◇SH2342◇中国:市場管理監督総局体制下における初の問題解消措置付き経営統合案件(上) 鹿はせる(2019/02/15)

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中国:市場管理監督総局体制下における初の問題解消措置付き経営統合案件(上)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 鹿 は せ る

 

 中国では、2018年3月に、それまで独禁法の運用を行っていた主要3機関(商務部、工商総局及び国家発展改革委員会内の独禁法運用部門)が、市場管理監督総局(SAMR)に一本化された(従来は、独禁業務のうち、商務部が経営者集中、工商総局が非価格関連のカルテル、国家発展改革委員会が価格関連のカルテルをそれぞれ担当していた。)。その後2018年7月には、機関統合後初めての問題解消措置付きの経営統合案件が公表された。以下では、今後のSAMR体制下での企業結合審査の方向性を理解するため、当該案件を概観する。

 

1. 背景

 本統合案件は、フランスのレンズメーカーであるエシロール(Essilor、中国名は依视路)と、イタリアのメガネメーカーであるルックスオティカ(Luxottica、中国名は陆逊梯卡)の経営統合であり、両者はエシロールルックスオティカとして統合し、両者の株主がそれぞれ50%ずつ統合後の会社の株式を保有することとなった。両者いずれも中国国内での売上げが中国独禁法における経営者集中届出の基準に達していたため、SAMRによる経営者集中審査が行われた。審査は第3段階まで進み、2018年7月25日、SAMRは問題解消措置付きで本件統合を許可した。

 

2. 関連市場に関する認定

 SAMRは、本件統合の関連市場について、商品役務の市場として①光学レンズ卸売、②光学フレーム卸売、③サングラス卸売及び④メガネ製品の小売、の市場をそれぞれ認定した。ここで注目に値するのは、①から③までの卸売市場についてそれぞれ、「材質、デザイン、製造過程、価格及び対象顧客が異なる」ことを理由として、更にハイ・ミドルエンド市場及びローエンド市場の2つの市場を認定したことである(すなわち、④のメガネ小売市場と合わせ、計7つの商品役務関連市場を認定したことになる)。他方、メガネ製品の小売については、通常メガネ小売店は多くの種類のメガネ及びサングラスを取り揃えて販売しているとして、同様の細分化した市場認定は行っていない。

 次に、地理的市場については、①から③までのそれぞれの卸売市場については、(当事会社はいずれも世界範囲で製品を製造販売しているが)中国全土を関連市場として認定している。多くのクロスボーダー企業が中国において生産設備を保有しており、中国の消費者の顔面の特徴、嗜好に合わせてメガネ部品の調整を行っていることが主な理由である。④のメガネ小売市場については、全国約6万点の小売店はほぼ都市部に点在しており、消費者は通常生活する都市内でメガネを購入することを理由として、中国の都市部を関連市場として認定している。

 

3. 競争分析

(1) 市場シェアの認定及び当事会社の主張

 SAMRは、本件統合が関連市場の競争に与える影響を分析し、結果として、上記7つの商品関連市場のうち、ローエンドのサングラス卸売市場を除く全ての市場について、本件統合により競争制限効果が生じる又はそのおそれがあると認定している。

 認定理由を抜粋すると、SAMRはまず、ハイ・ミドルエンド及びローエンドの光学レンズ卸売市場、ハイ・ミドルエンドのサングラス卸売市場についてそれぞれ、当事会社の市場シェアの合計はいずれも30-50%に達し、他の主要競争者の合計を上回ること、同機関が行った需要者インタビューの結果、過半数のメガネ小売販売店がエシロール及びルックスオティカの製品には高いブランド力があり、必ず販売店に配置する必要があると答えたことを認定している。

 当事会社はこれに対して、両者の主力商品が異なるため(エシロールは光学レンズ、ルックスオティカは光学フレームをそれぞれ主力商品としていた)、水平的重複関係が少ないこと(従って、各商品について、統合後の市場シェアの増加分が少ないこと)、また、光学フレームにおいてはシェアが比較的低いことを重点的に主張したと思われる。

(下)につづく

 

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