実学・企業法務(第161回)
法務目線の業界探訪〔Ⅳ〕建設・不動産
同志社大学法学部
企業法務教育スーパーバイザー
齋 藤 憲 道
〔Ⅳ〕建設(ゼネコン、戸建て、下請)、不動産取引
2. 建設・不動産取引には多くの規制がある
(5) 建設工事から出る廃棄物処理の規制
1) 建設リサイクル法[1]
産業廃棄物の量が増大し、最終処分場の逼迫・廃棄物の不適正処理等の問題が深刻化[2]して、2000年に、廃棄物処理法の不足部分を補うものとして建設リサイクル法が制定された。
この法律の概要は次の通りである。
-
・ 建設廃棄物のリサイクルを促進するため、主務大臣が基本方針を定める(3条)。
(注) 基本方針を告示 2001年(平成13年)1月17日 国土交通省
特定建設資材に係る分別解体等・特定建設資材廃棄物の再資源化等の促進に当たっての基本理念、関係者の役割、基本的方向等が定められた。 - ・ 特定建設資材[3]を用いた建築物等の解体工事、又は、施工に特定建設資材を使用する新築工事等の中の一定規模以上の建設工事[4]について、受注者又は自主施工者に対し、分別解体・再資源化等を義務付ける(9条、16条)。
- ・ 対象建設工事の発注者又は自主施工者は、工事着手の7日前までに都道府県知事に対して分別解体等の計画等を届け出なければならない(10条)。
- ・ 対象建設工事の請負契約においては、解体工事に要する費用等を明記しなければならない(13条)。
- ・ 適正な解体工事を確保するため、解体工事業者の都道府県知事への登録制度を創設(21条~37条)。
2) 廃棄物処理法[5] 1970年制定
「産業廃棄物」の処理方法を詳細に定める法律である。
「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令」は、建設関係の産業廃棄物として次を挙げている。
- ・ 新築・改築・除去に伴って生じた紙くず・木くず・繊維くず・金属くず・ガラスくず・コンクリート破片・廃プラスチック類(2条1~13号)他
- ・ 石綿付着物等は「特別管理産業廃棄物」として特別な処理を行う(2条の4)。
3) 大気汚染防止法[6] 石綿対策強化 2005年
石綿等を発生・飛散させる原因となる建築材料(吹付け石綿、石綿を含有する断熱材、保温材及び耐火被覆材)が使用されている建築物その他の工作物を解体・改造・補修する場合は、作業を行う14日前までに都道府県等に届け出て、石綿飛散防止対策(作業基準[7]の遵守)を行わなければならない。
- (注1) 2005年から「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令及び石綿障害予防規則(厚生労働省)」が施行され、労働者の作業上の安全配慮が周知された。
- (注2)「石綿による健康被害の救済に関する法律」が2007年4月から施行され、労災保険適用事業場の全ての事業主に、一般拠出金の申告・納付を行う義務が課されている(35条)。
[1] 「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」の略称。2000年制定。特定の建設資材について、分別解体・再資源化等を促進する措置を講じ、解体工事業者の登録制度を実施して、再生資源の十分な利用・廃棄物の減量等を通じて、資源の有効利用の確保・廃棄物の適正処理を図る。(建設リサイクル法1条)
[2] 建設工事に伴って廃棄されるコンクリート塊、アスファルト・コンクリート塊、建設発生木材が、産業廃棄物全体の排出量及び最終処分量の約2割(2001年度)、不法投棄量の約6割を占めた(2002年度)。(環境省資料より)
[3] コンクリート、コンクリート及び鉄からなる建設資材、木材、アスファルト・コンクリート
[4] ①建築物の解体工事:床面積80㎡以上、②建築物の新築・増築の工事:床面積500㎡以上、③建築物の修繕・模様替等の工事:請負代金1億円以上、④建築物以外の工作物の解体工事・新築工事等:請負代金500万円以上
[5] 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(1970年制定)
[6] 大気汚染防止法2条12項、大気汚染防止法施行令2条の4、3条の3。詳細は、「建築物の解体等に係る石綿飛散防止対策マニュアル2014.6(環境省)」を参照。
[7] (実施事項の例)作業内容に関する掲示、プラスチックシートによる作業場の隔離・養生、HEPAフィルタを付けた集じん・排気装置による作業場及び前室内の負圧化、薬液等による湿潤化等