◇SH0004◇全銀協、不正払戻し件数・口座不正利用に関するアンケート結果 政本裕哉(2014/06/20)

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全銀協、不正払戻し件数・口座不正利用に関するアンケート結果

岩田合同法律事務所

弁護士 政 本 裕 哉

 

 インターネットバンキングによる不正送金の件数及び被害金額は年々増加しており、警察庁のまとめによると、今年1月から5月9日までに約14億1700万円[IG1] に上っている。これは、既に過去最悪だった昨年1年間の約14億600万円を上回る数字である。そんな中、全銀協は、5月23日、会員行からのアンケート結果として、ネット不正送金に係る法人の被害状況を初めて公表した[IG2] 。近年、法人の被害が急増し、メディアでも報道されていることを受けてのことと思われる。

 ところで、ネット不正送金の被害に遭った個人顧客については、全銀協が平成20年2月19日に公表した申し合わせ(末尾参照)において、その補償につき、「被害に遭ったお客さまの態様やその状況等を加味して判断する。」とされており、各行はかかる申合せに従い、原則的に補償の対応を行っているところである。上記アンケート結果においても、個人顧客に対する補償率は90%を超えていることが分かる。一方、法人顧客については、このような補償に関する自主ルールは現時点では存在していない。しかし、法人被害の急増を受け、金融界は、その補償対応に揺れている。

 そもそも、インターネットバンキングを不正に利用される事例においては、顧客側のセキュリティが不十分であるため、顧客が使用する端末がウイルスやマルウェアに感染し、インターネットバンキングにログインする、不要な暗証番号を入力するなどして、ログインID、ログインパスワード等を抜き取られるという事例が多い。インターネットバンキングの不正送金に係る裁判例(東京高判平成18年7月13日金法1785号45頁、大阪地判平成19年4月12日金法1807号42頁)に照らせば、金融機関の側でも一定のセキュリティ対策や顧客に対する注意喚起を行うなどの措置を講じることが求められうるものの、そのような措置を十全に行っているのであれば、ネット不正送金において金融機関が直ちに責任を負うとは言い難い事例もあるだろう。法人顧客の補償に関する自主ルールもない現段階においては、補償についてどのように考えるか、各金融機関においては頭を悩ませているところかと思われる。

 多くの地方銀行においては、4月下旬から、不正送金のリスクの高い、法人向けインターネットバンキングにおける都度指定方式の「当日扱い」サービスの提供を停止しているが、今後、インターネットバンキングの利便性、不正送金のリスク、セキュリティ対策の程度などを考慮してどのようにサービスを提供するか、また、どのような補償対応を行うか、金融機関にとって頭の痛いところであろう。


 [IG1]日経5月16日速報

 [IG2]日経5月23日速報

 

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