◇SH2905◇経産省、国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会報告書を公表――令和時代に必要な法務機能・法務人材とは(2019/11/27)

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経産省、国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会報告書を公表

――令和時代に必要な法務機能・法務人材とは――

 

 

 経済産業省は11月19日、「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会報告書-令和時代に必要な法務機能・法務人材とは-」(以下「今回報告書」)を公表した。

 日本企業が大きな競争環境の変化にさらされている中、日本企業の国際競争力強化に資する経営と法務機能の在り方を議論するため、経産省は「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会」(座長=名取勝也・弁護士)を設置し、2018年4月に報告書(以下「前回報告書」)を公表して、企業の法務機能の意義とその活用の必要性・有効性を明らかにした上で、これを企業に実装していくための課題と提言をまとめたところである(後掲の別稿参照)。

 前回報告書の公表後、多くの企業の経営陣・法務関係者から、実際に企業の法務機能を強化していく上で、より具体的な方法論や実践のための多様な選択肢を明らかにしてほしいといった声が寄せられたことから、経産省では本年1月、同研究会の下に、「法務機能強化 実装ワーキンググループ」(委員長=軽部大・一橋大学イノベーション研究センター教授)、「法務人材 育成ワーキンググループ」(委員長=三村まり子・弁護士)を設置した。そして、「事業の創造」、「価値の創造」に重点を置く観点からの法務機能の可能性を明らかにするとともに、当該観点に資する組織運営の改革・改善や人材の育成・獲得の在り方に関し、より具体的な方策・選択肢、フレームワークを提案するために検討した成果を、今回報告書として取りまとめたものである。

 今回報告書の付属資料である「経営法務人材スキルマップ」は、企業経営に関わる法務人材(経営法務人材)を念頭に職位別に一般的・基本的な枠組みとして作成されており、「各企業の状況に応じて個別に必要とされる知識やスキルの追加、職位をより詳細化するなど、カスタマイズして作成すること」が望まれるとされる。また、「経営法務人材キャリアコンパス」は、経営法務人材のキャリアパスの事例集であり、人材活用の見方に変化を与えるとともに、現在法務機能を担っている担当者だけでなく、これから法務機能を担うことを考えている企業や学生の方の将来ビジョンを広げるため、経営法務人材の多様なキャリアパスを示すものとなっている。

 さらに、経産省では、今回報告書を踏まえ、特に経営者層に向けた周知用資料として「経営者が法務機能を使いこなすための7つの行動指針」を併せて作成している。

 以下、今回報告書の第4章「法務機能を支える人材(経営法務人材)の育成・獲得方法」および「経営者が法務機能を使いこなすための7つの行動指針」の概要を紹介する。

 

「第4章 法務機能を支える人材(経営法務人材)の育成・獲得方法」の概要

 第四次産業革命の進展などによりイノベーションが求められるなど大きく競争環境が変化する状況においては、クリエーション機能やナビゲーション機能といったより積極的に事業(価値)を創造する機能の重要性が増すなど、人材に求められる専門性がより高度化している。かかる競争環境の変化において、従前のように「人基準」により人材要件を明確にしないまま(悪い意味で)ジェネラリスト的に人材育成が行われていけば、今後求められるスキルやマインドセットが十分に整わず、必要な機能を十分発揮できなくなる可能性がある。

 報告書では、具体的な育成・獲得の例として、項目毎に以下のような取組実例を考え方なども交えて紹介している。

  1. ⑴ 適材を示す

    1. ① 多様なキャリアパスの受け入れ・提示
    2. ② 求める人材像の提示
      ・ 企業法務として望ましい行動特性(リーガルコンピテンシー)を示す
      ・ 職種・職位ごとに必要なスキルやマインドセットを示す(スキルマップ)
      ・ ポストごとに必要な人材要件を示す(ジョブディスクリプション)
       
  2. ⑵ 適材を育てる

    1. ① 専門性の向上
    2. ② 事業の理解、現場経験の蓄積
      ・ 事業部門の会議や交渉等への参加、一時的な座席の移動
      ・ 経営会議への参加
      ・ 兼務(併任)の活用
      ・ 他部門、子会社への出向
      ・ 副業・兼業
    3. ③ 普遍的なスキル(ジェネリックスキル)の向上
    4. ④ 要件に合致した評価と指導
       
  3. ⑶ 適材を獲得する

    1. ① 新卒の採用
    2. ② 中途の採用
    3. ③ 市場に供給される優秀な人材を増やす
      ・ 大学・大学院教育
      ・ 多様なキャリアパスの実現

 

「経営者が法務機能を使いこなすための7つの行動指針」の概要

  1. 1  経営者は、法務部門を「事業の創造」に貢献する組織にし、その貢献が発揮される環境を整備できているか?
  2. 2  経営者は、経営戦略における法務機能の活用に対するスタンスを明確にしているか?
  3. 3  経営者は、“経営法務”を遂行できる高度な人材を経営陣の一員、かつ、法務部門の責任者として登用しているか?
  4. 4  経営者は、法務部門の責任者との意思疎通を密にしているか?
  5. 5  経営者は、“経営法務”により得ることができた新事業の創出や企業価値増大の効果を評価しているか?
  6. 6  経営者は、法的リスクを乗り越えてビジネスチャンスにつなげるため、自らの責任で合理的な経営判断ができているか?
  7. 7  経営者は、“経営法務”人材の獲得・育成活用について戦略的な方針を示しているか?

 

 

  1. 経産省、国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会報告書を取りまとめました-令和時代に必要な法務機能・法務人材とは-(19日)
    https://www.meti.go.jp/press/2019/11/20191119002/20191119002.html
  2. ○ 国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会 報告書
    https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2019/11/20191119_report.pdf
  3. ○ 報告書概要
    https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2019/11/20191119_report_gaiyo.pdf
  4. ○ 経営者が法務機能を使いこなすための7つの行動指針
    https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2019/11/20191119_report_kanren.pdf
  5. ○ 参考資料1 経営法務人材スキルマップ
    https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2019/11/20191119_report_s01.pdf
  6. ○ 参考資料2 経営法務人材キャリアコンパス
    https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2019/11/20191119_report_s02.pdf
  7.  
  8. 参考
    SH1829 経産省、「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会」の報告書を公表(2018/05/11)
    https://www.shojihomu-portal.jp/article?articleId=6115641
  9.   SH2483 経産省、第2回 国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会 法務機能強化 実装ワーキンググループ 浜崎祐紀(2019/04/16)
    https://www.shojihomu-portal.jp/article?articleId=8701901
  10.   SH2650 経産省、第6回 国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会 法務機能強化 実装ワーキンググループ 小西貴雄(2019/07/05)
    https://www.shojihomu-portal.jp/article?articleId=9333498
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