日産自動車、ゴーン元会長らの不正行為を巡り社内調査結果の概要を公表
――西川社長は代表執行役CEO職を辞任、SARは来年度から付与廃止へ――
日産自動車は9月9日、同日開催した取締役会において監査委員会からカルロス・ゴーン元会長らの不正行為に関する社内調査の報告を受けたとし、その概要を公表した。また同日の発表では、同社代表執行役社長兼最高経営責任者(CEO)である西川廣人氏の代表執行役CEO職からの辞任を明らかにするとともに、西川氏にも絡む不正受給問題としてその取扱いが焦点となった役員報酬「株価連動型インセンティブ受領権(SAR)」について来年度からの付与を廃止することを同日開催の報酬委員会で決定したと発表した。
ゴーン元会長およびグレッグ・ケリー元代表取締役に関しては、すでに4月8日に開かれた臨時株主総会において両氏の取締役職を解任しているところであるが(SH2489 日産自動車が臨時株主総会で前会長らの取締役職を解任、ルノー会長を取締役に選任 (2019/04/18)既報)、今般、その概要が発表された社内調査は昨年10月から外部法律事務所と連携して行ってきたとされる。諸事情から概要のみの公表となった調査結果によると、当該調査を通じて監査委員会が認定した不正行為として、次の5項目が掲げられた(以下、原文ママとする)。A) カルロス ゴーン元代表取締役会長の取締役報酬開示義務違反、B) 役員退職慰労金打切り支給としてゴーンに支給される可能性のある金額の不正操作、C) ケリーの取締役報酬開示義務違反、D) ゴーンの会社資産の私的流用等、E) 販売代理店に対する奨励金支払いに関する不適切な行為。
また「その他」として「社内調査を通じ、ゴーン、ケリーその他の役員への株価連動型インセンティブ受領権(SAR)の行使により支払われる報酬の不正な加算について確認された事実経過」を公表するなかで、ゴーン氏・ケリー氏と並び、西川氏を始めとする他の取締役・執行役員によるSAR行使についても言及し、複数の「不正な支払いがなされていたことが確認された」と表明。
西川氏については同氏が報酬増額を要請した際、同氏がすでに行使し金額が確定していたSAR行使による報酬につき、その権利行使日をケリー氏らが偽装して再計算することで「SAR行使による報酬を約4,700万円(税引後。税引前約9,650万円)不正に増額して西川に支払った」ものと認定した。一方で「ゴーン、ケリー以外の役員のSAR行使による支払いに不正な点があった点に関しては、これらの役員らは、いずれも、自己の報酬が不正な手法により増額されたことを認識しておらず、またケリーらに対してそのような指示ないし依頼をした事実もないから、不正行為に関与したとみる余地はない」としており、「不正な手法による増加額に関しては返納を求める」ものの、一連の不正行為に関する損害賠償請求などの責任追及はゴーン氏・ケリー氏らに限る構えとなっている。
日産自動車では5月17日付で「コーポレート・ガバナンス体制強化」に向けた施策を公表(SH2563 日産自動車、ガバナンス体制強化に向けた組織形態変更・取締役候補者を発表(2019/05/28)既報)。その後、6月25日に開催された定時株主総会ではいずれの会社側提案も承認可決された結果(出席株主数2,814名、所要時間3時間22分)、西川氏は取締役に選任され、事前に公表されていた方針どおり代表執行役社長兼CEOに就任していた。この定時総会を経て同社の取締役会は全11名中7名が社外取締役となっており、同社9月9日発表によれば、当該取締役会が西川氏の代表執行役CEO職からの9月16日付辞任を要請し、西川氏がこれを了承した。西川氏においても「辞任する意向を近時表明して」いたとされるが、事実上の解任とみられる(なお、取締役職には留まっている)。
同様に定時総会を経て代表執行役兼最高執行責任者(COO)に就任していた山内康裕氏がCEOを代行するかたちで、代表執行役社長兼CEO代行兼COOに就任。後任のCEOについては今後、指名委員会ですみやかに選定を進め、10月末までを目標に決定するとしている。