米SEC、年次株主総会の日程変更やバーチャル開催を巡り規制柔軟化のスタッフ・ガイダンス
――新型コロナウイルス感染症対策、株主提案も電話など代替手段による提示を促す――
米証券取引委員会(SEC)は3月13日、今後の年次株主総会の開催にあたって新型コロナウイルス感染症の影響を受ける上場企業、投資会社、株主および他の市場関係者を支援する指針をSEC職員が発表したと明らかにした(以下、当該指針を「スタッフ・ガイダンス」という)。
スタッフ・ガイダンスの発表に際しては、厳密にはSEC内の関連2部門の職員の見解であって法的効力はなく、SECの規則・規制・声明ではないこと、SECとしてはその内容を承認も不承認もしていないことが注記されている。しかしながら、今般の新型コロナウイルス感染症の拡大による諸影響に照らして寄せられる発行会社および株主からの問合せを受け、発行会社等が委任状勧誘規制に基づく義務を履行できるようにするために提供された位置付けとなっている。SEC委員長も、多数の企業がテレワークやテレビ会議に移行していることをSEC職員が認識しているとしたうえで、職員らにおいてはこのような移行を容易にする準備ができているとして、SECへの連絡を呼びかけるコメントを併せて発表した。
スタッフ・ガイダンスが取り上げたのは(1)年次総会の日程と会場を変更しようとし、あるいは(2)バーチャル株主総会などの新技術を活用しようとする企業を規制を柔軟化するかたちで支援する内容で、株主や他の市場関係者には当該変更等が通知されるようにするとしている。(3)株主提案についても、企業には年次総会の場で提案株主が電話などの代替手段により提示できるようにすることを勧めている。
スタッフ・ガイダンスによると、上記(1)に係る開催の日付・時間・会場の変更について、発行会社が委任状関係資料を郵送し、提出した場合であっても、①当該変更に関するプレスリリースを行い、②SECが運営する開示システム・EDGARに最終的な追加勧誘資料として提出し、③当該変更について議決権行使助言会社や証券取引所など他の関係者に通知するために必要となるすべての合理的措置を講じる場合には、追加資料を郵送する、または郵送・提出済みの資料を修正することなく通知がなされるものとした。
上記(2)を巡り、いわゆる「バーチャル総会」や「ハイブリッド総会」を開催する場合については、議決権行使を促進するしっかりとした情報開示が通常の株主総会と同様に重要であることを指摘しつつ、発行会社が株主や他の関係者にこのようなかたちでの開催に関してタイムリーに通知すること、株主が遠隔地からアクセスし、参加し、議決権行使する方法など運営システムの詳細について明確な方向性を開示することを求めた。委任状関係資料について未提出・未発送の発行会社にあっては、このような開示が最終的な委任状参考資料や他の勧誘資料に記載されなければならないが、すでに提出し、郵送している発行会社においてバーチャル総会やハイブリッド総会に移行する目的のためだけに追加資料を郵送する必要はないとしている(上述(1)における①・②・③の手続は必要)。
株主提案に関する上記(3)については、1934年証券取引所法規則14a-8(h)が提案株主またはその代表者に対して年次総会の場での株主提案の提示を義務付けているところ、発行会社には州法のもと実現可能な範囲で、提案株主等が電話などの代替手段により株主提案を提示する方法を提供するよう促している。