◇SH2259◇ベトナム:【Q&A】2019年の地域別最低賃金 澤山啓伍(2018/12/19)

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ベトナム:【Q&A】2019年の地域別最低賃金

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 澤 山 啓 伍

 

  1. Q. ベトナムでは毎年1月1日から最低賃金が改訂されると聞いていますが、2019年の最低賃金はどうなるでしょうか?また、その最低賃金を適用する際に留意すべき点はあるでしょうか?

     

  2. A. ベトナム政府は、2008年以降、毎年年末近くに翌年から適用される地域別最低賃金を定める政令を公布しています。今年も、政令157/2018/ND-CP号(以下「政令157号」といいます。)が2018年11月16日付で公布され(但し、実際に公開されたのは12月14日でした。)、2019年1月1日に施行されます。その重要な内容及び留意点は、以下の通りです。

 

1)地域別最低賃金の金額

 政令157号第3条に規定されている2019年1月1日以降の地域別最低賃金は、以下の通りです。

  第1地域 第2地域 第3地域 第4地域
月額(VND) 4,180,000 3,710,000 3,250,000 2,920,000
2018年比上昇率(VNDベース) 5.03% 5.10% 5.18% 5.80%
2018年比上昇率(USDベース)[1] 2.17% 2.24% 2.32% 2.92%

 これらの金額は、いずれも国家賃金評議会が政府に提出した案の金額と同じです。地域の上昇率の平均は5.27%で、2017年の同6.5%より低下しています。

 また、上記の第1地域~第4地域は、都市化のレベルに応じて設定されています。2018年の最低賃金を定める政令と比較すると、政令157号では以下の地区について区分けの変更がされています。

  1. - 第1地域に追加された地域

    1. Hai Phong市Cat Hai県及びKien Thuy県
    2. Binh Duong省Dau Tieng県及びPhu Giao県
    3. Ba Ria-Vung Tau省Phu My町
  2. - 第2地域に追加された地域

    1. Bac Ninh省Gia Binh県及びLuong Tai県
    2. Tien Giang省Chau Thanh県
    3. Quang Binh省Dong Hoi市
  3. - 第3地域に追加された地域

    1. Tien Giang省Tan Phuoc県
    2. Quang Binh省Le Thuy県, Quang Ninh県, Bo Trach県及びQuang Trach県、並びにBa Don町

2)地域別最低賃金の適用上の留意点

 以下の留意点については現行の規定と変わっていませんが、再度ご確認ください。

  1. 最低賃金とは:労働法第90条は、「賃金(tien luong)」の定義として、業務や職務に基づく「給与(muc luong)」、手当及びその他の補助を含むとした上で、労働者の「給与(muc luong)」が、政府の定めた最低賃金を下回ってはならないとしています。したがって、給与に手当等を加えた金額が最低賃金以上であれば良いわけではなく、手当等を除いた給与のみで最低賃金以上でなければなりません。
  2.   なお、政令157号第5条3項は、雇用者は、同政令に基づく最低賃金を適用する際に、残業代や深夜勤務手当など労働法令に従って支払う必要のある手当等の金額を削減してはならないと定めています。給与額を上げる代わりに手当等を減らすことは、労働争議の原因となるばかりか、違法とされる可能性もありますので、ご留意ください。
     
  3. 7%ルール:政令157号で定められた最低賃金は、通常の勤務条件で業務を行う、常勤の、最も単純な業務を行う労働者に対して適用される金額です(同政令第5条第1項a号)。それ以外の、「職業訓練コースに合格した労働者」のレベルが要求される業務を行う労働者には、上記の最低賃金の7%以上の賃金を支払わなければならないことになっています(同項b号)。このルールは7%ルールと呼ばれ、これを根拠に試用期間を終えた労働者に対しては一律最低賃金に7%を加えた給与を支払わなければならないと指導する当局の担当者も多いようです。
  4.   しかし、「職業訓練コースに合格した労働者」の内容は、同条第2項に列挙されています。そこでは、①教育法に基づく職業ライセンス、専門学校、高校、大学卒業資格等を取得した労働者、②職業訓練法に基づく通常の職業訓練プログラム等を終了した労働者、③企業による職業訓練を受けた後、企業が認定し、かつ当該職業訓練を経たことが必要とされる職務を行う労働者などが含まれるとされています。したがって、必ずしも試用期間を終えた労働者すべてに対して、7%ルールを適用する必要があるというわけではありません。しかし、一定の資格や訓練を経たことをある業務を行わせる上での条件とするのであれば、その業務を行う労働者に対しては、7%ルールを提供すべきことになります。


[1] ベトナム国家銀行が公表している2018年1月3日付のUSD/VNDレート(1USD=22,158VND)で2018年の地域別最低賃金を換算し、同じく2018年12月15日付のUSD/VNDレート(1USD=22,778USD)で2019年の地域別最低賃金と比較したもの。

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