◇SH2117◇証券監視委、平成29事務年度の「開示検査事例集」を公表(2018/10/02)

未分類

証券監視委、平成29事務年度の「開示検査事例集」を公表

――開示検査の取組みや開示規制違反事例の分析等――

 

 証券取引等監視委員会は9月19日、「開示検査事例集」を公表した。これは、適正な情報開示に向けた市場関係者の自主的な取組みを促す観点から、開示検査の最近の取組みや開示検査によって判明した開示規制違反の内容・原因・是正策等を取りまとめたものである。

 証券監視委では、平成20年以降、「金融商品取引法における課徴金事例集~開示規制違反編~」を公表してきたが、昨年度から「開示検査事例集」と名称を変更しており、「課徴金納付命令勧告を行った事例だけでなく、勧告は行わないものの、開示規制違反の背景・原因を追究した上でその再発防止策を会社と共有した事例、会社に対して訂正報告書等の自発的な提出を促した事例等」を紹介するものとなっている。

 今年度版の構成は次のようになっている。

 

「開示検査事例集」の構成

証券取引等監視委員会からのメッセージ

Ⅰ 最近の開示検査の取組みについて

Ⅱ 最新の検査事例

 1 課徴金納付命令勧告事例

  【事例1】架空売上の計上等

  【事例2】架空売上の計上

  【事例3】架空売上の計上

 2 検査による自発的訂正事案

  【事例4】売上の過大計上

 3 再発防止策の履行状況把握

  【事例5】再発防止策の実施

 4 内部統制の不備

  【事例6】内部統制の不備

  【事例7】内部統制の不備

Ⅲ 最新の事例の特色・傾向

 1 開示規制違反の形態

 2 開示規制違反の背景・原因

Ⅳ 過去の検査事例

Ⅴ 審判手続の状況及び個別事例

Ⅵ 参考資料

 

 「Ⅰ 最近の開示検査の取組みについて」によると、平成29事務年度(平成29年7月~30年6月)に証券監視委が行った開示検査は30件であり、そのうち13件の開示検査が終了した。この13件のうち、開示書類に重要な虚偽記載等が認められた3件について課徴金納付命令勧告を行った。また、開示検査では、重要な虚偽記載等が認められなかったものの、開示書類の記載内容の訂正が必要と認められた場合については、開示書類の訂正報告書等の自発的な提出を促しており、前記の13件のうち2件について訂正報告書の自発的な提出を促した。

 以下では、「Ⅲ 最新の事例の特色・傾向」の概要を紹介する。

 

Ⅲ 最新の事例の特色・傾向

 平成29事務年度に終了した開示検査事案における開示規制違反の形態およびその発生原因は以下のようになっている。

 

1 開示規制違反の形態

 開示規制違反はすべて、不適正な会計処理による有価証券報告書等の虚偽記載であった。事案ごとの違反の形態は以下のとおりであり、架空売上の計上、売上の過大計上など、売上をめぐる不適正な会計処理が目立った。

 

○ 有価証券報告書等の虚偽記載

【売上高に関する不適正な会計処理】

  1. 《架空売上の計上》
  2. ① テレビ受信機器の販売において、得意先に協力を依頼して架空売上を計上したケース(事例1)。
  3. ② 太陽光発電事業に係る商材およびタブレット端末の取引において、実態のない架空取引により、架空売上を計上したケース(事例2)。
  4. ③ 太陽光発電設備等の実態のない売買取引において、架空売上を計上したケース(事例3)。
     
  5. 《売上の過大計上》
  6. ④ 国内外での工事において、工事進行基準の適用要件を満たしていないにもかかわらず工事進行基準を適用すること等により、売上を過大計上したケース(事例4)。

【売上原価に関する不適正な会計処理】

  1. 《棚卸資産評価損の不計上》
  2. ⑤ テレビ受信機器の販売において、実際は達成していない販売計画を達成したかのように偽り、計上すべき棚卸資産評価損を計上しなかったケース(事例1)。

 

2 開示規制違反の背景・原因

 開示検査では、開示規制違反が行われた会社自身による適正な情報開示を行うための実効性をもった体制整備が進められることを期待し、開示規制違反の根本原因および背景について検査対象会社の経営陣幹部と議論を行い、認識の共有を図っている。これは、開示規制違反の再発防止のためには、適正な情報開示体制の整備について、経営陣幹部全員が問題意識を持つ必要があるとの考えによるものである。

 こうした考えに基づいて実施した最近の開示検査では、多くの場合、

  1. ・ 経営陣のコンプライアンス意識の欠如
  2. ・ 会社のガバナンスの機能不全

が背景としてあり、たとえば、次のような原因による開示規制違反を把握した。

【主な原因】

  1. ・ 経理や内部監査等の管理部門に十分かつ会計基準に知識のある適切な人員が配置されていないことや、会計帳簿に係る業務プロセスの明文化および全社的な浸透が行われていないこと等により、内部管理体制が有効に機能しなかったこと(1の①、②、④、⑤)
  2. ・ 監査役が営業にも従事しており、監査役の業務執行からの独立性が確保されていない状況が解消されず、結果、同監査役が主導的に不適切な会計処理を行う等、会社として管理部門を適切に運用しようとする意識が欠如していたこと(1の①、⑤)
  3. ・ 売上や利益目標等達成のため、過度に営業を重視する社風が醸成されてしまい、結果として、管理部門等による内部管理体制が機能していなかったこと(1の④)
  4. ・ 取締役会による職務執行の監督機能が形骸化していたこと(1の②)
  5. ・ 財務内容が悪化する中で、子会社取得による連結業績の回復を過度に重視する一方、取得した子会社に対する内部統制等管理を適切に行わなかったこと(1の③)

 

 

  1. 証券監視委、「開示検査事例集」の公表について(9月19日)
    https://www.fsa.go.jp/sesc/jirei/kaiji/20180919.htm
  2. ○「開示検査事例集」
    https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2018/10/01.pdf
  3. ○ 過去の課徴金事例集・開示検査事例集
    https://www.fsa.go.jp/sesc/jirei/index.htm
  4.  
  5. 参考(旧年版の紹介)
  6.   SH1438 証券監視委、「開示検査事例集」を公表(2017/10/17)
    https://www.shojihomu-portal.jp/article?articleId=4652544
  7.   SH1374 証券監視委、「金融商品取引法における課徴金事例集~不公正取引編~」を公表(2017/09/01)
    https://www.shojihomu-portal.jp/article?articleId=4356316

 

タイトルとURLをコピーしました