◇SH2233◇経産省と公取委、下請取引の適正化について親事業者等に要請(2018/12/05)

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経産省と公取委、下請取引の適正化について親事業者等に要請

――下請法の遵守、働き方改革、災害時の取引条件等――

 

 経済産業省と公正取引委員会は11月27日、下請取引の適正化等について要請を行った。

 政府は、中小企業の取引改善に向けて、2016年12月に下請代金支払遅延防止法(以下「下請法」)の運用強化等を行っている(後掲の別稿参照)。そして、わが国における中小企業の業況は、「緩やかな改善基調の中にも一服感がみられ、原材料価格の上昇や人手不足への懸念等、中小企業を取り巻く環境は依然として厳しい状況にあり、これから年末にかけての金融繁忙期に下請事業者の資金繰り等について一層厳しさを増すことが懸念される」とされているところである。

 このため、経産省と公取委では、今般、

  1. ① 親事業者が下請代金を早期にかつ可能な限り現金で支払い、下請事業者の資金繰りに支障を来さないようにすることが必要であり、下請事業者と十分な協議を行い適切な対価の決定を行う、事前に定めた支払期日までに下請代金を全額支払うなど、下請取引の適正化に努めてほしいこと
  2. ② 政府を挙げて働き方改革を推進しているところ、例えば、極端な短納期発注等は、取引先における長時間労働等につながる場合があり、下請法等の違反の背景にもなり得るため、特に留意してほしいこと
  3. ③ 災害等の発生を理由として、下請事業者に一方的に負担を押しつけることにより、取引のある経営基盤の弱い中小企業・小規模事業者に悪影響を与えることのないよう、適切に対処してほしいこと
  4. ④ 消費税率の引上げが予定されているところ、減額や買いたたき等による消費税の転嫁拒否等の行為が生じないよう適切な措置を講じてほしいこと

等について、親事業者約21万社および関係事業者団体約1,000の代表者に対し、経済産業大臣および公正取引委員会委員長連名の文書をもって要請した。

 以下では、「下請取引の適正化について」の要請文を紹介する。

 

下請取引の適正化について(20181026中第1号・公取企第87号・平成30年11月27日)

 公正取引委員会及び経済産業省は、日頃より、下請代金支払遅延等防止法(昭和31年法律第120号。以下「下請法」といいます。)違反行為への厳正な対処を行うとともに、同法の普及啓発を行っております。

 

<中小企業の取引環境>

 我が国経済は、景気の緩やかな回復基調が継続する中、中小企業の業況は緩やかな改善基調の中にも一服感がみられ、原材料価格の上昇や人手不足への懸念等、中小企業を取り巻く環境は依然として厳しい状況にあります。また、これから年末にかけての金融繁忙期を迎えるに当たり、下請事業者の資金繰り等について一層厳しさを増すことが懸念され、親事業者が下請代金を早期にかつ可能な限り現金で支払い、下請事業者の資金繰りに支障を来さないようにすることが必要です。

 

<下請法の理解と下請代金支払の適正化>

 経済の好循環を実現するには、下請等中小企業の取引条件を改善していくことが重要という問題意識の下、政府を挙げて下請対策の強化に取り組んでおり、平成28年12月には、①違反行為の未然防止や事業者による情報提供に資するよう、下請法に関する運用基準を改正するとともに、②親事業者による下請代金の支払についても

  1. ・ 下請代金の支払は、できる限り現金によるものとすること
  2. ・ 手形で下請代金を支払う場合は、割引料を下請事業者に負担させることがないよう下請代金の額を十分に協議すること
  3. ・ 手形サイトは、将来的に60日以内とするよう努めること

を旨とした通達を発出したところです(編注:後掲の別稿参照)。

 引き続き、下請取引の適正化に努めるよう要請いたします。

 

<働き方改革>

 政府を挙げて働き方改革を推進しておりますが、取引の一方当事者の働き方改革に向けた取組の影響がその取引の相手方に対して負担となって押し付けられることは望ましくないと考えられます。人手不足の深刻な中小企業の経営悪化が懸念される中、極端な短納期発注等は、取引先における長時間労働等につながる場合があり、下請法等の違反の背景にもなり得ますので特に御留意いただきたいところです。

 

<災害時における取引条件について>

 平成30年7月豪雨や北海道胆振東部地震のほか、台風等による災害も発生しており、被災地域における事業者と取引のある全国の事業者に影響が広がっております。

 貴社におかれましても、災害等の発生を理由として、下請事業者に一方的に負担を押しつけることにより、取引のある経営基盤の弱い中小企業・小規模事業者に悪影響を与えることのないよう、適切な対処を要請いたします。

 

<消費税の円滑・適正な転嫁について>

 平成31年(2019年)10月1日から、消費税率が、8%から10%に引き上げられると同時に、消費税の軽減税率制度が実施されます。貴社におかれましては、減額や買いたたき等による消費税の転嫁拒否等の行為が生じないよう、貴社全体で適切な措置を講じるよう要請いたします。

 

<社内周知及び実施のお願い>

 貴社におかれましても、このような取引環境を御理解いただき、下請事業者と協議をした上で適切な対価の決定を行う、事前に定めた支払期日までに下請代金を全額支払うなど、下請法の遵守に取り組んでいただきますようお願いいたします。

 特に、別紙(略)の記載事項については、調達担当者のみならず役員等の責任者まで周知徹底を図り、現場責任者には調達担当者の指導及び監督に当たらせるなど、適切な措置を講じるよう要請いたします。

 

 

  1. 中企庁、下請取引の適正化について、親事業者等に要請します(11月27日)
    http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/2018/181127Shitauke.htm
  2.  
  3. 公取委、下請取引の適正化について(11月27日)
    https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h30/nov/181127.html
  4. ○ 下請取引の適正化について
    https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2018/12/181127_1.pdf
  5. ○(別添1)要請文書(親事業者宛て)
    https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2018/12/181127_2.pdf
  6. ○(別添2)要請文書(関係事業者団体宛て)
    https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2018/12/181127_3.pdf
  7.  
  8. 参考
    SH0952 中小事業者の取引条件の改善に向けた下請法等の運用強化の動き――下請法運用基準、下請中小企業振興基準、下請代金の支払手段についての見直し(2017/01/05)
    https://www.shojihomu-portal.jp/article?articleId=2714582

 

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