◇SH1967◇中国:国家市場監督管理局の創設に伴う国家工商行政管理総局の解体、独占禁止法執行の一元化 川合正倫(2018/07/13)

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中国:国家市場監督管理局の創設に伴う国家工商行政管理総局の解体、独占禁止法執行の一元化

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 川 合 正 倫

 

 2018年3月17日に日本の国会にあたる全国人民代表大会において「国務院機構の改革方案」が承認された。これまで複数の機関に分散又は交差していた行政機能を再編することにより行政効率の向上を狙った措置であり、今後は再編された行政機構による取締りが一段と強化されることが予想される。

 この方案に従い、日系企業にもなじみのある国家工商行政管理総局、国家食品薬品管理総局、国家品質監督検査検疫総局といった行政機構は解体され、これらの職責は新設される国家市場監督管理局に移管されることになる。また、従来の国税局と地方税務局による租税徴収管理体制は廃止され、省レベル以下の国税と地方税機関は統合される。

 今回の国務院機構改革の範囲は多岐にわたるが、本稿では外資企業と特に関係が深い国家市場監督管理局の新設について紹介する。

 新たに設立される「国家市場監督管理局」は市場の総合的な監督管理、統一的登記及び情報開示、市場秩序の規範化及び維持、独占禁止法に関する統一的法執行といった重要な職権が付与されており、以下に列挙する従来の行政職責が国家市場監督管理局及びその傘下の組織(国家薬品管理局、国務院食品安全委員会、国務院独占禁止委員会、国家知的財産権局)に移管される。

  1. ▷ 国家工商行政管理総局の全職責:

    1. (一) 市場監督管理及び行政法執行
    2. (二) 各種企業及び外国企業の常駐代表機構等の登記登録及び監督管理
    3. (三) 各種市場経営秩序の規範化及び維持、市場取引及びネット商品取引の監督管理
    4. (四) 流通及び商品品質の監督管理(模倣品等の取締り)
    5. (五) 独占協議、市場支配的地位の濫用等の独占禁止法関連(価格独占行為を除く)、不正競争、商業賄賂等の違法行為の調査
    6. (六) 動産抵当の登記管理等
    7. (七) 広告活動の監督管理
    8. (八) 商標登録及び管理、商標権侵害行為等の調査等
  2. ▷ 国家食品薬品監督管理総局の全職責:

    1. (一) 食品安全、薬品、医療器械、化粧品の監督管理法律法規の起草及び行政規定の制定
    2. (二) 食品行政許可実施弁法の制定及び実施監督、全国食品安全検査年度計画の作成、食品安全情報統一公示制度等の構築、重大食品安全情報の公布
    3. (三) 薬品及び医療器械基準、分類管理制度、薬品及び医療器械の研究製造等の管理規範、化粧品監督管理弁法等の制定及び実施監督、薬品及び医療器械の登録管理等
    4. (四) 食品、薬品、医療器械、化粧品監督管理の検査制度、欠陥製品のリコールと処置制度の構築及び実施監督
    5. (五) 食品薬品安全事故の緊急対応制度の構築、事故の緊急対応及び調査処置作業の手配及び指導
    6. (六) 地方食品薬品監督管理作業等への指導及び行政法執行行為の監督
  3. ▷ 輸出入検査検疫に関する職責を除く国家品質監督検査検疫総局の職責:

    1. (一) 品質監督検査検疫業務、品質監督検査検疫に関する法律法規草案の作成
    2. (二) 製品品質誠実信用制度の構築、製品品質重大事項の調査、欠陥製品及び不安全食品リコール制度の実施等
    3. (三) 製品品質安全の監督管理等
    4. (四) 国内食品、食品関係製品の生産加工における品質安全監督管理、加工単位の衛生登記管理等
    5. (五) 特殊設備の安全監察及び監督等
  4. ▷ 国家発展改革委員会の価格監督検査及び独占禁止法執行の職責
     
  5. ▷ 商務部の経営者集中独占禁止法執行の職責
     
  6. ▷ 国務院反独占委員会弁公室のすべての職責

    1. (一) 競争関係政策の作成
    2. (二) 市場全体の競争状況の調査及び評価、評価報告の公布
    3. (三) 独占禁止法ガイドラインの作成及び公布
    4. (四) 独占禁止行政法執行業務への協力

 国家工商行政管理総局、国家食品薬品監督管理総局及び国家品質監督検査検疫総局といった行政組織は解体されることになる。なお、国家品質監督検査検疫総局の輸出入検査検疫に関する職責については税関に移管される。

 また、これまで工商部門、発展改革委員会、商務部に分散して管轄されていた独占禁止法関連の行政権限は国家市場監督管理局が一括して管理することとなり、行政機能の効率化が期待できると同時に、取締りについても一層の強化が図られると考えられる。

 国務院機構改革は既に着手されており、2018年中に概ねの作業は完了する見込みとされている。

 

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