
  1. ① 農協の原点に返り、全役職員が理念と行動規範を共有化する
    (私たちは、当然のことだが、「組織人である前に常識ある社会人」にならなければならない。また組織理念や行動規範を役職員に徹底するためには、教育・研修だけではなく、あらゆる機会を活用してシグナルを発しなければならない。)
  2. ② 組織風土改革を実行し開かれた組織づくりを行う
    (今回の運動では、「一人一人が自分で考え行動し、上に対して自由にものが言える組織」に組織風土を変えようという声や、情報の受発信を活発にして社会と積極的にコミュニケーションを行う「開かれた組織」になろうという声が多かった。)
  3. ③ 管理・牽制機能を強化する
    (事件により、製造部門への牽制機能の不十分さが指摘されたため、専務直轄の品質保証部を設置して、乳業・購買両部門に対する品質保証上の牽制が働くようにした。今後は、資源を重点的に投入し、実際に機能が発揮できるようにしなければならない。)
  4. ④ 役職員教育を徹底する
    (役職員が組織理念の「酪農家のロマンと生活者の安心をつなぐスペシャリスト」になるためには、精神面のバックボーンだけではなく、国際的に通用する高度な専門性を備えて、ステークホルダーの期待と要請に応える必要がある。)
  5. ⑤ 広報活動を充実する
    (事件により、広報活動の重要性を内外から指摘された。今後は、より一層の広報活動強化が必要である。)
  1. ⑵ 社会への行動
  1. ① 財やサービスによる価値の提供
    (生活者に対して「おいしくて安全な牛乳・乳製品の提供」、酪農家に対して「安価で良質な生産資材や酪農・農協経営ノウ・ハウの提供と生乳の安定購入」という組織の基本的役割を果たし続けることで、信頼を回復する。)
  2. ② 社会活動に積極的に参加する
    (近年、組織の社会的役割が厳しく問われている。今回の事件では、それを身に染みて感じることになった。私たちは積極的に社会的活動に参加するべきではないかという意見が多数寄せられた。)
  3. ③ 開かれた組織を実現する
    (これまでの議論で、私たちは、組織を開き、情報を伝え、社会の信用を得て、新しい仲間を増やすべきだとの声が多数寄せられた。)
 

2. 職場、地域、組織の行動アイディア

 

  1. ⑴ 職場の行動アイディア
  1. ① 日ごろから、組織理念・行動規範・事業内容を学ぶ機会を持つ
  2. ② この運動を続け、一人一人が意見を出しやすい環境を作る
  3. ③ 役職員が自ら自組織の製品利用に努める
  4. ④ 全役職員が身近な利用者を増やす
  5. ⑤ 工場の施設を定期的に地域に開放する
  6. ⑥ 酪農祭を継続的に実施する
  7. ⑦ 重要事項を文書回覧するだけではなく、密接な打ち合わせにより実施し、コミュニケーションを深める
  8. ⑧ 工場毎に、直売所を設置する
  1. ⑵ 地域への行動アイディア
  1. ① 地域主催イベントに積極的に参加する
  2. ② 地域の福祉施設や教育施設に商品を無償提供する
  3. ③ 地域のボランティア活動に参加する
  4. ④ 生活者のフォーラムや公聴会を開催する
  1. ⑶ 組織全体の行動アイディア
  1. ① チャレンジ「新生・○○」運動の継続
  2. ② 定期的な情報発信(メディア、会員、生協、地域に対して)
  3. ③ 役職員・協力会社社員への定期的な教育・研修の実施
  4. ③ 所場間、会社間交流による情報・認識の共有化
  5. ④ ホームページによる情報発信(当時は少なかった)
  6. ⑤ 提案制度の充実・推進
  7. ⑥ 直営店の全国展開

 以上、様々のアイディアが提案された。本部事務局は、それを運動ニュースに掲載し、各部署の活動を実施する際の参考にできるようにした。

 第3ステップの討議期間中には、全国で工場開放、酪農祭、地域イベントへの参加、商品の無償配布等を地域の会員農協と共に実施し、提案されたアイディアを実践した。

 次回は、事務局員の第3ステップへの感想と、第1ステージの完結としての第4ステップ「行動宣言」の採択について述べる。

 

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