SH2417 企業法務フロンティア「防犯目的のカメラ画像共同利用の展望」 若松 牧(2019/03/20)

取引法務個人情報保護法

企業法務フロンティア
防犯目的のカメラ画像共同利用の展望

日比谷パーク法律事務所

弁護士 若 松   牧

 

1 カメラから得られる情報の個人情報該当性

 カメラ画像に写る顔等により特定の個人を識別できる情報(以下「顔画像データ」)は、個人情報に該当する(個人情報の保護に関する法律(以下「法」)2条1項1号)。また、顔画像データを機械可読や分析等が可能な状態にするため、取得した画像から顔の骨格、目・鼻・口等の位置や形状等の特徴を抽出し、数値化したデータを特徴量データといい、このようなデータも、「個人識別符号」(法2条1項2号、同条2項2項1号、個人情報の保護に関する法律施行令1条1項ロ)として、個人情報に該当する[1]。そして、こうした個人情報を、特定の個人情報を検索することができるように体系的に構成した個人情報の集合物は、「個人情報データベース等」に該当し(法2条4項1号)、集合物を構成する個人情報は「個人データ」に該当する(法2条6項)。

 他方で、性別・年齢等の属性情報や、人の形を判別して人の数を計測したカウントデータ、人がどのように行動したかという座標値を取得し時系列に蓄積すること等によって生成される動線データ等は、それ単体では個人を識別できる情報ではないため、特徴量データと紐付けられていない限り、個人情報には該当しない[2]

 

2 カメラ画像から得られる情報の他の事業主体への提供の可否

 個人を識別できないように加工等された情報は、匿名加工情報(法2条9項)と呼ばれ、匿名加工情報は、所定の要件に従えば、本人の同意を得ずに第三者提供をすることができる(法36条4項、37条)。個人情報保護委員会によれば、平成30年12月時点で、既に350社において、匿名加工情報がマーケティング等に活用されているという[3]。もっとも専門的な加工技術等が求められること等から、匿名加工情報の利用は、未だ一部の企業において限定的に行われている取組みに留まる。

 では、個人の識別力を維持したままの顔画像データや特徴量データを、他の企業と共に利用することはできるか。たとえば、VIP顧客にスムーズに対応するため、VIPとして登録された特徴量データを入口のカメラが検知した場合、従業員に通知するような仕組みを複数の事業者間で取り入れる目的で、ある事業者が収集した特徴量データを複数の事業者間で利用することは可能か。この点、本人の同意等の諸要件を充たせば、個人データの第三者提供は可能であるため(法23条1項柱書)、このように本人にメリットの大きい目的のためであれば、本人の同意を得て特徴量データを第三者提供することも可能かもしれない。他方で、たとえば過去に犯罪・迷惑行為を繰り返した者の来店を検知した場合、警備員等を警戒に向かわせるという目的で、ある事業者が収集した特徴量データを複数の事業者間で利用することは可能か。このような場合、第三者提供にあたり本人の同意を得ることは想定しがたいため、他の方法を検討する必要がある。

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