◇SH2428◇経産省のCGS研究会、「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針(仮)」の案を提示(2019/03/26)

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経産省のCGS研究会、「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針(仮)」の案を提示

――骨子案から構成の再編を含めて修正――

 

 経済産業省の「コーポレート・ガバナンス・システム(CGS)研究会」(座長=神田秀樹・学習院大学大学院教授)の第15回会合が3月15日に開かれ、「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針(仮)」(以下「ガイドライン」)の案が提示された。同研究会では次回(4月18日)の会合でガイドラインの取りまとめを行う予定である(5月29日に予備日程あり)。

 なお、日本経済再生本部の未来投資会議で行われた「上場子会社のガバナンス」等の議論については、後掲の別稿を参照されたい。

 以下、今回の概要をみると、ガイドラインについては、前回会合で「骨子案」(24頁建て)が示されていたところ、構成の再編(全6章から全7章)等を含めた修正が行われて、今回の「ガイドライン案」(58頁建て)となった。

 

【ガイドライン案の構成】

 1 はじめに

 2 グループ設計の在り方

 3 事業ポートフォリオマネジメントの在り方

 4 グループ内部統制システムの在り方

 5 子会社経営陣の指名・報酬の在り方

 6 上場子会社の在り方

 7 おわりに

 

 ガイドライン案の「1.3 ガイドラインの目的と主な対象」では、「本ガイドラインは、ベストプラクティスを示すものであり、これに沿った対応を行わなかったことが取締役等の善管注意義務違反を構成するものではないが、反対に、本ガイドラインに沿った対応を行った場合には、他に特段の事情がない限り、通常は善管注意義務を果たしているものと評価されるものと考えられる」との文章が追加された。

 今回のガイドラインの対象について、ガイドライン案の「1.4 各章の具体的な適用対象について」では、次のようにまとめている

  1. ・ 本ガイドラインの主たる対象は、グループ経営を行う上場企業及びその子会社から成る企業集団であるが、グループガバナンスにおいて、少数株主との利益相反が問題となる上場子会社の扱いについては特段の配慮が必要となるため、上場子会社に関する論点については、「6 上場子会社の在り方」として独立した章を設けることとした。
  2. ・「3 事業ポートフォリオマネジメントの在り方」及び「4 グループ内部統制システムの在り方」については、上場子会社も含めた共通事項について整理し、上場子会社固有の問題については、別途6に記載している。
  3. ・「5 子会社経営陣の指名・報酬の在り方」については、主として完全子会社を念頭に置いて整理し、上場子会社の指名・報酬については、別途6の中に記載している。

 上場子会社における独立社外取締役の独立性については、ガイドライン案の「6.3.3 上場子会社における独立社外取締役の独立性に関する考え方」において、以下のように骨子案から大きく加筆・修正された。

  1. ・ 従来、独立社外取締役の独立性については、東証の独立性基準において、会社法上の社外性の要件に加え、最近まで親会社・兄弟会社の取締役等であった者、及び現在又は最近まで自社の取引先の業務執行者等であった者を除外するとされてきた。
  2. ・ 上場子会社における独立社外取締役の独立性については、少数株主の利益保護という重要な役割を果たし、少数株主や市場からの信頼が得られるよう、少なくとも親会社の出身者(会社法上の社外性の要件に合わせて10年以内に親会社に所属していた者に限定することも可)は独立社外取締役としては選任しないこととすることを検討するべきである。
  3. ・ また、上場子会社の独立社外取締役については、親会社から独立した立場で少数株主の利益保護に配慮しつつ、上場子会社の企業価値向上に貢献できるかという観点から指名・選任されるべきものである。
  4. ・ 特に少数株主の利益保護が取締役としての善管注意義務・忠実義務に基づく重要な役割であることを明確にした上で、こうした役割に関する意識を醸成することが重要である。
  5. ・ そのため、上場子会社の独立社外取締役の選任に当たっても、そのような役割を担うことができる人物であるかどうかについて十分な検討を行うとともに、その就任依頼の際にもその点を明示的に確認しておくべきである。また、こうした役割を適切に果たしていくためには、就任時の文書による確認(誓約書に署名させる、委任契約書に加筆する等)や定期的な研修の受講等が有効であると考えられる。
  6. ・ また、親会社は、このような上場子会社における独立社外取締役の重要性を踏まえ、支配株主としての取締役の選解任権限の行使に当たっては、上場子会社におけるガバナンスの確保の観点から適切な選任がなされるよう、十分に配慮することが求められる。
  7. ・ この点に関し、利益相反取引におけるMajority of Minority(MoM)の考え方(利益相反取引において、その公正性を担保する観点から、支配株主及びそれと利害関係を共通にする株主を除いた一般株主の過半数の賛同を求めるもの)を踏まえ、例えば、独立社外取締役の選任議案に関するMoM対応状況について情報開示することが有効であるとの見解もある。

 

 

  1. 経産省、第15回 CGS研究会(コーポレート・ガバナンス・システム研究会)第2期資料(3月15日)
    https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/cgs_kenkyukai/02_015.html
  2. ○「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針(仮)」の案について
    https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2019/03/2_015_04_01.pdf
  3.  
  4. 参考
    SH2369 経産省、「グループ・ガバナンス・システム」で実務指針の骨子案を提示(2019/02/28)
    https://www.shojihomu-portal.jp/article?articleId=8327093
  5.   SH2411 日本経済再生本部の未来投資会議、「上場子会社のガバナンス」等について議論(2019/03/19)
    https://www.shojihomu-portal.jp/article?articleId=8471301

 

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