SH4439 金融庁、「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」第28回開催 ――コーポレートガバナンス改革の実質化に向けた現状の課題とこれに対する今後の取組み 松橋翔(2023/05/16)

組織法務経営・コーポレートガバナンス

金融庁、「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」第28回開催
――コーポレートガバナンス改革の実質化に向けた現状の課題とこれに対する今後の取組み――

岩田合同法律事務所

弁護士 松 橋   翔

 

1 はじめに

 2023年4月19日、スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードの普及・定着状況をフォローアップするとともに、上場企業全体のコーポレートガバナンスの更なる充実に向けて、必要な施策を議論・提言することを目的として設置された「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」(座長:神田秀樹学習院大学大学院法務研究科教授。以下「フォローアップ会議」という。)の第28回会議が開催された。

 第28回フォローアップ会議では、第27回フォローアップ会議後の取組みとして、ジャパン・コーポレート・ガバナンス・フォーラムの設置[1]や、スチュワードシップ活動の実態調査[2]等の同会議後の各課題への取組みが紹介され、その上で、コーポレートガバナンス改革の実質化に向けた現状の課題とこれに対する今後の取組みに向けた考え方・具体的な取組み内容について議論がなされた。

 本稿では、第28回フォローアップ会議において現状の課題として指摘された事項を踏まえ、同会議が考える今後の取組みの具体的な内容を紹介する。

 

2 現状の課題

 第27回フォローアップ会議、ジャパン・コーポレート・ガバナンス・フォーラム、機関投資家の実態調査等においては、主に以下の事項がコーポレートガバナンス改革の実質化に向けた課題として指摘された。

 

  1. ① 資本コストを踏まえた収益性・成長性を意識した経営の促進、人的資本への投資をはじめとするサステナビリティに関する取組みの促進といった経営上の課題
  1. ② 取締役会や指名委員会・報酬委員会の実効性向上、独立社外取締役の質の向上といった独立社外取締役の機能発揮に関する課題
  1. ③ 情報開示の充実、法制度上・市場環境上の課題解決といった企業と投資家との対話に関する課題

 

 コーポレートガバナンス改革を通じて企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上を実現するためには、経営陣、取締役会、投資家、その他様々なステークホルダーが適切に協働していくことが肝要とされ、その協働関係と上記課題について以下の図[3]のとおり整理されている。

 

 

3 今後の取組み

 そして、前記記載の各課題の解決に向けて、今後の取組みに向けた考え方・具体的な取組み内容が以下の図[4]のとおり整理されている。

 

 

 

4 コーポレートガバナンス改革の実質化に向けたアクション・プログラム

 以上を踏まえ、第28回フォローアップ会議では「コーポレートガバナンス改革の実質化に向けたアクション・プログラム(案)」[5]について議論がなされ、その方向性への了承がなされたことから、2023年4月26日に「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」意見書(6)として「コーポレートガバナンス改革の実質化に向けたアクション・プログラム」[6]が公表された。

 本意見書では、コーポレートガバナンス改革の実質化という観点から、今後の取組みに向けた考え方や具体的な取組み内容について、フォローアップ会議としての提言が示されており、その具体的な内容については以下の表[7]のとおりである(前記の内容と概ね同様であるが、以下ではより詳細な内容が記載されるとともに、その一部について実施時期の目途も示されている。)。

 

5 おわりに

 企業価値の向上については、2023年3月31日、株式会社東京証券取引所(以下「東証」という。)が上場企業に資本効率や株価を意識した経営に取り組むよう求める通知[8]を出したことも記憶に新しい。金融庁はかかる東証の動きとも合わせてガバナンス改革を推進していく。

 前記のフォローアップ会議による提言を受けて、今後、ガバナンス改革を巡る動きは一段と加速することが予想され、フォローアップ会議もかかる提言を受けた実施状況について随時検証し追加的な施策等の要否を検討していくとのことであるから、今後の動向を引き続き注視する必要がある。

以 上

 


[1] 2022年9月22日(現地時間)に行われた、ニューヨーク証券取引所における岸田総理の講演において「とても大切な政策の一つは、コーポレートガバナンス改革だ。(中略)近々、世界中の投資家から意見を聞く場を設けるなど、日本のコーポレートガバナンス改革を加速化し、更に強化する。」との発言があり、その発言も踏まえ、コーポレートガバナンス改革を加速化し強化するため、海外投資家を含むステークホルダーから幅広く意見を聞く場として、金融庁は「ジャパン・コーポレート・ガバナンス・フォーラム」を設置した(金融庁「『ジャパン・コーポレート・ガバナンス・フォーラム』の設置について」(https://www.fsa.go.jp/singi/japan_corporate_governance_forum/index.html))。ジャパン・コーポレート・ガバナンス・フォーラムにおける主な意見については、第28回フォローアップ会議資料5「事務局参考資料」2023年4月19日(https://www.fsa.go.jp/singi/follow-up/siryou/20230419/05.pdf)6頁~15頁を参照されたい。

[2] 金融庁は、より実質的なスチュワードシップ活動を促進するため、機関投資家におけるスチュワードシップ活動の実態調査・課題分析・これらを踏まえた提言をみずほリサーチ&テクノロジー株式会社に委託し、同社において、2023年1月から3月にかけて、機関投資家136社に対しアンケート調査、16社に対しヒアリング調査が実施された。かかる調査の概要については、前掲・第28回フォローアップ会議資料5の17頁~26頁を参照されたい。

[3] 第28回フォローアップ会議資料2「事務局説明資料」2023年4月19日(https://www.fsa.go.jp/singi/follow-up/siryou/20230419/02.pdf)16頁から引用。

[4] 前掲・第28回フォローアップ会議資料2の17頁・18頁から引用。

[5] 第28回フォローアップ会議資料4「コーポレートガバナンス改革の実質化に向けたアクション・プログラム(案)」(https://www.fsa.go.jp/singi/follow-up/siryou/20230419/04.pdf)。

[6] 「コーポレートガバナンス改革の実質化に向けたアクション・プログラム(「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」意見書(6))(https://www.fsa.go.jp/singi/follow-up/statements_6.pdf)。

[7] 前掲・「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」意見書(6)4頁~6頁から引用。

[8] 株式会社東京証券取引所「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」2023年3月31日(https://www.jpx.co.jp/news/1020/cg27su000000427f-att/cg27su00000042a2.pdf)。

[/groups_member]

(まつはし・しょう)

岩田合同法律事務所アソシエイト。2015年中央大学法学部卒業。2017年慶應義塾大学法科大学院修了。2018年弁護士登録。

岩田合同法律事務所 https://www.iwatagodo.com/

<事務所概要>
1902年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。

<連絡先>
〒100-6315 東京都千代田区丸の内二丁目4番1号丸の内ビルディング15階 電話 03-3214-6205(代表)

 

 

 

金融庁、「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」(第28回、19日開催)議事次第

○資料4 コーポレートガバナンス改革の実質化に向けたアクション・プログラム(案)

〔URL〕https://www.fsa.go.jp/singi/follow-up/siryou/20230419.html

https://www.fsa.go.jp/singi/follow-up/siryou/20230419/04.pdf

タイトルとURLをコピーしました