◇SH3023◇ビジネスと人権に関する行動計画の「原案」が公表、パブリックコメントを開始――3月17日まで任意の意見募集、2020年半ばの成案公表を目指す (2020/02/25)

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ビジネスと人権に関する行動計画の「原案」が公表、パブリックコメントを開始

――3月17日まで任意の意見募集、2020年半ばの成案公表を目指す――

 

 外務省総合外交政策局人権人道課は2月17日、「ビジネスと人権に関する行動計画に係る関係府省庁連絡会議」名により「『ビジネスと人権』に関する行動計画 原案(2020-2025)」を公表した。3月17日まで任意の意見募集を行う。

 企業活動における人権尊重への取組みが国際的に進展するなか、わが国においても2016年末にビジネスと人権に関する行動計画の策定を決定。2018年6月15日閣議決定の「未来投資戦略2018―「Society 5.0」「データ駆動型社会」への変革―」には「『国連ビジネスと人権に関する指導原則』等に基づき、企業行動の原則としての人権の尊重に係る国別行動計画を策定し、我が国企業に先進的な取組を促す」ことを盛り込んだ(「未来投資戦略2018」138ページ参照)。

 行動計画の策定は「持続可能な開発目標(SDGs)」の実現に向けた取組みの1つと位置付けられており、政府は2019年4月、その策定に向け、関係府省庁の諮問に応じて様々な分野の有識者からの見解を示す「諮問委員会」と、行政・経済界・労働界・市民社会・各種団体など様々な関係者が集まって意見交換を実施する「作業部会」を設置。

 諮問委員会は日本労働組合総連合会事務局長、NPO法人日本サステナブル投資フォーラム(JSIF)会長、一般社団法人グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン代表理事、日本弁護士連合会・前国際人権問題委員会委員長、一般財団法人日本消費者協会理事、国際労働機関(ILO)駐日代表、一般社団法人日本経済団体連合会企業行動・SDGs委員長、京都大学大学院法学研究科教授、ビジネスと人権NAP市民社会プラットフォーム代表幹事ら計9名で構成され、2019年6月18日に初会合を、2020年2月4日に第2回会合を開催した。また、作業部会では2019年4月24日の初会合以降、同年12月24日までに計5回の会合を開いたところである。なお、この間に諮問委員会および作業部会での提出意見などを踏まえ、ビジネスと人権に関する行動計画に係る関係府省庁連絡会議「ビジネスと人権に関する我が国の行動計画(NAP)の策定に向けて」(令和元年7月)が取りまとめられており、適宜参考とされたい。

 今般明らかになった「原案」は、「第1章 行動計画ができるまで(背景及び作業プロセス)」「第2章 行動計画」「第3章 政府から企業への期待表明」「第4章 行動計画の実施・見直しに関する枠組み」の全4章構成・21ページ建て。第1章中「2.行動計画の位置付け〜『指導原則』等の国際文書及びSDGsとの関係〜」によると、上記「指導原則」との関係におけるその位置付けは「行動計画の策定に当たっては、行動計画が『指導原則』の着実な履行の確保を目指すものとした。また、行動計画は、『指導原則』だけでなく、『OECD多国籍企業行動指針』や『ILO多国籍企業宣言』等の関連する国際文書も踏まえて策定した」とされる。

 上記・第2章の行動計画によれば、その「1.行動計画の基本的な考え方」において「企業活動のグローバル化、多様化に伴い、国際社会は、企業に対し、企業内部での『ビジネスと人権』に関する取組の実施だけでなく、国内外のサプライチェーンにおける人権尊重の取組を求めており、企業はこの点に留意する必要がある」との指摘があり、注意しておきたい。続いて第2章を構成するのが「2.分野別行動計画」であり、本「原案」全体の13ページ超を占める最大項目となっている。

 分野別行動計画は「(1)横断的事項」「(2)人権を保護する国家の義務に関する取組」「(3)人権を尊重する企業の責任を促すための政府による取組」「(4)救済へのアクセスに関する取組」「(5)その他の取組」の5つに大別される。個別企業に直接的に関わってくることが見込まれるのは上記(1)で、ア.労働(ディーセント・ワークの促進等)、イ.子どもの権利の保護・促進、ウ.新しい技術の発展に伴う人権、エ.消費者の権利・役割、オ.法の下の平等(障害者、女性、性的指向・性自認等)、カ.外国人材の受入れ・共生の全6項目。各項目には<具体的な措置>が掲げられている(「原案」7ページ以下)。

 たとえば上記アの「労働」をみると、まず(ア)「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の促進」として①雇用の促進、②社会的保護の方策の展開および強化、③社会対話の促進、④労働における基本的原則および権利の尊重・促進および実現等が挙げられている。続いて(イ)ハラスメント対策の強化、(ウ)労働者の権利の保護・尊重(含む外国人労働者・外国人技能実習生等)が俎上にのぼっており、上記ア〜カについては各項目の<具体的な措置>を確認しておきたい。

 本「原案」の公表に際し、政府は「2020年半ばに行動計画を公表することを目指して策定作業に取り組んでいきます」とコメントしている。

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