◇SH1948◇チェックアンドバランスが機能するコーポレートガバナンス(9) 饗庭靖之(2018/07/05)

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チェックアンドバランスが機能するコーポレートガバナンス(9)

首都東京法律事務所

弁護士 饗 庭 靖 之

 

10 OECD等で求められている社外の独立取締役による会社経営のチェック機能

 (1) OECDのコーポレートガバナンス原則

 OECDのコーポレートガバナンス原則は、いずれの国においても社会的に重要な存在となっている会社について、透明性があって公正な運営が行われることが社会にとって必要であるとの目的意識の下に、先進国間のコンセンサスとして作成されたものであり、尊重される必要がある。

 OECDのコーポレートガバナンス原則は、取締役会には十分な数の独立した取締役メンバーがいなければならないという原則を唱道している。

 OECDの2004年、2015年発表のコーポレートガバナンス原則は、「取締役会の責任」で「取締役会は、会社の業務について客観的な独立の判断を下すことができるべきである。」とし、その注釈で「経営業績の監視、利益相反の防止、会社に対する競合する要請の間にバランスをとることの義務を果たすために、取締役会が客観的な判断を下せることが重要である。これは、経営陣との関連での独立性と客観性を意味するものであり、取締役会の構成・構造についても含意を有するものである。かかる状況において取締役が独立であるためには、通常、十分な数の取締役会メンバーが経営陣から独立していることが必要とされるであろう。」としている。

 そして、取締役の客観性を確保するための要件として、「会社や関連会社によって雇用されていないこと」「会社やその経営陣と密接な関係にないこと」「支配株主やその他の支配主体からの独立」などを例示している。

 (2) 社外取締役の必要性

 OECDのコーポレートガバナンス原則は、十分な数の独立した非執行の取締役メンバーがいなければならないとしているが、この社外取締役によるモニタリング機能を求める国際的な潮流は、代表取締役の経営者支配を防ぐという取締役会の存在意義を実効的にすることを目的としており、この流れに抗することはできない。

 我が国でも、会社法や東京証券取引所の上場規則で、社外取締役を取締役会メンバーとすることが促されたり、義務付けられ、更にその強化が検討されているが、これに対し、社外取締役を取締役会メンバーとすることの趣旨をよく理解して対応していく必要がある。

 社外取締役を取締役会メンバーにすることの理由は、第一に、取締役会を構成する取締役は、代表取締役をはじめとする業務執行者への監督を行っていく任務があるが、このことは、会社内の人事権に服している社内の人よりも、社外にいて、代表取締役から独立している社外取締役が、よくその任務を果たしうるのは明らかであるからである。社内出身の取締役に、業務執行者の監視機能を果たすことを期待するためには、業務執行取締役に対する代表取締役による人事権の行使によって、代表取締役の意向に従うことを強いられる可能性を徹底して排除することが必要である。

 社外取締役を取締役会メンバーとすることが求められるのは、第二に、代表取締役などの業務執行者が行う経営判断事項のうち、会社と業務執行者の利益が相反する場合が多くあるので、業務執行者から独立した者が、会社の利益が守られていることを確認する必要があるからである。

 このようなチェックが必要な場合として、①業務執行者が会社との間で行う契約、②業務執行者の行う会社の競業行為のような典型的な場合はもちろんのこと、③業務執行者の選任・解任案の作成、④業務執行者の報酬案の作成、⑤会社株式の発行や取得などにおいては、会社と代表取締役をはじめとする業務執行者との間の利益が相反するおそれがある。

 これらの利益相反のおそれがある事項についての意思決定をするにあたっては、代表取締役の人事権に服している業務執行者から独立している社外取締役によって、会社の利益が守られる適正な意思決定であるかどうかの評価が尊重される必要がある。

 以上のように要約される社外取締役に対するニーズが相まって、取締役会が経営者に対する監督機能を適切に発揮するためには、取締役会の構成メンバーの相当数が独立した非執行の取締役であることが必要であると考えられている。

 (3) 社外取締役の取締役会における役割

 アメリカの上場規則は、独立非執行の取締役が多数となることが取締役会が客観的に適正な判断を下せるために必要だとして、社外取締役が過半数となるよう強制している。取締役会は経営機能と監視機能を有するとされるが、取締役会において社外取締役が過半数の議決権を持つとき、取締役会は業務執行者への監督機能に重心が大きく傾くことになる。

 わが国では、取締役会が経営機能と監督機能のいずれに軸足を置くかは、会社の組織を監査等委員会設置会社や指名委員会等設置会社にするかという判断と併せ、会社が、定款において、自治的に決する事項である。

 我が国の株式会社の多くの監査役会設置会社の場合、取締役会は業務執行の決定という経営機能と業務執行者への監督機能を併せ持っているが、取締役会では業務執行の実態を知悉している業務執行取締役と、独立性を有する社外取締役とが合議し、経営判断について責任のある決定が行われることに尽力し、社外取締役と業務執行取締役がともに業務執行者への監督機能を果たすための監視を行っていくことが必要である。

 

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