◇SH2265◇中小企業・小規模事業者の長時間労働是正・生産性向上と人材確保に関するワーキング・グループ第6回会合が開催される(2018/12/25)

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中小企業・小規模事業者の長時間労働是正・生産性向上と
人材確保に関するワーキング・グループ第6回会合が開催される

――「働き方改革を阻害する取引環境の改善事例」や「働き方改革を阻害する取引慣行」等について――

 

 政府の「中小企業・小規模事業者の長時間労働是正・生産性向上と人材確保に関するワーキング・グループ」第6回会合が12月13日に開催された。

 同ワーキング・グループは、中小・小規模事業者の長時間労働是正や生産性向上、人材確保の取組等について、省庁横断的に必要な検討を行うため、平成29年9月1日、内閣官房副長官の下に設置されたもので、内閣総理大臣補佐官を座長に、厚生労働省政策統括官と中小企業庁長官を主査として、関係省庁がメンバーとなっているものである。

 今回の会合では、次の資料が配付された。

  1. 資料1「働き方改革に対する中小企業・小規模事業者の声」
  2. 資料2「労働基準監督署で把握した働き方改革を阻害する取引環境の改善事例」(厚生労働省)
  3. 資料3「働き方改革を阻害する取引慣行について」(中小企業庁)
  4. 資料4「行政手続簡素化工程表の進捗状況」

 このうち、資料2において、「労働基準監督署が監督指導を行った結果、事業者による取引環境の改善の取組が図られた事例」として紹介されているのは、次のようなものである。

 

事例①

  1. 【概要】
  2. ・ 家電などの配送を請け負う運送事業者(静岡、従業員30名)
  3. ・ 36協定の限度時間を超え、かつ、1か月の拘束時間が最長330時間を超える
     
  4. 【指導内容】
  5. ・ 労働基準法32条違反(労働時間)
  6. ・ 改善基準告示違反(拘束時間)
     
  7. 【改善の取組】
  8. ・ 荷主会社と下記の協議を行い、運転者の総拘束時間を短縮

    1. ① 荷主から入庫されていた製品の一括入庫を改め、あらかじめ配送先ごとに仕分けして入庫してもらうことにして、運転前の仕分け作業を削減
    2. ② 荷主の指定先で集荷していた製品について、集荷ルートの各指定先の集荷時間を早め、荷待ち時間を縮減

事例②

  1. 【概要】
  2. ・ 警備業務を請け負う事業者(東京、従業員350名)
  3. ・ 防災施設の整備業務の警備員14名について、36協定の限度時間を超え、1か月100時間超の残業
     
  4. 【指導内容】
  5. ・ 労働基準法32条違反(労働時間)
     
  6. 【改善の取組】
  7. ・ 親会社に対して下記を行うことにより、業務量の削減と受注単価の改善を行い、警備員の残業時間を短縮

    1. ① 請負代金の値上げ要請と警備配置数の削減を提案
    2. ② 警備配置数が過大な業務については、業務委託契約の解約を申し出

事例③

  1. 【概要】
  2. ・ カット野菜の製造等を行う事業者(宮城、従業員45名)
  3. ・ 36協定の限度時間を超え、1か月100時間超の残業を行う労働者が18名
  4. ・ 正社員には毎月5万円の固定残業代が支払われているが、残業代が不足
  5. 【指導内容】
  6. ・ 労働基準法32条違反(労働時間)
  7. ・ 労働基準法37条違反(割増賃金)
  8. 【改善の取組】
  9. ・ 親会社に対して、1か月100時間超の残業を行う労働者が多い等の事情を説明の上、カット野菜の発注量の抑制を要請し、野菜のカット加工に従事していた労働者の長時間労働を解消

 

 次に、資料3の概要を紹介すると、まず、「働き方改革に関する下請Gメン調査結果」によると、①下請等中小企業の約7割が人手不足に悩み、②そのうちの約8割が現場職の不足を実感し、③働き方改革の実施に伴い、約2割の事業者が、短納期発注などによる親事業者からのしわ寄せが新たに生じることを懸念していることが明らかになった。

 「働き方改革関係に関する下請事業者の生声」については、①多頻度小口配送方式や、いわゆる1/3ルール、サンプルの無償提供等の業界内の商慣習が下請事業者の働き方改革を阻害する可能性や、②親事業者の働き方改革導入に伴い、納期の短縮等によるしわ寄せを懸念する声が上がっている。

 「官公需発注における実態把握のためのヒアリング概要」では、官公需については納期が年度末に集中し労働時間が長くなるとの懸念が指摘されていたところであるが、実際のヒアリングでも、年度末集中・短納期についての実態が浮かび上がり、平準化が依然大きな課題であるとしている。

 具体的には、印刷業では、報告書類の受注が年度末に集中するなど、印刷発注の3割が年度末の3月に集中している。建設業では、年度末集中は、工期に制約のある一部の工種を除き、公共工事全般にあり、たとえば官公需の二次下請の内装案件では内装は最後の工程となるため、年度末の短納期の発注となるとしている。ビルメンテナンス業では、学校の工事・点検は、夏休み等に短期集中して実施することとなり、情報処理業では、行政の制度改正に伴い、新年度に間に合わせるため、システム改正の発注が年度末納期となっている。

 「今後の対応について」では、「来年4月の働き方改革関連法の円滑な施行のため、業所管省庁と連携して実態調査・分析に取り組み、対応策を実施することによって、不合理な商慣行等を是正していく」こととしている。

 なお、働き方改革と中小企業の問題については、公正取引委員会が5月31日に公表した「平成29年度における下請法の運用状況及び企業間取引の公正化への取組等」の中で、「働き方改革に関連して生じる中小企業等に対する不当な行為の事例」を取りまとめている(後掲の別稿参照)。

 

 

  1. 中小企業・小規模事業者の活力向上のための関係省庁連絡会議、第6回中小企業・小規模事業者の長時間労働是正・生産性向上と人材確保に関するワーキンググループ(13日開催)議事次第(12月13日)
    https://www.kantei.go.jp/jp/singi/katsuryoku_kojyo/choujikan_wg/dai6/gijisidai.html
  2. ○ 資料2「労働基準監督署で把握した働き方改革を阻害する取引環境の改善事例」(厚生労働省)
    https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2018/12/siryou2.pdf
  3. ○ 資料3「働き方改革を阻害する取引慣行について」(中小企業庁)
    https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2018/12/siryou3.pdf
  4. 参考
    SH1903 公取委、働き方改革に関連して生じ得る中小企業等に対する不当な行為の事例を公表(2018/06/13)
    https://www.shojihomu-portal.jp/article?articleId=6402920

 

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