監査役協会、監査役の英文呼称の採用状況に関するアンケート調査結果を公表
岩田合同法律事務所
弁護士 柏 木 健 佑
公益社団法人日本監査役協会は、平成26年9月19日、「監査役の英文呼称の採用状況に関するアンケート調査結果」を公表した。同調査は、日本監査役協会の協会会員のうち監査役設置会社かつ上場会社を対象に実施され、1368社から回答がなされた(うち、監査役の英文呼称を定めている会社は1043社)。調査結果は以下の表のとおりであるが、平成24年に監査役の英文呼称として同協会が推奨することとした英文呼称である「Audit & Supervisory Board Member」を採用している会社は全体で681社で、監査役の英文呼称を定めている会社の65.3%強を占める結果となった。
日本監査役協会は、従来、監査役の英文呼称として「Corporate Auditor」を推奨してきたが、平成24年に見直しを行い、監査役が、業務執行に関する情報の収集・提供や評価を行う「監査」にとどまらず、業務執行に関する意思決定にも関与する広義の監督を行う機能(supervisory機能)を有することを適切に表現する呼称として「Audit & Supervisory Board Member」を推奨することとした。
平成24年の英文呼称の見直しの背景には、日本の監査役制度が、業務執行に対する広義の監督機能(supervisory機能)を有していることについて、必ずしも外国人投資家等の理解が十分に得られていないという事情があった。
諸外国の上場会社において採用されている業務執行に対する監督のモデルとしては、モニタリング・モデルと呼ばれる、株主に選任された取締役から構成される取締役会が、基本的に業務執行に関与せず、経営の基本方針の決定、業績評価、業務執行者の選任・解任というモニタリングに専念する機関設計によるものが一般的であり[1]、日本では委員会設置会社がこれに近い機関設計のモデルである。
これに対し、監査役設置会社では、取締役会が業務執行者に対する人事権の行使等により監督を行い、監査役(会)は業務執行において善管注意義務違反に反する行為がないのか等の観点からの監督を行うという形で、取締役会と監査役(会)が協働して業務執行に対する広義の監督機能を担うことが予定されているため、業務執行者の選任・解任の権限を有しない監査役が業務執行に対する監督権限を有するという点で外国人投資家にはわかりにくい側面があった。今日、株式会社制度をグローバルな視点で見た時、supervisory機能の充実の度合いが注目されているという状況が認められるのであり、改称の必要性が高まっていたと言えよう。
また、監査役について「Corporate Auditor」との呼称を用いることで、監査役とinternal auditor(内部監査人)又は会計監査人(external auditor)との混同を生じさせ、監査役(会)の持つ広義の監督機能が伝わりにくい難点があった。
もとより、推奨された英文呼称も完全なものではなく、使用が強制されるわけではないが、今回の調査結果では、日本監査役協会が推奨する英文呼称が浸透しつつあることが示された。平成26年6月27日に公布された改正会社法では監査等委員会設置会社[2]が新設され、コーポレートガバナンスのあり方に注目が集まる中、監査役設置会社においても、外国人投資家に対して監査役(会)の持つ広義の監督機能を説明する必要が高まっていることが反映された結果であると言える。
以上
|
一部上場 |
二部上場 |
ジャスダック その他上場 |
合計 |
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Audit & Supervisory Board Member |
493社 |
66.0% |
82社 |
61.7% |
106社 |
65.0% |
681社 |
65.3% |
Auditor |
56社 |
7.5% |
20社 |
15.0% |
24社 |
14.7% |
100社 |
9.6% |
Company Auditor |
2社 |
0.3% |
0社 |
0.0% |
0社 |
0.0% |
2社 |
0.2% |
Corporate Auditor |
139社 |
18.6% |
19社 |
14.3% |
19社 |
11.7% |
177社 |
17.0% |
Statutory Auditor |
30社 |
4.0% |
3社 |
2.3% |
6社 |
3.7% |
39社 |
3.7% |
その他 |
27社 |
3.6% |
9社 |
6.8% |
8社 |
4.9% |
44社 |
4.2% |
総計 |
747社 |
133社 |
163社 |
1,043社 |
※割合については小数点第2位を四捨五入