SH2609 企業法務フロンティア「ESGを巡る国際的潮流と日本企業に求められるグローバルな視点」 久保利英明(2019/06/17)

組織法務サステナビリティ

企業法務フロンティア
ESGを巡る国際的潮流と日本企業に求められるグローバルな視点

日比谷パーク法律事務所

代表弁護士 久保利 英 明

 

1 ESG投資を巡る世界の動き

⑴ ESG投資とは何か

 2006年に国連は投資家の取るべき行動原理として責任投資原則(Principle for Responsible Investment 「PRI」)を発表した。そこでは「E:Environment:環境・・・水資源、CO2対策、グリーン調達、熱帯雨林保護など」「S:Society:人権、反差別、従業員保護、製品の安全性」「G:Governance:経営者統制システム強化、経営層の過大報酬抑制」への配慮が強調され、これを契機としてこれらに対する企業の対応に、投資家や金融機関の関心が高まった。

 投資家達にとって、経営においてESGの観点が弱い企業は、大きなリスクを抱えた企業であり、長期的な成長ができない企業だという認識が一般化した。

 それ以前に一般的に使われていた「SRI(社会的責任投資)」ではなくESG投資という言葉が使われるようになったのは、2010年頃からESG投資に対する機関投資家の理解が大きく変わったためである。実は「SRI」は通常の投資とは違い「倫理的な投資手法」と受け止められていた。かつてメセナや社会貢献活動を評価したSRI投資はリターンが低く、有効な投資手法ではないとして否定的な見方も強かったのである。しかし、昨今、社会や環境を意識した投資は、同時に財務リターンも高く、また投資リスクが小さいという実証研究が発表されるようになった。これは企業経営において「サステイナビリティ」という概念が普及し、社会や環境を意識した経営戦略こそ、企業利益や企業価値向上に繋がり、その逆はリスクを拡大させるとの認識が主流を占めるようになったのである。企業の株価は株式の需給により上下するから、高株価を達成したければ、投資家が魅力的と感じる経営戦略が必要となる。投資家がESG投資にシフトすることにより、企業もESGを重視する経営に変化せざるを得なくなる。

⑵ ESG投資の手法

 世界のESG投資の統計を発表しているGSIA(Global Sustainable Investment Alliance)は、ESG投資の種類を以下の7つに分類している。

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