法務担当者のための『働き方改革』の解説(7)
法改正の概要
TMI総合法律事務所
弁護士 藤 巻 伍
Ⅱ 法改正の概要
4 待遇の説明義務(非正規法14条)
非正規法14条 ※下線部分はパートタイム労働法からの改正部分 1. 事業主は、短時間・有期雇用労働者を雇い入れたときは、速やかに、第八条から前条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項(労働基準法第十五条第一項に規定する厚生労働省令で定める事項及び特定事項を除く。)に関し講ずることとしている措置の内容について、当該短時間・有期雇用労働者に説明しなければならない。 2. 事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者から求めがあったときは、当該短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由並びに第六条から前条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該短時間・有期雇用労働者に説明しなければならない。 3. 事業主は、短時間・有期雇用労働者が前項の求めをしたことを理由として、当該短時間・有期雇用労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。 |
本条は、短時間・有期雇用労働者に対する使用者の説明義務を定めた規定であり、労働契約法には存在しない規定である。説明義務を履行しなければならないのは、雇入れ時と入社後に労働者から説明を求められた時である。説明義務の対象には、短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由等が含まれている。
この改正に伴い、無期雇用労働者と有期雇用労働者の間又はフルタイム労働者とパートタイム労働者の間、で待遇に相違を設けている場合には、あらかじめ待遇の相違の内容を把握し、待遇に相違を設けている理由を明確にしておく必要がある。
説明の方法については、法律上明確でないものの、今後施行規則等で定められる可能性がある(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案に対する付帯決議第35項)。
5 実行確保措置の整備(非正規法18条)
本条は、使用者に非正規法を遵守させる手段として、厚生労働大臣による報告徴収、助言、指導、勧告及び(勧告に従わなかった場合には)企業名公表といった行政上の措置を規定するものであり、労働契約法には存在しない規定である。改正後は、非正規法違反があった場合、行政による勧告や企業名公表の処分を受けるおそれがあるため、会社としては、レピュテーションの低下を避けるためにも、非正規法の遵守が重要となる。
6 紛争解決手段の整備(非正規法23条~25条)
本条は、非正規法に関連する紛争における行政ADRの手続(紛争解決の援助、調停)の利用を定める規定であり、労働契約法20条には存在しない規定である。改正後は、裁判だけでなく、行政ADRの手続において非正規法の違反が争われることが多くなる可能性がある。