◇SH1336◇コンプライアンス経営とCSR経営の組織論的考察(7)-組織のライフサイクルと組織文化② 岩倉秀雄(2017/08/08)

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コンプライアンス経営とCSR経営の組織論的考察(7)

――組織のライフサイクルと組織文化②――

経営倫理実践研究センターフェロー

岩 倉 秀 雄

 

 前回は、創業時に組織文化が形成・強化される仕組みについて、シャインの論考をまとめて提示するとともに、それに関連して、筆者の組織創業の経験に基づく感想を述べた。

 今回は、創業時の組織文化が形成・強化される仕組みについて、もう少し考察したい。

 

(1)「創業者が組織文化を創る。事業家である創業者の個人的信念、仮定、価値観が、雇われた人に押し付けられ(メンバーにふさわしくない人は去る)、その組織が成功すると、文化は共有され、正しいと認識され、最終的に当たり前のこととなる。……後略]

 筆者は、創業者が1人で事業を始め、他は雇われた人である場合には、単純にこのようになる可能性が高いと思われるが、他のバリエーションについても考えてみたい。

 例えば複数で共同事業を始める場合には、当初は円滑にコミュニケーションが取れていたとしても、成功するにつれて、考え方の違いや利害関係の衝突から主導権争い(時には徒党を組む場合もある)が発生し、団結力の強いグループが残り、そうでない者は不満から元の組織を離脱して新たな集団を形成する可能性が高いと思われる。元の組織に残ったグループのリーダーは、離脱したグループに対抗して自組織の存在価値や目標を鮮明にする必要がある。創業者は、再び路線の対立から組織が混乱することを避けるために、この組織は何のために存在し、何を目指すのか、どのような価値観を持つのかを明確にして、組織メンバーに徹底(共有化)しようとする。元の組織に残ったメンバーは、離脱して新たに発生した対抗勢力との対抗軸を明確にし、それに結束する。やがて、それが自分と所属する組織を守ることに役立つと納得した時、その価値観は定着し組織文化として暗黙の仮定になる。

 一方、離脱したグループは、もとの組織に対抗して自分達の考え方ややり方を明確にする必要があり、やはり、元の組織とは異なる理念やビジョンを作成し、両組織は正当性を争うことになる。その結果、存在感を示すことに成功すれば、それはその組織の文化となる。

 以上は、一つの組織から分裂して新たな組織が誕生するケースだが、場合によっては、ベンチャー企業のように既存の勢力が存在するところに、新たな組織が誕生する場合もある。その場合にも、新たな組織は、既存の勢力に対抗して存在価値を社会に示す必要がある。創業経営者は、組織存続のためにより明確なビジョンと価値観を示し成功し続ける必要があり、それが組織内に定着して組織文化になる。

 

(2) 組織文化は、実際にそれに沿って行動することで、繰り返し検証され、補強され組織が成功すると、文化は強力になる。逆に、組織が失敗した場合には、創業者は排除され、創業者が掲げた仮定に疑問が投げかけられ、初期の文化は放棄される。

 筆者は、創業時の組織文化の形成に失敗し放棄されたケースを、日本ミルクコミュニティ(株)の創業時に経験した。詳細は、後に述べることになるが、概略を述べると次のとおりである。

 3者合併組織である日本ミルクコミュニティ(株)は、創業1年目で、当初計画した事業計画の達成に失敗し債務超過の危機に陥り、創業時の経営陣はごく一部を除いて総退陣した。新たに任命された経営陣は、これまでの合併時の主力となっていた某社中心の(組織文化とこれを反映した)経営方法を改めた。(改めざるを得なかった。)

 新経営陣は、従業員満足度調査を実施して問題点を把握し、それを改める施策を実行した。合併会社にありがちな「出身会社主義」を修正し、「実力主義と現場主義」のスローガンを全職場に掲げて、公平性に配慮した新たな価値観を呈示した。

 そして、新経営陣が分担して、全国を廻って新しい考え方を説明し、従業員と酒を酌み交わして対話を続けた。また、当初の給与体系や処遇制度を全面的に改め、実力に基づく公平・平等な評価・処遇とチームとして協力することを推奨・評価する「チーム力強化活動」を展開し人事評価制度に導入した。また、現場の長を執行役員とし、現場に権限委譲する体制とした。

 スローガン(新たな価値=組織文化)を唱えるだけではなく、旧組織文化を反映した制度を撤廃し、新たな組織文化を裏づける新制度の導入を同時に行い、対話を通してそれを 浸透・定着させた。

 その結果、従業員の志気は大いに高まり、他の合理化施策の実施効果もあり、債務超過により存続の危機に陥っていた同社は、翌年には単年度黒字化を実現し、経営再建計画を1年前倒しで実現した。

 まさに、創業者の仮定に疑問が投げかけられ、初期の文化が放棄され、それに代わる組織文化が形成され浸透・定着し成功をもたらした例であった。

 

 次回は、引き続きシャインの論考を材料にして、筆者の考察を続ける。

 

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