◇SH1206◇ベトナム:外国人の社会保険強制加入制度の概要 カオ・ミン・ティ(2017/06/02)

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ベトナム:外国人の社会保険強制加入制度の概要

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 カオ・ミン・ティ

 

 ベトナムで雇用される従業員を対象とする強制加入の公的保険制度としては、社会保険、健康保険及び失業保険が存在する。各公的保険の加入対象者と負担は現時点においては下表のとおりである。

    社会保険 健康保険 失業保険
強制加入対象 ベトナム人
外国人 × ×
負担割合 雇用者 18% 3% 1%
被雇用者 8% 1.5% 1%
合計 26% 4.5% 2%

 ベトナムにおいても、近年、高齢化の兆しが見え始め、社会保険基金の将来的な積立不足の可能性が国際機関より指摘されるなど、社会保険の財源の確保が喫緊の課題となっており、強制社会保険料の負担が拡大される傾向がみられる。2016年1月施行の社会保険法(58/2014/QH13)においては、2018年1月1日より、1ヵ月以上(現在は3ヵ月以上)の雇用契約により就労するベトナム人に加えて、外国人についてもベトナム政府が定める細則に従って社会保険の強制加入対象になることができると定めている。そして、このたびベトナム労働傷病兵社会省は、2018年1月1日からの外国人の社会保険強制加入に対する政令の草案を公表し、パブリックコメントを求めている。社会保険法では外国人の社会保険加入に関する詳細な内容が規定されていないため、この政令により詳細が決定されることが想定されている。当該草案の概要は以下のとおりである。

  1.  •  強制加入の対象となる外国人
    労働許可証等を保持し、ベトナムに拠点を置く雇用者と1ヶ月以上の雇用契約を締結する外国人
  2.  •  保険料額
    ベトナム人と同様に、月給(手当等を含む)に対し、雇用者の負担分は18%(内訳は疾病・妊娠出産基金に3%、労災基金に1%、退職及び遺族基金に14%)、被雇用者の負担分は8%(全額が退職及び遺族基金)となる。ただし、月給が政府の決定する基本賃金(本年7月1日より1,300,000ベトナムドン)の20倍を超える場合は、同基本賃金の20倍相当額を基準に保険料は算定される。
  3.  •  社会保険給付の内容
    ベトナム人と同様に、疾病、妊娠・出産、労災、退職及び死亡が保険金の給付の対象となる。また、労働契約が終了した外国人や、年金又は毎月の給付金の受給資格があるがベトナムに居住していない外国人は、請求により社会保険から一回限りの給付(原則として、社会保険料算出基礎となる月給の平均の2ヶ月分相当額に社会保険納付済み年数を乗じた額)を受けることができる。

 本草案の内容で強制加入制度が開始されると、駐在員の雇用コストが上昇することから、現地外資系企業の人事政策には一定の影響があるものと思われる。

 

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