連絡会議取りまとめ「民事司法制度改革の推進について(案)」が明らかに
――各課題の具体化に加えて関連対応の追加も、取組みの大方針は維持――
民事司法制度改革推進に関する関係府省庁連絡会議(議長・内閣総理大臣補佐官)の幹事会(議長・内閣官房内閣審議官(内閣官房副長官補付)兼法務省大臣官房付)は2月20日、第12回会合を開き、前回・第11回会合に引き続き連絡会議としての取りまとめ(案)の検討を行った(連絡会議および同幹事会の位置付けと「取りまとめ骨子」について、SH3031 民事司法制度改革推進の課題整理・対応検討で「取りまとめ」へ――裁判IT化・知財司法・国際仲裁など喫緊の課題を総合的に整理 (2020/02/27)既報)。
第12回会合では、今年度中に予定される連絡会議の取りまとめについて、その取りまとめの原案ととらえられる資料「民事司法制度改革の推進について(案)」が配付され、2月28日、公表された(以下、本稿において本資料を「取りまとめ(案)」という)。全8頁建てで編まれた「取りまとめ骨子」に掲げている各課題の背景・問題意識などを詳細に書き込んだかたちとなる「取りまとめ(案)」は、全24頁建て。取りまとめ骨子における「第1 総論(国際化社会の一層の進展を見据えた民事司法の在り方)」は、取りまとめ(案)において「第1 国際化社会の一層の進展を見据えた民事司法制度の在り方」と端的に掲げることとしたうえで、本章の構成については「1 進展する国際化社会の中で民事司法制度に求められるもの」「2 国際競争力強化という観点から必要な改革」「3 国際化社会において必要なその他の改革」とする3項目に表現ぶりが改められた。
取りまとめ(案)によると、上記1では(1)国境を越える取引から生じる越境紛争において他国ではなくわが国の民事司法制度が利用されるよう、わが国の民事司法制度全般の国際競争力の強化を図る必要性とともに、(2)国際化社会の進展を踏まえ、国民や国内企業のみならず外国人からも利用しやすい民事司法制度を構築する必要性を指摘。
必要となる改革についてより具体的に言及する上記「2 国際競争力強化という観点から必要な改革」では、取りまとめ骨子においては4点を挙げたところ(A)民事裁判手続等のIT化、(B)知財司法、(C)国際仲裁の活性化の3点に集約・整理したうえで、上記「3 国際化社会において必要なその他の改革」においては、取りまとめ骨子と同様に(D)越境消費者紛争への対応力強化、(E)外国人が当事者となる国内民事紛争への対応力強化の2点を前面に出す構成となっている。また上記3に絡んでは、取りまとめ骨子でも「その他の民事司法の国際化に関する方策」として(F)インターネットを通じた外国語による日本法令に関する情報の発信、(G)日本貿易振興機構と弁護士会との連携強化を取り上げていたところ、取りまとめ(案)ではこれらに加え、(H)国際裁判等の国際法務で活躍できる人材の育成に向けた取組みといった1項目を新たに起こすかたちが採られた。上記(A)〜(G)までの各項目について、より一層の具体化が図られた項目や関連する対応として追加された事項はみられるものの、取組みの姿勢を示す「速やかな検討・準備」「引き続き検討」といった大方針の変更は基本的にみられない。
なお、取りまとめ(案)では終章として「第6 民事司法制度改革のこれから」が新設された。より良い紛争解決、より良い民事司法制度に向けて民事司法に携わる関係者の不断の努力・取組みの必要性を指摘するものとなっているが、特に民事訴訟における情報・証拠収集制度の充実については「民事司法の在り方に関する法曹三者連絡協議会において、事案解明機能を向上させて国際競争力を強化する観点も踏まえて引き続き検討する必要がある」とも指摘した。