監査証明府令等の一部を改正する内閣府令が公布・施行
――「監査上の主要な検討事項」を具体化、2021年3月決算から適用――
財務諸表等の監査証明に関する内閣府令及び企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(平成30年内閣府令第54号)が11月30日、公布・施行された。
監査意見に至る監査プロセスの透明性を向上させるため、本年7月、企業会計審議会(会長・平松一夫関西学院大学名誉教授)において監査基準が改訂されたことを受け、金融庁が9月26日、(1)財務諸表等の監査証明に関する内閣府令(以下「監査証明府令」という)とともに、関連府令・ガイドラインとして(2)企業内容等の開示に関する内閣府令、(3)「財務諸表等の監査証明に関する内閣府令」の取扱いに関する留意事項について(監査証明府令ガイドライン)のそれぞれについて改正案を公表し、10月25日まで意見募集に付していた。
監査基準の改訂に対応する主な改正点は、監査報告書等において(ア)監査上の主要な検討事項(いわゆるKAM)に関する記載(改正後の監査証明府令4条1項1号ニ)を求めるほか、(イ)監査報告書の冒頭に監査意見を記載するといった記載順序の変更および「意見の根拠」の区分の新設(同令4条1項1号イ・ロ)、(ウ)監査役等(監査役、監査役会、監査等委員会または監査委員会)の責任として「財務報告に係る過程を監視する責任があること」を記載させる(同令4条1項1号ヘ)など。
改正府令の公布により(ア)についての具体的記載事項は、①財務諸表等において監査上の主要な検討事項に関連する開示が行われている場合には、当該開示が記載されている箇所、②監査上の主要な検討事項の内容、③監査上の主要な検討事項であると決定した理由、④監査上の主要な検討事項に対する監査における対応(改正後の監査証明府令4条5項各号)の4項目に確定したこととなる。
「監査上の主要な検討事項」の記載は、金融商品取引法に基づく有価証券届出書・有価証券報告書提出企業(非上場企業のうち資本金5億円未満または売上高10億円未満かつ負債総額200億円未満の企業を除く)の連結財務諸表、財務諸表および財務書類(以下「連結財務諸表等」という)の監査証明について求められる。2021年3月31日以後に終了する連結会計年度等に係る連結財務諸表等の監査から適用。2020年3月31日以後に終了する連結会計年度等に係る連結財務諸表等の監査からの早期適用も認められている。
「監査上の主要な検討事項」以外の改正項目については、2020年3月31日以後に終了する連結会計年度等に係る連結財務諸表等の監査について適用することとし、早期適用は認められていない。
なお、金融庁では改正府令の公布・施行日となる11月30日、意見募集結果を公表。2団体から寄せられた4件の意見のうち「有価証券ファンドやその委託会社の財務諸表に対する監査報告書を適用範囲に含める必要性は相対的に必ずしも高くないものと考えられる」とする意見に対しては、①投資信託の受益証券等のいわゆるファンド自体は、金商法の特定有価証券に該当し、 同法5条5項等の規定に基づき、届出書、有価証券報告書等を提出することから、当該届出書、 有価証券報告書等に含まれるファンド自体の財務諸表等の監査報告書には「監査上の主要な検討事項」の記載は必要ないとする一方で、②投資信託の受益証券等のいわゆるファンドの委託会社が、監査証明府令3条4項各号に掲げる者に該当し、届出書、有価証券報告書等を提出する場合には、公認会計士または監査法人は監査報告書に「監査上の主要な検討事項」を記載する必要があるとする「金融庁の考え方」を公表している。