◇SH2351◇法務省、新たな外国人材の受入れ制度の概要を公表 池田美奈子(2019/02/19)

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法務省、新たな外国人材の受入れ制度の概要を公表

岩田合同法律事務所

弁護士 池 田 美奈子

 

はじめに

 特定の産業分野における深刻な人手不足に対応するため、出入国管理及び難民認定法及び務省設置法の一部を改正する法律が昨年12月に成立した。施行日が本年4月1日に迫っていることを受け、本稿では、改正のポイントについて概説する。

 

在留資格「特定技能」

 今般の改正で創設される特定技能の在留資格は2段階あり、2号特定技能外国人には、特定産業分野に属する「熟練した技能」が求められるのに対し、1号特定技能外国人は、特定産業分野に属する「相当程度の知識又は経験を必要とする技能」を要する業務に従事することができる(改正後の出入国管理及び難民認定法(以下「改正入管法」という。)別表第1の2)。下図のとおり、特定技能1号の導入により、従来認められてこなかった単純労働者の受入れが可能となる。

 

法務省HP掲載資料より抜粋(http://www.moj.go.jp/content/001282796.pdf)。

 

 受入れが可能となる特定産業分野は、介護、建設、造船・舶用工業、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業及び外食業などの14分野が予定されている[1]

 

 

【特定技能1号及び2号のポイント】
  特定技能1号 特定技能2号
技能水準 試験等で確認* 試験等で確認
日本語能力水準 試験等で確認* ** 試験等での確認は不要
在留期間 1年(6か月又は4か月毎の更新) 通算で上限5年まで 3年(1年又は6か月毎の更新) 上限なし
家族の帯同 基本的に不可 要件を満たせば可能(配偶者及び子)
受入れ機関又は登録支援機関による支援 支援の対象 支援の対象外

*技能実習2号を修了した外国人は試験等免除。
**求められる水準は、ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力。

 

 閣議決定された「特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する基本方針について」(以下「基本方針」という。)並びに「特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針について」(以下「分野別運用方針」という。)及び各分野別運用方針に係る運用要領[2]によれば、特定技能1号の技能試験を本年4月から実施するのは、介護、宿泊及び外食業の3分野にとどまる見通しであることなどから[3]、当面は試験等が免除されている技能実習生から特定技能1号への移行が想定されている。

 

受入れ機関の義務等

 改正入管法は、特定技能外国人を受け入れる側にも新たな義務を課している。すなわち、外国人との間で締結する雇用契約が、報酬額が日本人と同等額以上であること、外国人であることを理由として、待遇について差別的な取扱いをしていないことなどの基準を満たしていることに加え(改正入管法2条の5第1項、2項)、受入れ機関自体が出入国又は労働法令違反がないことなどの基準を満たす必要がある(同条3項、4項)。また、雇用形態はフルタイムで、原則として直接雇用とされる[4](基本方針の5(3))。外国人の受入れ後においては、締結した雇用契約の確実な履行、及び外国人への支援の確実な実施などの義務も課されている(同条3項)。[5]

 これら義務に違反した場合には、外国人を受け入れられなくなるほか、出入国在留管理庁[6]から、指導、改善命令等を受けるおそれもある(改正入管法19条の19、19条の21)。

 

おわりに

 改正入管法の成立については、審議が拙速であり、制度の全体像が十分練られていないといった批判もあるところであるが、本年4月1日には上記新制度がスタートする。新制度の根幹ともいえる技能試験の具体的内容もまだ定まっておらず、引き続き動向を注視することが肝要である。

 なお、現行法下でも、使用者である企業側が在留資格で許される就労の範囲を理解せずに、外国人労働者に違法な仕事をさせているケースも見受けられる。企業においては、新制度の理解に加え、今般の改正を機会に現行制度も今一度おさらいされたい。



[1] その他にビルクリーニング、素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業及び自動車整備が予定されている。14分野のうち特定技能2号の受入れは、当面、建設及び造船・舶用工業の2分野に限定される。特定産業分野を定める法務省令が新たに設けられる予定であるが、2019年1月26日に省令案に対するパブリックコメントの意見募集が締め切られたばかりであり、本稿執筆時点では未制定。

[3] 残り11分野については2019年度内の開始が予定されている。また、特定技能2号の2分野の技能試験の開始も数年後に見送られている。

[4] 分野別運用方針によれば、農業及び漁業については作業の繁忙期と閑散期の差が大きいため、例外的に派遣形態の採用が認められる。

[5] 満たすべき具体的基準は、新たに定められる法務省令に委ねられているが、2019年1月26日に省令案に関するパブリックコメントの意見募集が締め切られたばかりであり、本稿執筆時点では未制定。

[6] 今般の改正に伴い、入国管理局は出入国在留管理庁として外局に格上げされる(改正後の法務省設置法26条1項)。

 

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