◇SH2566◇経済同友会、CEOの選抜・育成で経営者・社外取締役向けに報告書 (2019/05/29)

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経済同友会、CEOの選抜・育成で経営者・社外取締役向けに報告書

――先進事例も共有、後継者計画策定・運用のベストプラクティスとして――

 

 経済同友会は5月17日、報告書「経営者及び社外取締役によるCEO選抜・育成の改革-多様なガバナンスに応じた最良のサクセッションの追求-」を公表した。会員たる取締役社長・社外取締役ら199名で構成する「2018年度企業経営委員会」(委員長・冨山和彦経営共創基盤代表取締役CEO)がCEOの選抜・育成に関して行った調査・ヒアリング・議論の結果を経営者・社外取締役の立場となる自身らに向けて取りまとめたものとなる。

 コーポレートガバナンスの本質を「大きな環境変化の中で不断の変革をリードする立場にあるCEOの選解任である」と見据えたうえ、昨今のガバナンス改革に一定の進捗はみられるものの、日本企業が世界の時価総額ランキングで上位には入っておらず、企業不祥事やコンプライアンス違反も後を絶たない状況について「我々経営者がガバナンスの本質を理解し、経営において実践することに充分なエネルギーを注いでこなかった実態があるのではないか」との問題意識のもと、コーポレートガバナンス・コードの2018年6月改訂(補充原則4-1③参照)をも踏まえて編まれた。表紙・目次を含めて全体で38頁建てとなる本報告書の後半24頁分において調査研究に基づく「日本企業のCEO選抜・育成の先進事例」「特徴のある欧米企業のガバナンス事例」といった参考資料などが掲げられている。

 報告書の本文は「はじめに」「Ⅰ. CEOの選解任、選抜・育成についての基本的考え」「Ⅱ. CEOの選抜・育成に関する共通項の整理」「Ⅲ. CEOの選抜・育成の仕組みづくりに向けた様々なベストプラクティス」「おわりに」の各章で構成される。「Ⅰ」において取締役会の役割とともに、自社の実態に即して最良となる仕組みを追求し続けなければならないこと、社外取締役が果たすべき役割を説明したうえで、「Ⅱ」においては経営トップからのヒアリング内容、これに基づく議論などを踏まえ、先進事例にみる共通項として8項目を抽出、整理。

 上記「Ⅲ」で紹介されるベストプラクティスは「Ⅱ」の共通項を実践すべく「様々なベストプラクティス、取り組みや方法、考えられる選択肢等」を具体化したものであり、共通項に沿って次の各項目ごとに事例や考え方が掲げられた。①企業理念を共有し、実践する、②CEOの選抜・育成に現社長、会長と取締役が共同で真摯に取り組む、③CEOに求められる資質、選任の基準を明確化する、④CEOの任期について公明正大に議論できる環境をつくる、⑤CEOは自身の就任時から、次期CEOの選任に向けて検討を開始する、⑥CEOだけでなく、次の経営を担う「経営陣」全体の選抜・育成を行う、⑦早い段階から、将来のCEO候補者群の育成を行う長期サクセッションプランをつくる、⑧高い質を持った、意欲ある社外取締役の獲得と活用を目指す。

 これらのうち、たとえば③では、まず(ア)「普遍的、一般的な資質の例」として「経営執行における、判断責任、実行責任、結果責任、説明責任を果たす力」「目標設定能力(自社が進むべき方向を決める)」「稼ぐ力向上への意識と執着、経営専門職であることの自覚」「コンプライアンスの遵守」など計8点の資質を例示。続いて(イ)「長期の経営上の根幹的な経営課題を担うべきCEOを選任する方法論」、(ウ)「外部からのCEO登用について、考えられる効果とリスク」をまとめた。また、上記⑦に絡んでは(ア)「サクセッションプランの対象として考えられる年齢や期待される経験」として、育成プログラムや修羅場(タフアサインメント)などの経験を積む機会など計6点に言及。(イ)「タフアサインメントの例」としても具体的に「経営再建が必要な部品メーカーの経営(自動車)」など5点を紹介している。

 なお、「おわりに」の直前には「会長職のあり方について」の議論・提言が添えられており、適宜参考とされたい。

 

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