ヨロズ、提案株主による仮処分命令申立事件で会社側の勝訴を発表
――買収防衛策の廃止に係る議題提案権を巡って横浜地裁・東京高裁が判断示す――
ヨロズ（本社：神奈川県横浜市、東証第一部上場）は5月28日、株主である株式会社レノ（本社：東京都渋谷区）から5月10日付で「株主提案の議題等を招集通知及び参考書類に記載すること等を求める株主提案議題等記載仮処分命令申立て」を受けていたとするとともに、同月20日付で横浜地裁がこれを却下する決定をなし、また27日付で東京高裁が提案株主の抗告を棄却したと発表した。
ヨロズでは定時株主総会の開催を6月17日に控えている。株主はこれまでに買収防衛策の廃止、政策保有株式の売却、自社株買いを含む株主価値向上策の実施などを求める書簡を送付。ヨロズは本書簡に対する会社側回答の公表を要請されているとして5月9日、見解を表明した（SH2553 ヨロズ、株主の要請に基づき受領レターに関する同社見解を公表 （2019/05/23）既報）。買収防衛策の廃止については、定時総会の議案とすることなどについて株主提案を行うとの書面を4月9日付で別途受領していたとされており、5月9日公表の同社見解では「当該株主提案の適法性について疑義があると考えておりますので、株主総会で取り上げることは予定しておりません」と述べていた。
同社が今般明らかにしたところによると、株主は翌5月10日、上記・株主提案議題等記載仮処分命令申立てを行っていたことになる。横浜地裁は5月20日に却下決定。提案株主が従前「投資先企業に対して行ったのと同様に、当社についても、当社株式を大量に買い付けた上、当社の経営陣に様々な圧力をかけることによって、 買い集めた大量の当社株式を短期間のうちに当社やその関係先に高額で売り付け、多額の利益を享受することを目的としており、その障害となる買収防衛策を廃止することを企図していると推認できること」などを認定したうえで、保全の必要性を認めないものとしたという。株主は同月21日付で東京高裁に即時抗告の申立て。
東京高裁では5月27日、株主が本株主提案についての議題提案権等を有しているとの被保全権利の疎明がされたとは認められず、保全の必要性については判断するまでもなく本申立てには理由がないとして上記・抗告を棄却する決定をしている（「原決定は結論において相当である旨結論づけて」いるとされる）。
東京高裁の判断は（1）同社定款において株主総会で決議することができるとされている「当会社の株式等（金融商品取引法27条の23第1項に定めるものをいう。）の大規模買付行為への対応方針」（以下、本稿で「本買収防衛策」という）には、その廃止は含まれていないと解するのが相当であり、本買収防衛策の廃止は提案株主が同社の株主総会の議題として提案できるものではなく、提案株主による廃止に係る議題提案権等は認められない、（2）仮に本買収防衛策の廃止が含まれるとしても、単に定款に買収防衛策についての決議に関する定めがあることをもって、株主総会にその導入等の具体的な権限を付与したものであるとまで直ちに解することはできず、定款の定めをした当該株式会社の状況を踏まえて判断すべきであって、①本定款規定は株主総会に本対応方針の導入等についての権限を付与するものではないものと解するのが相当であり、②仮に本定款規定が買収防衛策の導入等を決定する権限を株主総会に付与するものであると解するとしても、同社では取締役会も当該導入等を決定する権限を併存的に有しているものと解されるから、その権限は株主総会に専属的に属するものではなく、かつ、当該導入等を株主総会に提案するか否かの判断権限を取締役会に留保しているものと解するのが相当であるとするもの。いずれの場合であっても、提案株主による本買収防衛策の廃止に係る議題提案権等は認められないとした。異議申立てや再度の抗告は制度上認められていないことから、東京高裁の決定が確定している。
なお、同社の買収防衛策の概要・特徴とその合理性については6月17日予定の「第74回定時株主総会招集ご通知」にも詳しく、同社では「株主意思の重視」として（ア）2018年6月18日開催の第73回定時総会において継続の承認を得ていること（有効期間は2021年開催予定の第76回定時総会の終結の時まで）、（イ）同社株主総会において廃止する旨の議案が承認された場合にはその時点で廃止されるものとしており、その存続が株主の意思に係らしめられていることを説明している。
同社では、横浜地裁の却下決定が上述のように認定したことなどを踏まえ「提案株主の株式取得の目的及び取得の方針等について改めて確認させていただく必要がある」とコメントした。