◇SH2552◇企業活力を生む経営管理システム―高い生産性と高い自己浄化能力を共に実現する―(第32回) 齋藤憲道(2019/05/23)

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企業活力を生む経営管理システム

―高い生産性と高い自己浄化能力を共に実現する―

同志社大学法学部
企業法務教育スーパーバイザー

齋 藤 憲 道

 

3.「製品規格」の仕組みが業法・有害物質規制・表示規制等の遵守に有効

例5 建築(建築基準法、都市計画法、建設業法等)

• 建築に関しては多くの規制がある。

 建築規制法体系の一般法(基本法)として建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めているのは、建築基準法である。

 都市計画に関しては、建築基準法と都市計画法の2法が基本法の役割を果たしている。

  1. (注) 構造規定は、自重・積載荷重・積雪・風圧・土圧・地震等に対して安全であること等を基本にして定められている。近年、建築物の耐震性強化・耐久性向上を図って耐震改修促進法や長期優良住宅普及促進法等が制定され、建築基準法を補強している。

• 建築物は、同一物が存在しないために、1件単位で許認可が行われる。(この点が量産品と異なる。)

 つまり、建設業界では、JIS規格等における「製品規格」が複数の法令の組み合わせによって1物件毎に定められ、これについて「製品試験(全数検査)」が行われる、と考えることができる。

  1. ① 建築行為を行うときは、建築基準法に加えて様々な法律・条例・地域の建築協定等に抵触していないことを都道府県・市町村等の担当部署に確認する必要がある。
    法令に抵触する場合は「確認済証」が交付[1]されず、着工できない。
  2. (注) 建築確認申請書に不備(法令違反等)があるために確認が得られない場合は、再申請する。
  3. ② 建築工事は、①の建築確認を受けたうえで知事に届けて開始し、(3階建の鉄筋建築等の法定の建築物については工事途中の中間検査を行い[2])、工事完了時の完了検査を行って合格した場合に「検査済証(建築基準法に適合)」が発行される[3]
  4. (注) 建築を規制する多くの法令(下記の法令を見ると、様々な業法が関係していることが分かる。)
    建築物に関係する技術的基準を規定(建築基準法、消防法等)
    地域及び都市の整備・安全確保のための規制(国土利用計画法、都市計画法、建築基準法、宅地造成等規制法、土砂災害防止法[4]、都市緑地法等)
    土地の用途・利用の規制(河川法、森林法、道路法、道路交通法、農地法、文化財保護法等)
    生活インフラの整備・保全のための規制(水道法、下水道法、浄化槽法、駐車場法、廃棄物処理法、バリアフリ       ー法等)
    公害防止のための規制(大気汚染防止法、水質汚濁防止法、土壌汚染対策法、騒音規制法、振動規制法、都道府       県・市町村の公害防止条例等)
    事業活動を行う建築物の規制(食品衛生法、建築物衛生法、旅館業法、興行場法、医療法、老人福祉法、毒物及       び劇物取締法、高圧ガス保安法等)
    環境・景観の保全のための規制(環境基本法(環境基本計画を策定[5])、景観法、自然公園法、屋外広告物法等)
    建築物省エネ法、建設リサイクル法

• JIS規格等の「製品規格」の場合、製品の「全数検査」を行うと「品質管理体制」の確保に関する審査が簡素化(又は免除)されるが、建設業においては「全数検査」を基本(小規模案件を規制対象外にする法令も多い)としつつ、次の①②③の仕組みを追加して「品質管理体制」を補強している。

  1. ① 多くの業務について国・地方公共団体の許可制度・資格制度を設定。
  2. 〔許可制度の例〕建設業法
    建設業の許可が29種類[6]の工事毎に必要である。
    建設工事には主任技術者(一定の場合は監理技術者)を配置しなければならない[7]
  3. (注) 公共性のある建物や多数者が利用する建物の場合、主任技術者(又は監理技術者)は工事現場毎に専任でなければならない。

〔資格の例〕様々な法律で設定

 建築主事[8]、測量士(測量法)、建築士(建築士法2条1項~4項:1級、2級、木造)、建築設備士(建築士法2条5項)、21部門[9]の技術士(技術士法)、電気工事士(電気工事士法:1種、2種)、電気主任技術者(電気事業法:1種~3種)、給水装置工事主任技術者(水道法)、消防設備士(消防法)、浄化槽設備士(浄化槽法)、6種の技術検定(建設業法:建設機械施工、土木施工管理、管工事施工管理、造園施工管理、建築施工管理、電気工事施工管理)、土地家屋調査士(土地家屋調査士法)、宅地建物取引士(宅地建物取引業法)、不動産鑑定士(不動産の鑑定評価に関する法律)、マンション管理士(マンション管理適正化法)

② 一括下請け(丸投げ)を禁止[10]

③ 工事が設計図書の通りに実施されていることを確認する工事監理[11]制度を採用。



[1] 建築主事又は民間の指定確認検査機関が交付する。(建築基準法6条1項・4項、6条の2第1項、77条の18~77条の21)

[2] 建築基準法7条の3第1項・5項、7条の4第3項~5項

[3] 建築主は、工事を完了したとき建築主事等に検査を申請し、建築物・敷地が建築基準関係規定に適合していることを証する「検査済証」の交付を受ける。(建築基準法7条5項、7条の2第1項~5項)

[4] 「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」の略称

[5] 政府は環境基本計画を作成し、閣議決定して公表する。(環境基本法15条1項、3項、4項)

[6] 大規模・複雑な工事に関する2種類の「一式工事(土木一式、建築一式)」と、大工・左官・屋根・ガラス・塗装・防水・電機通信・水道施設・消防施設等の27種類の「専門工事」。合計29種類。

[7] 主任技術者は工事現場における建設工事の施工の技術上の管理を司る。元請が一定額以上の工事を下請に出す場合は、主任技術者より上位の資格を有する監理技術者を工事現場に配置しなければならない。(建設業法26条1項~4項)

[8] 建築基準法4条(設置義務)、5条(建築基準適合判定資格者検定)、6条1項(建築物の建築等に関する確認等)

[9] 〔21部門〕機械、船舶・海洋、航空・宇宙、電気電子、化学、繊維、金属、資源工学、建設、上下水道、衛生工学、農業、森林、水産、衛生工学、情報工学、応用理学、生物工学、環境、原子力・放射線、総合技術監理部門

[10] 建設業法22条

[11] 建築基準法5条の6第4項。建築士法2条8項、3条、3条の2、3条の3

 

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