◇SH2030◇実学・企業法務(第162回)法務目線の業界探訪〔Ⅳ〕建設・不動産 齋藤憲道(2018/08/20)

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実学・企業法務(第162回)

法務目線の業界探訪〔Ⅳ〕建設・不動産

同志社大学法学部

企業法務教育スーパーバイザー

齋 藤 憲 道

 

〔Ⅳ〕建設(ゼネコン、戸建て、下請)、不動産取引

2. 建設・不動産取引には多くの規制がある

(6) 住宅取引を適正に行うための規制

1) 住宅品質確保法[1]

 従来、住宅の性能の表示に関する市場共通のルールがなかったため、消費者の選択と事業者の市場競争がそれぞれ十分に機能していなかった。また、住宅の性能の信頼性についても不安や疑問が残る状態で販売・購入が行われることから、後日の売買トラブルが避けられず、紛争が生じても円満・迅速に解決する仕組みも十分に整備されていなかった。さらに、長期保有資産である住宅の瑕疵担保責任の期間が短いことも、消費者には納得し難かった。

 これらの問題を解消する目的で、次の制度を備える住宅品質確保法が制定された。

① 次の②、③により、住宅の品質確保の促進、住宅購入者等の利益保護、住宅紛争の迅速・適正な解決を図る。

② 住宅の性能に関する表示基準・評価制度を設け、住宅に係る紛争の処理体制を整備する。

  1 住宅性能の表示基準・評価制度

  1.  ・国土交通大臣及び内閣総理大臣が「日本住宅性能表示基準」(以下、本項で「基準」という。)を定めて告示する(3条)。
    -基準の制定・変更を行う場合、必要に応じて、公聴会を開き利害関係人の意見を聴く。
    -基準の制定・変更に先だって国土交通大臣は社会資本整備審議会の議決、内閣総理大臣は消費者委員会の議決をそれぞれ経なければならない。
  2.  ・住宅性能評価機関を整備し、これが交付する「住宅性能評価書」が契約に添付された場合は契約内容と見なす(5条、6条)。
     耐火・耐震・防犯・遮音性・省エネルギー性等の性能表示項目を標準化

  2 住宅専門の紛争処理方法の整備 (詳細は、後述の「紛争解決」の項に記載する。)

③ 新築住宅の請負契約(又は売買契約)における瑕疵担保責任について特別に定める。

  1. ○ 新築住宅の瑕疵担保責任に関する特例(94条、95条)
  2. ・ 新築住宅の取得契約(請負、売買)では、構造耐力上主要な部分(基礎、壁、柱、梁等)又は雨水浸入を防止する部分(屋根、外壁等)として政令で定めるものについて、完成引渡しから10年間(短縮の特約は不可。民法は、事実を知った時から1年間[2]。)、瑕疵担保責任を義務付ける。
    (注) 修補請求、損害賠償請求、売買契約において修補不能な場合は契約解除、が可能になる。
  3. ・ 注文者に不利な特約は無効とされる。(従って、10年間の瑕疵担保責任を短縮することは不可。)
  4. ・ 新築住宅の取得契約(請負、売買)で特約すれば、建物全体について瑕疵担保責任を20年まで伸長することができる。
    (注) 事業者のリスク負担増加分は、請負・売買の契約代金に反映されることになる。

2) 住宅瑕疵担保履行法

 「住宅品質確保法」が定める新築住宅に係る瑕疵担保責任の履行を確実にする[3]ために、下記の対策を講じる。

 2005年に問題になった耐震偽装問題[4]において、違法住宅を購入した被害者の救済が不十分であったことを受けて、2007年に制定された。

  1. ① 建設業者による「住宅建設瑕疵担保保証金」の供託(2章)
  2. ② 宅地建物取引業者による「住宅販売瑕疵担保保証金」の供託(3章)
  3. ③ この瑕疵担保責任の履行によって生じる損害を補填する保険[5]を引き受ける「住宅瑕疵担保責任保険法人」を国土交通大臣が指定(4章)
  4. ④ この保険に係る紛争処理体制を拡充(5章)


[1] 「住宅の品質確保の促進等に関する法律」の略称。1999年制定

[2] 瑕疵担保による損害賠償請求権には消滅時効の規定(10年)の適用がある(民法167条1項、566条3項、570条)。最高裁平成13年11月27日(民集第55巻6号1311頁)

[3] 2005年に発覚した姉歯事件(構造計算書偽装。いわゆる耐震偽装)では、マンションの分譲業者(ヒューザー)と施工業者(木村建設)が倒産したため、瑕疵補修費用が支払われず、住宅購入者は補修費用をそれまでの住宅ローンに加えて負担することになった。

[4] 「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」の略称。2007年5月制定

[5] 10年間の保険契約期間に対して10年分一括支払いの保険料(掛捨て)は戸建て住宅で7~8万円程度(2016年)で、加入は建物着工前に行うことが必要。(国土交通省資料)

 

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