証券取引等監視委、日産自動車への24億円課徴金納付命令を金融庁に勧告
――有報4期分および発行登録追補書類の虚偽記載、過去2番目の多額に――
証券取引等監視委員会は12月10日、カルロス・ゴーン元会長らの有価証券報告書虚偽記載を巡って検査の結果、法令違反の事実が認められたとし、法人としての日産自動車に対して24億2,489万5,000円の課徴金納付命令を発出するよう金融庁に勧告したと発表した。
監視委では平成30年12月10日、金融商品取引法違反(虚偽有価証券報告書提出)の嫌疑で日産自動車および元会長ら2名を東京地方検察庁に告発。この際にまず対象となった有価証券報告書は、①平成23年3月(第112)期、②24年3月(第113)期、③25年3月(第114)期、④26年3月(第115)期、⑤27年3月(第116)期のものであった。続いて今年1月30日には、⑥28年3月(第117)期、⑦29年3月(第118)期、⑧30年3月(第119)期の有価証券報告書をも対象として同様に告発している(当初報道として、SH2212 日産自動車、ゴーン会長ら2代表取締役を内部通報・内部調査を経て解職(2018/11/27)、SH2254 東京地検特捜部、日産自動車前会長らを虚偽有価証券報告書提出の容疑で起訴・再逮捕(2018/12/18)参照)。
今般の勧告の対象となったのは、時効の関係により上記⑤〜⑧の4期分の有価証券報告書と平成28年4月8日に提出した発行登録追補書類。有価証券報告書については「第一部 企業情報」「第4 提出会社の状況」中の「コーポレート・ガバナンスの状況等」「役員の報酬等」において実態と異なる記載を行った。発行登録追補書類については、重要な事項につき虚偽の記載がある⑤の有価証券報告書を参照情報とし、当該発行登録追補書類に基づく募集によって同年4月15日、社債券を1,250億円で取得させたとされる。
課徴金の額の計算において、⑧の有価証券報告書に関しては「金融商品取引法第26条第1項の規定による検査等が行われる前に、課徴金の減額に係る報告がされていることから、金融商品取引法第185条の7第14項の規定により、279,910,000円に100分の50を乗じて得た額に相当する額」として減額されているが、有価証券報告書等の虚偽記載を巡って総額24億円余となる課徴金額は、監視委が平成27年12月7日付で勧告した東芝の事案(73億7,350万円)に次ぐ多額となった。
日産自動車では勧告を受け「当社は課徴金納付命令の勧告を真摯に受け止め、金融庁から正式な通知を受領次第、対応について検討いたしますが、特段の事情がない限り、事実及び納付すべき課徴金の額を認める方針であり、正式に決定次第改めて開示する予定です」と発表。なお同社では、すでに本年5月14日付で平成18年3月(第107)期〜30年3月(第119)期の有価証券報告書で開示した役員報酬等の内容を訂正する訂正報告書を関東財務局に提出している。また、外部法律事務所と連携して行い、元会長ら2名以外の役員に対する報酬に関しても明らかにした社内調査結果を9月9日付で公表しているところである(SH2780 日産自動車、ゴーン元会長らの不正行為を巡り社内調査結果の概要を公表――西川社長は代表執行役CEO職を辞任、SARは来年度から付与廃止へ (2019/09/18)既報)。