◇SH0038◇ミャンマー:新経済特区法~経済特区の投資基本法 長谷川良和(2014/07/18)

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ミャンマー:新経済特区法~経済特区の投資基本法

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 長谷川 良 和

1 新経済特区法とその意味

 2014年1月、ミャンマーの新経済特区法(「新経済特区法」)が成立した。新経済特区法に基づく進出は、会社法や外国投資法に基づく進出とは別の新たな進出形態であり、ティラワ経済特区開発の進展等と相まって、現実的な選択肢の一つとなることが期待されている。実際、日系企業による経済特区への進出 に係る報道も見られるようになってきているが、こうした経済特区への進出は、主としてこの新経済特区法によって規律されることになる。そこで、本稿は、日系企業によるミャンマーの経済特区への投資の観点から、新経済特区法のポイントを簡潔に紹介する。

2 新経済特区法のポイント

(1)  経済特区の管理・運営

 新経済特区法の下では、経済特区毎に管理委員会が設けられ、管理委員会が経済特区内での投資承認、会社登記、課税、ビザ・労働許可、工場建設許可、原産地証明の発行その他の投資・経済条件に関する許認可等に関する事項を一元管理するワンストップサービスセンターとして機能する。管理委員会は、適式な投資承認申請から30日以内に投資承認を行うかを判断するものとされ、外国投資法上の投資承認と比べ迅速な手続が企図されている。

(2)  経済特区内の地域分類と事業分類

 管理委員会は、経済特区内に、①免税地域、及び、②振興地域を定めることができる。免税地域は、主として輸出向けの製造業を念頭においており、同地域内で製造された製品の国内市場向け又は振興地域向けの販売等の割合について一定の上限が課される。他方、振興地域は、国内市場向けの事業を行う地域と位置づけられ、製造業、不動産事業、デパート、銀行・保険業、学校、病院等が予定されている。外国投資家は、独資及びミャンマー企業等との合弁のいずれの方法でも投資承認を得ることができる。なお、経済特区のインフラ建設、運営及び維持に従事する開発事業者は、経済特区に進出する投資家一般とは全般的に異なる規律に服する。

(3)  投資優遇措置

 投資家に与えられる可能性がある代表的な投資優遇措置概要は以下のとおり。

優遇項目

優遇概要

優遇税制

²  所得税

(a) 免税地域での投資:事業開始日から7年間の所得税免除

(b) 振興地域での投資:事業開始日から5年間の所得税免除

(c) 上記(a)及び(b)の各期間経過後も一定期間、所定の減税を受けられる可能性あり。

²  商業税・付加価値税

(a) 免税地域での投資:商業税・付加価値税免除の可能性あり

(b) 振興地域での投資:商業税・付加価値税減免の可能性あり

²  輸入関税

(a) 免税地域内の投資家が製造用原材料・機械設備等や建設用資材等を輸入する場合には輸入関税免除

(b) 振興地域内の投資家が製造用機械設備等や建設用資材等を輸入する場合には最長5年の輸入関税減税

(c)         振興地域内の投資家が製造用原材料等を輸入する場合には関税が課されるが、還付請求可能な場合あり

²  損失繰越

投資家は、一定の損失に関し損失発生から5年を限度として繰越可能

土地使用権

²  管理委員会は、当初最大50年間の土地の賃借又は使用を承認でき、その後も25年を限度としてこれを延長できる。

外貨送金

²  経済特区内で外貨で事業を行う場合、所定の銀行で外貨口座を開設し、一定の条件に従って外貨の預入と支払を行うことができる。

²  また、投資家には外貨送金に関する権利が付与されている。

国家保証

²  経済特区内の投資事業は、事業承認期間中、国有化されない。

 

(4)  投資家の義務

 外国投資法と同様、新経済特区法に基づく投資においても、投資家はミャンマー国民の雇用に関する一定の義務を負う。具体的には、(a)未熟練労働者についてはミャンマー国民からのみ雇用する義務を負い、他方、(b)熟練労働者については原則としてミャンマー国民の雇用割合を事業開始の最初の2年間で最低25%以上、次の2年間で50%以上、さらに次の2年間で75%以上まで増加させる義務を負う。

3 おわりに

 今後、新経済特区法に関する細則が出される予定であり、経済特区での事業を実際に検討する日系企業にとっては、かかる細則を含めた新経済特区法制やその運用の動向を注視していくことが重要となろう。

 

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