経産省、営業秘密管理指針を改訂・公表
――クラウドなど多様な情報管理形態への対応など――
経済産業省は1月23日、平成27年1月以来4年ぶりに改訂した「営業秘密管理指針」を公表した。
今般の改訂は、ビッグデータやAIの活用といった第四次産業革命の進展を背景として情報活用形態が多様化する状況を踏まえ、「営業秘密」の要件に該当するための管理のあり方につき産業構造審議会知的財産分科会「営業秘密の保護・活用に関する小委員会」において検討が行われた結果、(ア)多様な情報管理形態に対応した秘密管理性確保のための措置を施すとともに、(イ)学習用データ等で活用するデータの有用性・非公知性の考え方についても明確化・整理する必要が指摘されたことに対応したものである。
改訂案が30年11月22日~12月21日の間、意見募集に付されていた。成案として公表された指針をみると、「はじめに(本指針の性格)」《指針1ページ》中の(改訂の経緯)に本改訂の趣旨を追記するなどし、上記(ア)(イ)の観点から主には次の7点を改訂。寄せられた意見を反映する細部の修正も図られている。
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①「2.秘密管理性について」の「(2)必要な秘密管理措置の程度」中(その他の秘密管理措置)の項に、従業員に対して秘密管理性を担保する有効な措置として「秘密保持契約(あるいは誓約書)などにおいて守秘義務を明らかにする」ことを例示として追加《指針8ページ》
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②「(3)秘密管理措置の具体例」の「② 電子媒体の場合」中「典型的な管理方法」の項に、クラウドについても「外部のクラウドを利用して営業秘密を保管・管理する場合も、秘密として管理されていれば、秘密管理性が失われるわけではない。例えば、 階層制限に基づくアクセス制御などの措置が考えられる」の一文を追記《指針11ページ》
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③「(4)営業秘密を企業内外で共有する場合の秘密管理性の考え方」の「② 複数の法人間で同一の情報を保有しているケース」中(別法人の不正な使用に対する差止請求等)の項に、「複数企業で共同研究開発を実施する場合等、複数の他の企業に自社の営業秘密たる情報を開示することが想定されるが、その場合、自社の秘密管理意思を示すためには、開示先である共同研究開発に参加する複数企業等を当事者としたNDAを締結することが有効であると考えられる」の一文を追記《指針15〜16ページ》
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④「3.有用性の考え方」の(2)に、有用性が認められるネガティブ・インフォメーションの例として「過去に失敗した研究データ(当該情報を利用して研究開発費用を節約できる)や、製品の欠陥情報(欠陥製品を検知するための精度の高いAI技術を利用したソフトウェアの開発には重要な情報)等」を追加《指針16〜17ページ》
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⑤「4.非公知性の考え方」の(1)に、「公然と知られていない」状態について「公開情報や一般に入手可能な商品等から容易に推測・分析されない」情報(リバースエンジニアリングが容易でない情報)を追加《指針17ページ》するとともに、「4.非公知性の考え方」の末尾に関係する裁判例として〈参考裁判例〉2件(肯定例および否定例)を追記《指針18ページ》
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⑥(4)の公知情報の組合せに関する表現を巡って要件の混同を避けるなどの趣旨から、非公知性の要件の説明中「有用性があり」としていた文言について「価値がある場合は」と修正《指針18ページ》
- ⑦(4)の文末に注釈12を新設、非公知性の判断に係る考慮要素として「公知情報を組み合わせて作成したAI技術の開発(学習)用のデータについては、その組み合わせの容易性、取得に要する時間や資金等のコスト等を考慮して、その非公知性が判断されるものと考えられる」ことを例示として追加《指針18ページ》