◇SH2389◇企業活力を生む経営管理システム―高い生産性と高い自己浄化能力を共に実現する―(第15回) 齋藤憲道(2019/03/11)

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企業活力を生む経営管理システム

―高い生産性と高い自己浄化能力を共に実現する―

同志社大学法学部
企業法務教育スーパーバイザー

齋 藤 憲 道

 

第3部 さらなるリスク発見と対策が必要な分野
     例えば、「製品の性能・安全の問題」、「秘密情報流出」

 

1. 共通的な対応策

② 認証・審査・承認等する側(第三者認証機関、行政機関)が行う対策

1) 認証する立場にある機関の業務執行力を強化する。

  1. ・ 査察体制を抜本的に強化する。(査察等担当者の増員・スキルアップ、抜打ち査察回数の増加等)
  2. ・ 不正行為の「通報窓口」の受付範囲・受付対象者を拡大する。
  3. ・ 欧米の先進事例を参考にして、新たな査察方法等を導入する。
  4. ・ 関連機関や官庁等との間で、連携を強化する。(定期連絡会議の設置等)

2) 企業が作成・提出する申請書の記載内容を厳しく確認する。(虚偽・誤記を除去)

  1. ・ 一定頻度(ランダム又は定期)で、抜打ち検査・立会い検査を実施する。

3) 不正の有無を検証し、不正が疑われる製品群の全てについて認証を一時停止する。

  1. ・「計測・検査の方法、計測機器、計測結果」を審査機関が(全数又は抜取り)検証して不正・誤りを発見する。

4) 不正行為が判明したときは、その企業に対して制裁を行う。

  1. ・ 不正の内容と企業名を公表する。
  2. ・ 不正に係る申請を却下する。
  3. ・ 同じ企業の他の申請を一時停止する。
  4. ・ 認証の効力を停止する。
  5. ・ 虚偽申請に対する罰則・制裁を実施する。

5) 不正を行った企業に対して「その後の審査・報告等」をより厳格にする。

  1. ・ 審査機関/認証機関の中で(外部委託せずに)全数を対象に審査し、承認取得後の監査・調査等を厳格に行う。
  2. ・ メーカーについては生産プロセス・社内規程等を詳細に再検査する。(厳格な検査方法、又は生産工程から抜取検査)
  3. ・ 現況報告・定期審査の頻度を高め、その内容を詳細にする。

6) 基準・規格等の内容・審査方法等を改善する。

  1. ・ 現在の業界の実態(技術水準向上、IT化等)を反映した方法に更新する。(最新技術の導入等)
  2. ・ ルールを更に透明化・簡素化する。
  3. ・ 基準・制度の国際調和(標準化、相互承認等)を進め、良い点を導入する。

7) 行政機関の場合は、法令に基づいてメーカーに立入検査等を行い、点検、回収、消費者への注意喚起等の措置をとるべき旨の緊急命令・処分等を行う。

③ 業界として行う対策

1) 業界の自主基準(コンプライアンス・プログラム・ガイドライン、製品規格[1]等)を制定する。

2) 過度な需給逼迫が生産活動や製品の安全を害することになる場合は、その状況を、顧客・市場に理解して貰う取り組みを行う。

④ 必要に応じ、法令・基準・規格を制定・改正

  1. (例) 景品表示法改正(管理上の措置指針制定[2])、消費生活用製品安全法改正、不正競争防止法改正(営業秘密管理指針制定、秘密情報の保護ハンドブック作成)、個人情報保護法改正、建築基準法改正、建築士法改正


[1] 2000年9月に、自宅のジェット噴流バスで、6歳の女児が吸水口に髪の毛が絡まった状態で溺死する事故があった。他にも類似のケースがあったことから、同年12月に28社が参加して「ジェット噴流バス協議会(JBK)」を設立し、2001年10月に「JBK安全基準」を作成した。この基準は、後に、消費生活用製品安全法の技術基準に採用された。

[2] 「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」2014年(平成26年)11月14日 内閣府告示第276号

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