◇SH2339◇コンプライアンス経営とCSR経営の組織論的考察(140)日本ミルクコミュニティ㈱のコンプライアンス⑫ 岩倉秀雄(2019/02/15)

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コンプライアンス経営とCSR経営の組織論的考察(140)

―日本ミルクコミュニティ㈱のコンプライアンス⑫―

経営倫理実践研究センターフェロー

岩 倉 秀 雄

 

 前回は、新会社の中期経営計画のうち事業基盤の確立について述べた。

 統合に参加した3社とも厳しい経営実態にあったことや、市乳事業はボリュームは大きいものの利益の出ない事業と言われていたことから、市乳事業を専門とする新会社にとって、事業基盤の確立は、組織の持続的発展にとって極めて重要なテーマであった。

 中期経営計画(MC05)では、統合3社の強みを活かし、合理的・効率的な生産・販売・物流体制を確立し、顧客にとって価値の高い商品を届けることにより市場での地位の確立を図ることを基本目標とした。

 そのための体制として、①メグミルクブランドの育成、②直営15工場と関連会社の活用、③営業拠点の集約と情報システムを活用した販売支援システムの構築、④受注・生産見込み・在庫管理・配車機能を集約したロジスティクスセンターの設置と物流拠点の集約、⑤3社の強みを活かしたカテゴリー別商品開発体制の構築と基礎研究に関する雪印乳業(株)技術研究所との連携、⑥きめ細かなエリア対応と迅速な意思決定を可能とする地域事業部制の導入を決めた。

 また、具体的な施策としては、①メグミルクブランド牛乳の確立とメグミルクブランド商品のラインナップ強化、②育成プログラムによる牛乳販売店の活性化、③卸から直接取引へのシフトと公平・透明な取引制度の導入、④重点取引先との関係強化、⑤車両発着確認システムの導入、⑥市場トップ商品の維持・育成、⑦新たな付加価値商品の創造(特定保健用食品、新機能性素材、次世代容器等)を実施することとした。

 今回は、統合会社の求心力の構築について考察する。

 

【日本ミルクコミュニィティ㈱のコンプライアンス⑫:中期経営計画③】(『日本ミルクコミュニティ史』161頁~162頁)

<求心力の構築>

 日本ミルクコミュニティ(株)は、昨日までライバル関係にあった組織文化の異なる3社が、雪印乳業㈱グループの不祥事を契機として短期間に統合し、社会との信頼関係を新たに構築するとともに、規模が大きいものの利益の出にくい市乳事業だけを集めて経営し、黒字化することを意図した会社であった。

 その為には、徹底的に事業を合理化するだけではなく、そこに働く者が互いに理解・信頼・協力する仕組みが必要だったが、それは、まさに「言うは易く行うは難し」のテーマだった。

 統合会社設立準備委員会も、この問題への認識があり、中期経営計画の目標の一つに「求心力の構築」を謳い、別表の取組みを計画した。

 しかし、実際には、この表通りに施策を実行できず、(あるいはこの程度の施策では問題解決にはならず)、組織内に様々なコンフリクトが発生しそれを制御できなかったが、この点については、「合併会社の課題」[1]として後述する。

 

表.MC05基本方針と体制及び施策

③求心力の構築




出身会社や部門、職位などにとらわれず、人と情報の活発な交流により社内融和を図る。経営目標の達成に向けて、各人が具体的な目標や行動規範を共有し、一体となって取り組む。統一された人事制度や従業員の声を反映した施策を実施し、社内求心力の構築を図る。
体 制 人事制度の統一 統合3社の従業員の意識を一つにするために、統合時点より統一された人事制度を運用する。
行動規範の制定 企業理念実現のための行動の基本を定めた「ミルクコミュニティ行動宣言」と、企業の社会的責任を果たすための具体的な行動のあり方を明示した「ミルクコミュニティ行動指針」を制定し、役職員全員で共有する。
コンプライアンス部 社内規則及び法令遵守のため、内部監査を行い、各部門の事業遂行をチェックする部署を設置する。
イントラネットの構築 経営トップを含めた企業内の情報交換の仕組みとして、イントラネットを導入する。

策 展
社内コミュニケーションの充実 社内横断的プロジェクト・運動を生み出す仕組みづくり 従業員提案窓口を設け、提案内容の審議・検討を行い、従業員発案による部門横断的プロジェクト・運動を支援する。
イントラネットの活用による情報共有化 各種データや規則等の基本的社内情報はもとより、経営トップのコミットメントや社員の意見交流などの場をイントラネットに設ける。
企業行動の自律性向上 企業行動規範の浸透 経営トップを中心とした、企業行動規範を徹底するプログラムを策定・実践する。
従業員からの問い合わせ窓口の設置 コンプライアンス部に特別相談窓口を設置し、秘密の保持を保証して従業員が安心して相談できる体制を作る。
従業員満足の向上 働きがいのある 人事制度の確立 新人事制度の定着・業務の安定化を図るとともに、自己申告制度、社内公募制度、社内インターン制度の導入の検討や人材開発研修を実施する。
従業員満足度調査を踏まえた従業員満足向上対策策定 従業員満足度調査とそれに基づく改善活動を定期的・継続的に実施する。

※『日本ミルクコミュニティ史』161頁~162頁の表より。

 

 次回は、経営基盤の確立と役員体制(ガバナンス)について考察する。



[1] 合併会社のマネジメントの困難性については、本論稿「合併会社のコンプライアンス」において既述した。歴史と伝統のある単一の組織に比べて、合併会社では、組織文化やマネジメント手法の違い、互いに良く知らないことによる疑心暗鬼の発生等により、コンフリクトが発生しやすい。一方、合併会社設立時には、統制力が確立されていないためにコンフリクトが顕在化しやすい(=マネジメントの困難性が高い)。
 この表では、人事制度に関して「統合3社の従業員の意識を一つにするために、統合時点より統一された人事制度を運用する」と謳っているが、実際に実施された給与制度は、旧社の給与体系を反映し、調整給を設けて5年目に給与体系を統一するとしたために、同一職務・同一職位で出身会社による大きな給与格差(不祥事により救済された会社の出身者が最も給与が高い等)が発生し、これが不満を生み融和を妨げる原因になった。

 

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