◇SH2831◇経産省、「新時代の株主総会プロセスの在り方研究会」第2回を開催 角野 秀(2019/10/17)

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経産省、「新時代の株主総会プロセスの在り方研究会」第2回を開催

岩田合同法律事務所

弁護士 角 野   秀

 

1. はじめに

 本年9月30日、第2回「新時代の株主総会プロセスの在り方研究会」(以下「本研究会」という。)が開催された[1]

 本研究会は、「ハイブリッド型バーチャル株主総会(株主総会を物理的な場所において開催する一方で、その場に所在しない株主についても、インターネット等の手段を用いて遠隔地からこれに参加・出席することを許容する株主総会)」の実施を検討する企業に向けて、現行法における対応の在り方を明らかにすることを目的とした実施ガイド(以下「実施ガイド」という。)を作成・公表することを検討事項に掲げている点が注目に値する。この点は、日本の今後の株主総会実務に大きな影響を与えると考えられることから、本研究会(第2回)の検討事項について紹介することとしたい。

 

<経済産業省による本研究会設置の経緯>

2018年9月 株主総会当日の在り方について議論を深めるため、「さらなる対話型株主総会プロセスに向けた中長期課題に関する勉強会」が設置される
2019年5月 同勉強会における検討を踏まえて、対話型株主総会プロセスをより一層志向していく上での中長期的課題や株主総会当日のあるべき姿について「さらなる対話型株主総会プロセスに向けた中長期課題に関する勉強会とりまとめ(案)」(以下「本とりまとめ案」という。)が公表される[2]/[3]
2019年5月22日~7月10日 本とりまとめ案に対する意見募集が行われる
2019年6月 閣議決定された「成長戦略フォローアップ」において、新たに講ずべき具体的施策として、グローバルな観点から最も望ましい対話環境の整備を図るべく、株主総会当日の新たな電子的手段の活用の在り方の検討が盛り込まれる
2019年9月 上記を受けて、株主総会当日の新たな電子的手段の活用の在り方及び近年の内外の制度整備や実務の積み重ねを踏まえた株主総会プロセスにおける更なる対話のための環境整備等について検討することを目的として、本研究会が設置される

 

2. 本研究会(第2回)における検討事項の概要

(1) 通信障害への対応の在り方について

 本とりまとめ案では、通信障害について、会社が必要な対応を怠った場合には株主総会の決議取消事由に当たる可能性もあるとしつつ、個別事情に応じて、裁量棄却・決議取消事由不存在と解される可能性に言及していたことに対し、具体的対応の在り方や決議取消事由への該否を明確にすべきとの意見が寄せられていた。これに関しては、決議取消リスクを減じる具体的方法(ex. 導入可能なサイバーセキュリティ等の対策、バーチャル出席を選択した場合における招集通知・ログイン画面上での通信障害リスクの告知、アクセスのためのヘルプデスクの設置等)を実施ガイドにて明示することが提案されている。

(2) 代理出席の取扱いについて

 議決権行使の代理人資格を株主に限定する定款の定めがある場合、非株主であるバーチャル出席者については、代理人と認めるべき特段の事情の有無の判断が困難であることから、「バーチャル出席者は他の株主の代理人となれない」とする定款の定めを有効とすることの是非も論ずるべきとの意見が寄せられた。この点、リアル株主総会で一般的に実施されている代理出席の実務上の取扱いを確認しつつ、バーチャル株主総会での対応の在り方について具体的懸念を踏まえた対応策を検討する必要性が指摘されている。

(3) 出席と事前の議決権行使の効力の取扱いについて

 バーチャル出席株主の出席と事前の議決権行使の効力の関係について、本とりまとめ案では、採決時において賛否の意思表示なき場合、事前の議決権行使の効力を維持するとしてよいとの考え方が示されていたことに対し、当日の審議の結果、議決権は不行使とする意思がある場合や、個別採決の場合に一部だけ賛否の判断があった場合の取扱いに関して意見が寄せられた。これに関しては、会社の取り得る取扱いのパターンを具体的に示すことが提案されている。具体例として、①議決権行使時に出席の確認をする方法(ex.ログインしたものの採決に参加しなかった場合、事前の議決権行使の効力維持とする)、②参加型との併用(ex.事前の議決権行為を維持したい株主のために傍聴専用ライブ配信等を用意する)、③みなし規定の活用(ex.事前に招集通知・ログイン画面にて、賛否の表明がなかった場合は会社提案に賛成とみなす旨表記する)が挙げられている。

(4) 質問や動議の具体的取扱いについて

 バーチャル出席者の質問や動議の取扱いについて、本とりまとめ案では、リアル/バーチャルの出席態様の違いから取扱いの差異が許容される程度を示しつつ、質問権・動議権それ自体の制限については引き続き検討を要するとしていたことに対し、バーチャル出席株主の質問や動議について、一切受け付けないことを許容すべき、その他の許容され得る取扱いを検討すべきといった意見が寄せられた。この点、①バーチャル出席は出席態様として会社法上保証された権利ではなく、会社がリアル出席に加え議決権行使のために追加的便宜を図っているものと考えられ、②会社がハイブリッド型バーチャル株主総会の開催を決定した場合、少なくとも当日の決議参加環境をバーチャル出席株主間において平等に準備することは必須であるが、③その上で、リアルとバーチャルとの出席態様の違い等により、一体としての株主総会の運営に困難が生じると判断される場合には、株主への事前通知を前提として、質問や動議をリアル出席に限る又は一定の制限を設けることは、バーチャル出席株主の権利の棄損には当たらず、許容されるのではないかとの考え方が提示された。かかる法的整理を踏まえつつ、実施ガイドにおいて取扱い方法の具体例を例示することが提案されている。

 

3. 実務への影響

 本研究会は月1回程度のペースで開催されることが予定されており、今年度末を目途にハイブリッド型バーチャル株主総会に係る現行法における対応の在り方をまとめ、実施のガイドを公表することが検討されている。本研究会は原則として非公開で行われるため、現時点において、本研究会においてどのような議論が行われたかについて詳細を把握することはできないが、本研究会で議論されるテーマは、日本の将来の株主総会の在り方に大きな変革を与え得るものであることは疑いがなく、本研究会における今後の議論に引き続き注視する必要があろう。

以上

 

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