◇SH2021◇環境省、ESG金融懇談会の提言を公表(2018/08/08)

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環境省、ESG金融懇談会の提言を公表

――ESG金融ハイレベル・パネルの設置、環境情報の開示を促すためのインフラ整備、ESG情報リテラシーの向上等――

 

 環境省は7月27日、ESG金融懇談会の提言「ESG金融大国を目指して」を公表した。

 世界でESG投資が一大潮流となる中、わが国でもESG投資が広がりつつあり、投資家と企業の間の対話をさらに充実させていくことなどを通じ、その裾野を広げ、投資先企業における環境行動を一層促していくことが期待されている。また、間接金融においては、経営として環境金融に取り組んでいる銀行は一部にとどまっているのが現状であるが、今後、特に地域において環境金融が広がることにより、環境と経済の両方の観点から地域の持続可能性が高まっていくことが期待されるところである。

 環境省では、金融市場の主要なプレーヤーが一堂に会し、国民の資金を「気候変動問題と経済・社会的課題との同時解決」、「新たな成長」へとつなげる未来に向けた強い意思を共有するとともに、それぞれが今後果たすべき役割について闊達な議論を行うため、「ESG金融懇談会」を今年1月に設置した。同懇談会は7回にわたって開催され、6月29日の第7回懇談会で最終的な提言がまとめられたものである。

 提言では、パリ協定とSDGsが目指す脱炭素社会、持続可能な社会に向けた戦略的なシフトこそ、わが国の競争力と「新たな成長」の源泉であるとの認識の下、直接金融において先行して加速しつつあるESG投資をさらに社会的インパクトの大きいものへと育むとともに、間接金融においても地域金融機関と地方自治体等の協働と、グローバルな潮流を踏まえた金融機関の対応によりESG融資を実現する必要があることが確認された。そのために、自らが各々の役割を果たすと同時に、国も必要な施策を講ずるよう提言する内容となっている。

 以下、今般の提言から、「具体的提言」の概要を紹介する。

 

ESG懇談会提言「ESG金融大国を目指して」

3. 直接金融市場におけるESG投資の加速化

(1) ESG情報をめぐる充実した対話に向けて

  1. ① TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)を踏まえた情報開示の促進
  2.    国は、TCFDに基づく情報開示がインベストメントチェーンにおける対話の中で有効に活用されるよう、企業が気候関連のリスクと機会を財務的に把握し情報開示するあり方を示すことで、国際的なフレームワークづくりに積極的に関与していくとともに、企業による世界への情報発信を促すべきである。また、民間におけるTCFDの枠組みを踏まえた行動を促していくべきである。
     
  3. ② 環境情報の開示を促すためのインフラ整備
  4.    日本企業ならではのポテンシャルを引き出す上で、企業が抱える環境・社会課題と、それに対する経営戦略に関し、投資家と企業が建設的に対話することはきわめて重要であり、世界の潮流を踏まえた環境情報の開示を促すための枠組みの整備とともに、ESG対話プラットフォームといった情報のインフラ整備が不可欠である。

(2) 環境・社会の持続可能性にインパクトを与えるために

  1. ① ESG要素(特に“E”)を考慮した金融商品の拡大(略)
     
  2. ② 機関投資家によるエンゲージメント等(略)
     
  3. ③ 資本市場関係主体による自己評価・開示
  4.    機関投資家や企業を始め直接金融に関わる各主体は、長期的視点をもって、ESG投資に係る現状の取組状況等について自己評価し、その結果を自主的に開示することが期待される。とりわけ機関投資家は、投資先企業を評価する上で拠り所としている自らのESG投資方針やESG投資の実践状況を自らの置かれた状況に応じ、自主的に開示することが期待される。

 

4. 間接金融によるESG融資の促進に向けて

 金融機関がESGに取り組む意義は、融資先のリスクを削減すると同時に、ESGの取組により新たな事業を取り込むチャンスとなり、融資先の企業価値の維持・向上、ひいては地域循環共生圏を支えるサプライチェーンが強化され地域企業の競争力が向上し、地域社会の持続可能性が高まることにある。

(1) 地域のESG金融を通じた地域の社会・経済課題との同時解決

  1. ① 地域の核としての地域金融機関にも求められる姿勢(略)
     
  2. ② ESG地域金融の実現に向けた取組
  3.    地域金融機関には、地域の特性に応じたESG要素に考慮した金融機関としての適切な知見の提供やファイナンス等の必要な支援(ESG地域金融)が期待される。地域金融機関は、ビジネスにつながる可能性をもった地域のESG課題を積極的に掘り起こし、ファイナンスに関する豊富なノウハウを活かして、その新たな事業構築に関与・協力していくことが求められる。
     
  4. ③ 地域循環共生圏の創出に向けた“E”に着目した地域金融(略)
     
  5. ④ 中小企業のESG経営の重要性(略)
     
  6. ⑤ 地域金融エコシステムの再構築(略)
     
  7. ⑥ 地域の課題解決に向けた地方自治体との連携
  8.    地方自治体は、ESG地域金融において求められる自らの役割を認識し、優れた事例等を共有しながら、自らの行動の質を高めていくべきであり、例えば、自治体版の21世紀金融行動原則を立ち上げることを期待したい。

(2) ESG融資の一層の普及

 金融機関にとって、ESG融資は、融資先企業に対して非財務面での優れた点を「見える化」することで事業機会の拡大等アップサイドにつなげるサポートとなるものであり、重要な経営戦略の一つとして対応していくことが必要である。

(3) グローバルな潮流を踏まえた脱炭素社会に向けた間接金融の対応

 グローバルには、間接金融分野でも、将来世代のための気候変動リスクへの配慮は不可欠とする動きも始まっている。金融機関が自らの気候変動課題への取組に関する情報開示を進め、透明性を高めていくことが期待される。

 金融機関は、気候変動課題の解決に資する事業に対する融資等について、定量的に把握し、その規模や特性等を踏まえて開示していくことも有効と考えられる。

 

5. ESG金融リテラシー・研究等

  1. ① ESG情報リテラシーの向上
  2.    ESG投資の質的向上に向け、企業価値とESG情報の関連性について、企業・投資家双方にとって情報リテラシーの向上が重要である。国、主として直接金融に係る金融機関等は、”E”に関しては、国際機関、NGO等と連携してアナリストやスペシャリストの育成プログラムを構築すべきである。
     
  3. ② ESG地域金融を支える人材育成(略)
     
  4. ③ 国民のESG金融リテラシーの向上(略)
     
  5. ④ 優れた社会的インパクトを与えたESG金融の表彰
  6.    ESG金融または環境・社会事業に積極的に取り組み、環境・社会に優れたインパクトを与えた機関投資家、金融機関、仲介業者、企業等について、国は、その取組を評価し、表彰する仕組みを設けるべきである。
     
  7. ⑤ ESG金融に関する研究等(略)

 

6. ESG金融大国の実現に向けて

 ESG金融には長期の視点が欠かせないことから、ESG金融に係る全てのステークホルダーがしっかりと意識を持ち取り組むことが重要である。金融・投資分野の各業界トップと国が連携し、「ESG金融ハイレベル・パネル」(仮称)を設置し、本提言に基づく取組状況を定期的にフォローアップしていくことを提言する。

 21世紀金融行動原則、PRI(責任投資原則)といったESG金融に取り組む内外の枠組みを活かし、官民が連携して、わが国がESG金融大国となるための戦略を打ち出し、国内外に発信していくとともに、着実にその戦略を実施していくことを提言する。

 

 

  1. 環境省、ESG金融懇談会からの提言について(7月27日)
    http://www.env.go.jp/press/105755.html
  2. ○ ESG金融懇談会提言
    https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2018/08/109653.pdf
  3. ○ ESG金融懇談会参考資料集
    https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2018/08/109685.pdf
  4. ○ ESG金融懇談会委員等名簿
    https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2018/08/109655.pdf

 

 

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