監査役協会、「監査上の主要な検討事項(KAM)に関するQ&A集・前編」を公表
――早期適用を行う場合に直近で対応が必要となる事項等――
日本監査役協会は6月11日、同協会の会計委員会が取りまとめた「監査上の主要な検討事項(KAM)に関するQ&A集・前編」を公表した。
「監査上の主要な検討事項」については、監査プロセスの透明性の向上等を目的に、企業会計審議会(会長=平松一夫・関西学院大学名誉教授)が2018年7月5日の総会において取りまとめた「監査基準の改訂に関する意見書」(金融庁が7月6日に公表)で導入が決定され、関連する内閣府令が同年11月30日に公布・施行されたところである(後掲の別稿参照)。そして、金商法に基づく有価証券報告書等提出会社について、2021年3月期決算に係る財務諸表の監査から適用されるが、それ以前の決算に係る財務諸表の監査から適用することは妨げられないこととされている。
これに対し監査役協会では、「監査役等は、KAMの取扱いにおいて重要な役割を果たすことが期待」される一方で、「今までにない新しい制度であることから、実務における影響が懸念される」ため、「KAMの円滑導入に向けた監査役等の実務支援ツールとして、本Q&Aを作成する」こととしたものである。
なお、本Q&Aについては、早期適用のケースを勘案して前後半の2分割構成としており、「前半パートに当たる本文では、KAMの概要に加え、早期適用を行う場合に直近で対応が必要となる事項(監査契約の締結、監査計画の策定段階)をまずは公表する」こととして、「期中の対応、定時株主総会に向けた対応等については別途の公表を予定」しているとのことである。
以下、本Q&Aの構成(Qの一覧)を紹介する。
なお、「監査上の主要な検討事項」の導入等に係る「監査基準の改訂に関する意見書」への対応については、日本公認会計士協会が2月27日付で、監査基準委員会報告書701「独立監査人の監査報告書における監査上の主要な検討事項の報告」の新設等を公表しているので、あわせて参照されたい。
「監査上の主要な検討事項(KAM)に関するQ&A集・前編」(日本監査役協会会計委員会・6月11日)の構成
1 KAMの概要
(1) 概要
Q1-1-1 KAMとは何でしょうか。
Q1-1-2 KAMは、いつからどのような会社を対象に適用となるのでしょうか。監査役等としてはいつから対応を開始しなければならないのでしょうか。
Q1-1-3 KAMが導入された場合、監査役等の監査報告書の記載文言を変更する必要があるのでしょうか。
(2) 導入の背景
Q1-2 どのような背景でKAMが導入されたのでしょうか。また、KAMは何を目的としているのでしょうか。
(3) KAMとして考えられる事項はどのようなものか
Q1-3-1 会社の事業上のリスクがKAMとして記載されるのでしょうか。
Q1-3-2 これまで監査人とのコミュニケーションの中で扱われてきた「特別な検討を必要とするリスク」がある事項とKAMとは同じでしょうか。
Q1-3-3 会社にとって未公表であった情報がKAMとして開示されてしまうことがあるのでしょうか。
Q1-3-4 KAMは毎年内容が異なることとなるのでしょうか。
Q1-3-5 KAMは、通常、どの程度詳しく記載されることが予定されているのでしょうか。
Q1-3-6 財務報告に係る内部統制に関する事項がKAMとして記載されることはあるのでしょうか。
Q1-3-7 KAMとして記載されるものがないということはあるのでしょうか。逆に、KAMとして多くの事項、例えば、10個以上の事項が記載されることはあるのでしょうか。
Q1-3-8 画一的な記載(いわゆる「ボイラープレート」)が横行し、制度の目的が満たされない懸念はありませんか。
2 導入に向けて
Q2-1 KAMの導入に向けては、どのようなスケジュールが想定されるでしょうか。また、どのような準備を進めるべきでしょうか。
Q2-2 早期適用を社内で決定するに当たっては、誰がどのように決定するのでしょうか。
3 実務上のポイント・前編(おおむね6月頃までに対応が必要となる事項)
(1) 監査契約
Q3-1 監査契約締結の段階で留意すべき事項は何でしょうか。
(2) 監査計画
Q3-2-1 監査計画の策定において、従来行っている監査人とのコミュニケーションに変化があるのでしょうか。
Q3-2-2 監査計画の策定時点で、KAM候補につき執行側とコミュニケーションを行う必要があるのでしょうか。
Q3-2-3 KAMの候補となる項目の検討において監査役等と監査人との間で見解の相違があった場合に、監査役等としてどのように対応すべきでしょうか。
Q3-2-4 KAMの候補となる項目の検討において、監査役等と監査人との間での見解は一致するも、執行側と監査人とで、見解の相違があった場合、監査役等としてどのように対応すべきでしょうか。
Q3-2-5 検討の結果、KAMに選定されなかった事項に対して、監査役としてどのように対応すべきでしょうか。
4 制度と実務対応の今後
Q4-1 今後、KAMは会社法上の監査報告書への拡張はなされるのでしょうか。
5 その他
Q5-1 監査基準の改訂により、監査人の監査報告書に、(会社法上、金商法上のいずれにおいても)監査役等の責任として「監査役等には、財務報告プロセスを監視する責任がある」旨が記載されることとなりました。これによって、監査役等に新たな責任が生じるのでしょうか。
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監査役協会、「監査上の主要な検討事項(KAM)に関するQ&A集・前編」を公表(6月11日)
http://www.kansa.or.jp/news/briefing/post-463.html -
公認会計士協会、「監査基準の改訂に関する意見書」に対応する監査基準委員会報告書701「独立監査人の監査報告書における監査上の主要な検討事項の報告」等の公表について(2月27日)
https://jicpa.or.jp/specialized_field/20190227aei.html -
参考
SH1972 金融庁、企業会計審議会の「監査基準の改訂に関する意見書」を公表--監査報告書における「監査上の主要な検討事項」の記載を求める--(2018/07/17)
https://www.shojihomu-portal.jp/article?articleId=6689876 -
SH2246 監査証明府令等の一部を改正する内閣府令が公布・施行--「監査上の主要な検討事項」を具体化、2021年3月決算から適用--(2018/12/12)
https://www.shojihomu-portal.jp/article?articleId=7772437