ベトナム新競争法の改正点の概要(上)
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 カオ・ミン・ティ
2018年6月12日、現行競争法(27/2004/QH11号)(「現行法」)を全面的に改正する新競争法(23/2018/QH14号)(「新法」)が国会で可決され、2019年7月1日より施行される。以下、新法における重要な改正点について2回に分けて概説する。
規制される行為の枠組
新法にて規制される行為は、現行法と同様、①競争制限的協定、②市場支配的又は独占的地位の濫用、③経済集中、④不公正な競争行為に大分される。
競争制限的協定
現行法8条は、競争制限的協定として8類型を列挙しているところ、価格、販売市場、数量、技術開発等を拘束あるいは制限する協定などに該当する5類型については、協定参加者の合計のマーケットシェアが30%以上になる場合に限り規制対象とされている。これに対し、新法11条は、これを下記の11類型に再構成した。下記(9)から(11)は新たに競争制限的協定として追加されたものである。マーケットシェアにかかわらず、下記(1)から(3)は同じ関連市場の参加者によってなされる場合は禁止、(4)から(6)は無条件に禁止、(7)から(11)は同じ関連市場の参加者によってなされる場合において、「著しく競争を制限する影響」(これは新法で新たに設けられた概念であり、その有無は、協定参加者のマーケットシェア、市場の参入の障害の程度などを基準に国家競争委員会(現行法上の競争当局である競争管理局及び競争評議会が、新法では国家競争委員会(Ủy ban Cạnh tranh Quốc gia)に改組されている)が判断するものとされている(新法13条)。)を及ぼしうるときは禁止となる(新法12条1項-3項)。さらに、下記(1)から(3)及び(7)から(11)については、サプライチェーンの異なる段階における参加者による協定(いわゆる垂直的な協定)についても、「著しく競争を制限する影響」を及ぼしうる場合は禁止される(新法12条4項)。
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以上より、現行法では価格カルテルなどハードコアカルテルであっても、カルテル参加者のマーケットシェアが30%に満たない場合は規制の対象外となっているが、新法ではマーケットシェアにかかわらず規制対象となる。また、現行法では規制対象であるか不明確であった垂直的な競争制限的協定についても、規制対象となることが新法で明確になった。加えて、⑼から⑾が追加されたことで(とりわけ⑾はキャッチオールの規定となっている)、競争制限的な協定が広く捕捉されうることとなっている。
(続く)