ホシザキ、社内調査委員会による調査報告書を公表
――不適切取引多数の指摘も影響額軽微で過年度決算修正は行わない方針――
業務用厨房機器製造・販売のホシザキ(本社・愛知県豊明市)は12月6日、連結子会社であるホシザキ東海において判明した不適切な取引行為につき5日に社内調査委員会から調査報告書を受領したとして「社内調査報告書(開示版)」を公表した。
同社は10月30日、ホシザキ東海における不適切取引の判明とともに社内調査委員会の11月1日設置について発表し、両社が調査に全面的に協力していくこと、調査結果に関しては受領次第知らせる旨を明らかにしていた。これに伴い、11月7日に予定されていた決算発表は延期され、ホシザキでは11月13日、第73期第3四半期報告書の提出期限延長を関東財務局に申請(延長前の提出期限は11月14日)。翌14日には延長申請が承認され、提出期限が12月14日となったこと、社内調査委員会の調査結果の取りまとめは11月末を予定しておりこれを踏まえ「第3四半期報告を速やかに作成して、監査法人による四半期レビューを受け、延長後の提出期限である平成30年12月14日(金曜日)までに第73期第3四半期報告書を提出できる見込み」であることを発表した(期限となる14日の同社発表では、監査法人からの追加調査の要請等を受けて同日提出できないこととともに、東証および名証による同日付の監理銘柄(確認中)指定の見込み、今後の整理銘柄指定(指定後、上場廃止)の可能性について説明している)。
社内調査委員会は大手法律事務所の弁護士が委員長を務め、大阪市中央区の事務所に所属する弁護士・公認会計士、ホシザキ社外取締役監査等委員である弁護士、同社経理部・グループ管理部担当の取締役ら委員長を含む4名で構成。調査の補助として、同社グループ管理部および内部監査室の担当者(社内調査チーム)とともに委員長所属事務所の弁護士6名、国際会計事務所系アドバイザリー会社所属の公認会計士およびその他の専門家11名(社外調査チーム)が加わった。
「社内調査委員会設置の経緯」に関する調査報告からは、本件がもともとホシザキ東海の代表取締役社長宛てに「ホシザキ東海エリア営業部の一部の営業担当者が不適切なリース取引や架空発注等の取引行為(以下「本件取引行為」という。)を行っている可能性がある旨のメールによる通報を受けた」ものであることが判明している。ホシザキおよびホシザキ東海では初期調査としてヒアリング調査等を実施し「複数の営業担当者により実態のない工事発注や不適切なリース取引等の不適切な取引行為が行われていた事」を把握。社内調査委員会による調査体制は「(このような)初期調査の結果、本件取引行為に当社経営陣が組織的に関与していた疑いは生じていないことを踏まえて、時間的制約の中で効率的に調査を実施するため」に選択したとされており、他方「調査の中立性・客観性を担保するため」社内の担当取締役に加えて社外専門家を任命したと説明。社外調査チームも起用することで「透明性の高い深度ある調査を行う」ものとした。
調査の対象期間は原則として平成25年から30年9月まで。主にはホシザキ東海を対象範囲としたが、その他14の国内販売子会社についても類似事象がある蓋然性を検討する観点から一定の調査対象としている。調査目的を①本件に関する事実関係(類似事象の存否を含む)の調査、②本件による連結財務諸表への影響額の確定、③本件が生じた要因の究明と再発防止策の提言とし、その手法としては(ア)インタビュー、(イ)会計データおよび関連資料等の閲覧および検討、(ウ)デジタル・ フォレンジック(同社グループの役職員計14名中13名には会社貸与PC・会社貸与携帯について、また個人のメールアドレスを保有する12名にはメールデータについて、それぞれ保全してレビューを実施)、(エ)計661名へのアンケートによる質問調査、(オ)関与可能性のあるホシザキ東海の協力業者29社に対する取引状況の聴取、本年1月以降に工事取引があるホシザキ東海の協力業者653社に対する債権債務の残高確認、(カ)社内調査委員会への通報窓口の11月9日付設置および役職員への周知といった方法が採られた。
たとえば、上記(ア)では(a)本件取引行為への関与可能性のある営業担当者ら168名、(b)管理部門の審査状況を検証するためホシザキ東海管理部門担当者7名、(c)本件取引行為への関与またはその認識を有している可能性のある同社グループの役職員のうち計20名へのインタビューが、(a)(b)については社内調査チームにより、(c)については社外調査チームによりなされている。
調査報告書では、ホシザキおよびホシザキ東海のコーポレート・ガバナンス体制を概観したのちにホシザキ東海における受注・発注・管理業務のフローに触れ、ホシザキ東海の近年の業績など現状について敷衍。そのうえで、具体的に判明した本件取引行為として、複数の営業担当者による①個別取引間での売上原価の付替え、②代理店販売の仮装と架空・水増し発注による原価付替え、③代金の着服事案も認められることのほか、④販売代理店兼協力業者に対する架空売上の計上、⑥売上の先行計上、⑦既存設置機の無断転売および売却代金の着服が確認されたという。
一部については「営業担当者個人のレベルで……横行していた」「一定の管理職においてもこれを黙認するという状況があった」ともされる本件取引行為の原因としては、ホシザキ東海における組織風土の劣化、管理体制の脆弱性を指摘。すなわち、売上至上主義、風通しの悪い上意下達の組織風土、営業部内における管理機能不全ゆえに本件取引行為が「集団的現象として発生し、同時に、一部の営業担当者らにおける深刻なモラル低下を引き起こしたもの」と分析した。
再発防止策についても、手口別に特化する内部統制制度の整備や完全抑止する厳重な内部統制制度の構築に消極姿勢を示したうえで、まずは組織風土の改革を柱とすべきことを強調。同時に、個人的な違反行為が発生するリスクも一定の範囲に収められるような内部統制制度の整備強化を指向するべきとし、このような観点から「相談しやすい職場環境の整備」「管理部における教育・人材育成」「工事発注時における取引内容の精査」といった具体策が提言された。
一方で、連結財務諸表に与える影響額については「実態のないリース契約売上の取消し」が売上高にしてマイナス3百万円であることなど「全体として軽微」と指摘。会社側からも「過年度における金額的な重要性は極めて乏しいものと判断し、過年度の有価証券報告書、四半期報告書、内部統制報告書及び決算短信の訂正は行わない予定」であることが表明されている。