ビットコインを使用することにより利益が生じた場合の課税関係
岩田合同法律事務所
弁護士 松 原 崇 弘
1 はじめに
国税庁は、ビットコインを使用することで生じた利益は、所得税の課税対象となることを公表した。ビットコインを使用することにより生じる損益、すなわち、邦貨又は外貨との相対的な関係により認識される損益は、「事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、原則として、雑所得に区分」されるものとされた(所得税法27条、35条、36条)。近年、IT技術等の発展により、ビットコイン取引が増加し、今後も取引の拡大が予想される中、今回の公表内容は、実務上参考となるものと考えられる。
2 雑所得の特徴
雑所得とは、他の9種類の所得(下記図1参照)のいずれにも当たらない所得をいい、公的年金等、非営業用貸金の利子、著述家や作家以外の人が受ける原稿料や印税、講演料や放送謝金などが該当する。雑所得の金額の計算上損失が生じることはあり得るが、その損失の金額は他の各種所得の金額から控除(損益通算)することができない。
3 他の所得区分に該当する可能性について
今回の国税庁の公表内容においては、「事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き」雑所得に該当するとされており、事業所得等、他の所得に該当する可能性は排除されていない。
この点例えば、ビットコインの取引が、事業として行われたような場合、「事業所得」に区分されることなどが考えられるため、今後の取扱いに留意する必要がある。
所得の種類 |
所 得 の 内 容 |
利子所得 |
公社債・預貯金の利子、合同運用信託(貸付信託など)・公社債投資信託・公募公社債等運用投資信託の収益の分配による所得 |
配当所得 |
法人から受ける剰余金・利益の配当、剰余金の分配、基金利息などによる所得 |
不動産所得 |
土地・建物など不動産の貸付け、地上権など不動産上の権利の貸付け、船舶・航空機の貸付けによる所得 |
事業所得 |
製造業、卸小売業、農漁業、サービス業などのいわゆる事業から生ずる所得 |
給与所得 |
俸給、給料、賃金、歳費、賞与などの所得 |
退職所得 |
退職手当、一時恩給、その他退職により一時に受ける給与などによる所得 |
山林所得 |
山林を伐採して譲渡したり、立木のまま譲渡することによる所得(取得後5年以内に譲渡した所得は、事業所得又は雑所得) |
譲渡所得 |
土地、借地権、建物、機械、金地金などの資産の譲渡による所得(事業所得、山林所得及び雑所得に該当するものを除く。) |
一時所得 |
懸賞の賞金、競馬の払戻金、生命保険契約等に基づく一時金などの、上記の8種類の所得以外の所得のうち、営利を目的として継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で、労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものなどによる所得 |