GPIF、2019年度の「優れた統合報告書」等を発表
――4機関以上選定は2社減、「改善度の高い統合報告書」に2年度連続でミネベアミツミ――
年金積立金管理運用独立行政法人(Government Pension Investment Fund. 以下「GPIF」という)は2月7日、「GPIFの国内株式運用機関が選ぶ『優れた統合報告書』と『改善度の高い統合報告書』」を発表した。
GPIFが国内株式の運用委託機関に選定を依頼するかたちで取りまとめ、発表しているもので、運用委託機関に対しては各々最大10社の選定を依頼した結果、2019年度の今回の発表では「優れた統合報告書」について延べ71社、「改善度の高い統合報告書」について延べ91社が選ばれた。前年・2018年度の発表では「優れた統合報告書」が延べ67社、「改善度の高い統合報告書」が延べ87社であったところ(SH2395 GPIF、国内株式運用機関が選ぶ「優れたコーポレート・ガバナンス報告書」、「優れた統合報告書」等を公表(2019/03/12)既報)、GPIFによると、選定の対象となる「統合報告書の発行企業数は年々増加しており、2018年に400社を超え、2019年には500社に達したと言われてい」るという。なお、今回の発表では、2018年度の発表では明らかにされていた運用委託機関の数・内訳に関する記載はみられなくなった。
2019年度の選定結果によれば、「優れた統合報告書」として4機関以上の運用機関から高い評価を得たのは次の9社となった。
高い評価 | 企業名(証券コード順) |
7機関 |
日立製作所 |
6機関 |
キリンホールディングス 伊藤忠商事 |
5機関 |
三井化学 丸井グループ |
4機関 |
住友化学 花王 三井物産 MS&ADインシュアランスグループホールディングス |
2018年度においては11社が選定されており、2か年度連続で選定されているのは、伊藤忠商事(2018年度は8機関、以下同様)、丸井グループ(7機関)の2社である。
2019年度トップの日立製作所に関して寄せられた運用機関からの主なコメントをみると、「事業が広範囲にも関わらず、ビジネスモデルを分かりやすくまとめられている」「ESGの各項目の量がバランスよく、内容は高度にかつ分かりやすくまとまっている」「財務・非財務の目標と取組み、持続的成長を支える仕組み、キャピタルアロケーション戦略、イノベーションなどの説明が丁寧で分かりやすく、全体の完成度が高い」と全体的なまとまりのよさを指摘する声とともに、「持続的な企業価値拡大に向けた強固な意思と戦略を理解することができる」「CEOメッセージも投資家の納得感を深めるストーリー性のある構成」「同社の社外取締役対談も内容が具体的で最も読み応えがあった」と、読みものとしても好評価を得ているといえる。
一方の「改善度の高い統合報告書」については、2018年度に4社が選定されていたところ、2019年度においては2社となった。2社中1社は連続して選ばれたミネベアミツミ。2018年度選定時に「今年度からアニュアルレポートから統合報告に移行し、説明内容が改善」などと評されていた同社の統合報告書は、2019年度において「価値創造にマテリアリティが追加され、持続成長に向けた記載が充実した」「SDGsと長期業績成長の関連がより具体化している」「前回は事業戦略中心でアニュアルレポートの域を出ていなかったが、今回はマテリアリティを特定しCEOメッセージの中で発信」と、その改善度の観点から高い評価を得ている。