◇SH2715◇公取委、合材の価格カルテルで大手道路舗装8事業者に対して過去最高額の課徴金納付命令――長期・繰返しの違反行為、発覚防止対策など指摘で7事業者には排除措置も (2019/08/08)

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公取委、合材の価格カルテルで大手道路舗装8事業者に対して過去最高額の課徴金納付命令

――長期・繰返しの違反行為、発覚防止対策など指摘で7事業者には排除措置も――

 

 公正取引委員会は7月30日、独占禁止法3条(不当な取引制限の禁止)違反の行為を行っていたとし、前田道路、大成ロテック、鹿島道路、大林道路、世紀東急工業、ガイアートおよび東亜道路工業の7社に対して排除措置命令を行うとともに、これら7社と日本道路に総額398億9,804万円にのぼる課徴金納付を命じた。

 本事案は道路舗装に使用するアスファルト合材(以下「合材」という)の販売価格を共同して不正に引き上げるカルテルを結んだもので、課徴金の総額は1事件として過去最高となった。計9事業者が関与しているが、NIPPOについては公取委による調査開始前、課徴金減免制度における申請順位第1位の自主的申告を行ったことから全額免除。日本道路に50%、前田道路、世紀東急工業および東亜道路工業にそれぞれ30%の減額が認められている(ただし、今年6月19日に可決・成立した改正法〔令和元年法律第45号〕により課徴金制度・課徴金減免制度自体の見直しがなされた)。

 公取委によると、これらの9事業者はかねてから9社会を開催するなどして合材の販売価格について情報交換を行っていたところ、遅くとも2011年3月ころ以降、価格の引上げを共同して行っていく合意のもと(1)9社会、(2)全国各支店の製品部長クラスの会合、(3)全国の各工場にあっては近隣工場の工場長クラスの会合といった各レベルにおいて、たとえば(1)で確認し、かつ本店から各支店・各工場に指示した価格引上げ方針を(2)・(3)においても相互に確認し、情報交換を行いつつ、他社と調整しながら、(3)にあっては地域の状況に応じて調整しながら、全国の需要者(舗装工事業社等)と価格引上げ交渉を行うなどしていた。この過程では本店から自社の工場長等に対して直接指示することもあり、また9社会として、①合材の製造数量を発表し合うことにより安値販売で販売数量を拡大している者がいないかを相互に牽制し、②価格引上げが不調な地域等に複数の9社会出席者が出向くなどして指導するほか、③9社会で話し合った内容については記録しない、または9社会で話し合った内容を示す書面等には「用済み破棄」と注記するといった発覚防止対策を講じるなどし、もって公共の利益に反してわが国における合材の販売分野における競争を実質的に制限していた。

 7事業者には再発防止に向けて排除措置命令が発出されている。排除措置命令は(ア)上記・価格引上げの合意が消滅していることの確認、今後は一定の場合を除いて販売価格を自主的に決めること、販売価格に関する情報交換を行わないこと――の3点に関する取締役会決議を求めるとともに、(イ)自社従業員への周知徹底、(ウ)2011年3月1日以降2015年1月27日までの間に9社会に出席したことがある者を合材販売業務からすみやかに配置転換するなどし、今後5年間当該業務に従事させてはならず、また7社においてはこのことを取締役会決議しなければならないなど全7項を要請する厳しいものとなった。

 うち1項目の排除措置命令では、次の4点のうち必要な措置を公取委が各社の実情に照らして指定し、命令するものとなっている。①自社の商品の販売活動に関する独禁法の遵守についての行動指針の改定および自社の従業員に対する周知徹底、②合材の販売活動に関する独禁法の遵守についての合材販売業務に従事する役員・従業員に対する法務担当者および第三者による定期的な監査、③一定の場合を除いて合材の販売価格に関する同業者との情報交換を行っていないことを適切に監視するための体制の整備、④独禁法違反行為に係る調査への協力を行った者に対する適切な取扱いを定める規程の作成。

 排除措置命令書によると、公取委では「7社については、……9社会を通じた強固な関係に基づく違反行為が長期間にわたって行われていたこと、違反行為の取りやめが自発的なものではないこと、違反行為の発覚を防止するための対策を講じていたこと、過去、本件と同じく独占禁止法第3条の規定に違反する者として認定されたことがあること等の諸事情を総合的に勘案」し、特に排除措置を命ずる必要があると判断したものである。

 

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