◇SH2156◇公証人法施行規則の一部を改正する省令が公布される(2018/10/23)

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公証人法施行規則の一部を改正する省令が公布される

――株式会社等の定款認証手続における会社の実質的支配者等の申告――

 

 公証人法施行規則の一部を改正する省令(平成30年法務省令第26号)が10月12日に公布された。11月30日から施行される。

 今回の改正は、株式会社等の定款認証手続において、当該法人の実質的支配者となるべき者について公証人が申告を受ける等の措置を講じるものである。この問題については、法務省が2月27日に公表した「株式会社の不正使用防止のための公証人の活用に関する研究会」の議論のとりまとめにおいて、「定款認証手続における嘱託人による会社の実質的支配者等の申告及びその内容の認証文への記載」等が提案された(後掲の別稿参照)ことを受け、当該規定に係る公証人法施行規則改正について6月19日から7月23日にかけてパブリック・コメントにより意見募集を行っていたものである。

 パブリック・コメントで寄せられた意見は45件であり、法務省はこれらを踏まえて改正省令を確定し、公布した。

 以下では、今回の改正の内容と、パブリック・コメントで寄せられた主な意見とそれに対する法務省の考え方を紹介する。

 

改正の内容

【公証人法施行規則第13条の4】(新設)

 公証人は、会社法(平成17年法律第86号)第30条第1項並びに一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成18年法律第48号)第13条及び第155条の規定による定款の認証を行う場合には、嘱託人に、次の各号に掲げる事項を申告させるものとする。

 一 法人の成立の時にその実質的支配者(犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成19年法律第22号)第4条第1項第4号に規定する者をいう。)となるべき者の氏名、住居及び生年月日

 二 前号に規定する実質的支配者となるべき者が暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)第2条第6号に規定する暴力団員(次項において「暴力団員」という。)又は国際連合安全保障理事会決議第1267号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法(平成26年法律第124号)第3条第1項の規定により公告されている者(現に同項に規定する名簿に記載されている者に限る。)若しくは同法第4条第1項の規定による指定を受けている者(次項において「国際テロリスト」という。)に該当するか否か

2 公証人は、前項の定款の認証を行う場合において、同項第1号に規定する実質的支配者となるべき者が、暴力団員又は国際テロリストに該当し、又は該当するおそれがあると認めるときは、嘱託人又は当該実質的支配者となるべき者に必要な説明をさせなければならない。

【附則】

(施行期日)

1 この省令は、平成30年11月30日から施行する。

(経過措置)

2 この省令の施行前にされた嘱託に係る会社法(平成17年法律第86号)第30条第1項並びに一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成18年法律第48号)第13条及び第155条の規定による定款の認証に関する手続については、なお従前の例による。

 

パブリック・コメントで寄せられた主な意見とそれに対する法務省の考え方(法務省公表資料より抜粋)

《意見8》 法人を使用した不正行為については、銀行口座の開設等の個々の取引行為について抑えるべきであり、法人の透明性を高めるために、法人設立時点での法人の情報を把握するという今回の措置が必須であることについて、立法事実を欠いている。

《意見8に対する考え方》 個々の取引に関する不正行為抑止の重要性のみならず、法人の透明性そのものを高めることの重要性についても国内外での認識が高まっていることを踏まえ、今回の取組を実施することとしております。

 

《意見9》 会社設立後の定款変更等に公証人が関与しないこと、休眠会社の買収が可能であること、他人の名義での会社設立が可能であること、合同会社等定款認証が不要な会社もあること、代理嘱託が可能であること等の仕組みや、現在の公証人の組織、資質、経験等に照らし、今回の措置は、実効性を欠いている。

《意見9に対する考え方》 今回の取組は、設立件数の多い株式会社について、設立という最初の時点を捉えて、実質的支配者の申告等を求めるという制度的に意義の大きいものであると考えられますが、関係機関とも連携し、不正抑止効果の高い運用を組織的に行うように努めてまいります。

 

《意見10》 今回の公証人法施行規則改正は、追加的な負担が大きく、起業活動を阻害し、政府の成長戦略の方針に逆行し、日本の競争力を損なうものである。

《意見10に対する考え方》 今回の取組は、オンラインでの面前確認を可能にする等により定款認証の迅速化及び利便性の向上を図る政府戦略である未来投資戦略2018と両立する形で、法人の透明性を向上させて、法人制度に対する信頼を高めるものであり、今後の運用においても、その趣旨が実現するよう努めてまいります。

 

 

  1. 公証人法施行規則の一部を改正する省令(法務省令第26号・10月12日)
    http://mm.shojihomu.co.jp/c/bxugabujeDt5r3bm
  2.  
  3. 法務省、「公証人法施行規則の一部を改正する省令案」に関する意見募集の結果(10月12日)
    http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=300080167&Mode=2
  4. ○「公証人法施行規則の一部を改正する省令案」に関する御意見の募集の結果について
    http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000178865
  5. ○ 意見公募時
    http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=300080167&Mode=0&fromPCMMSTDETAIL=true
  6.  
  7. 参考
    SH1692 法務省、「株式会社の不正使用防止のための公証人の活用に関する研究会」の議論のとりまとめを公表(2018/03/08)
    https://www.shojihomu-portal.jp/article?articleId=5601169

 

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