◇SH1228◇金融庁、「コンテンツ事業に関するQ&A」の公表 鈴木智弘(2017/06/12)

未分類

金融庁、「コンテンツ事業に関するQ&A」の公表

岩田合同法律事務所

弁護士 鈴 木 智 弘

 

 金融庁は、平成29年5月31日、映画製作等のコンテンツ事業における資金調達時の金融商品取引法(以下「金商法」という。)の適用関係を明確化するために、「コンテンツ事業に関するQ&A」を取りまとめ、公表した。

 

 コンテンツ事業とは、一般に、映画、音楽、演劇、アニメーション等のコンテンツの制作等を業として行うことをいう(コンテンツの創造、保護及び活用の促進に関する法律2条参照)。コンテンツ事業における資金調達の方法は、下記の図[1]に記載されているとおり、①製作委員会方式、②クラウドファンディング、及び③コンテンツ・ファンドの3つの方法が存在する(各方法の内容については下記の図をご参照いただきたい)。

 これらのうち、②の一類型である投資型クラウドファンディング及び③コンテンツ・ファンドについては金商法の適用対象となる。他方で、①製作委員会方式及び②の一類型である寄付型・購入型クラウドファンディングによる資金調達に関しては、今般の「コンテンツ事業に関するQ&A」の公表によって、金商法の適用除外となる具体的な事例が明確化された。寄付型・購入型クラウドファンディングについては、出資に基づく権利が自らの出資額を超えるリターンを受けないことを内容とするものであれば、金商法2条2項5号ロの規定によりみなし有価証券に該当しないために、金商法が適用されない。

 本稿においては製作委員会方式に関する金商法の考え方を以下に紹介する。

 

 

 そもそも、製作委員会とはあるコンテンツ事業を共同で実施するために結成される民法上の任意組合等を指し、製作委員会への出資は一般に民法667条の組合契約に基づく出資であると考えられるため、当該組合契約に基づく権利のうち、出資対象事業に係る収益の配当又は財産の分配を受けることができる権利は、原則として金商法2条2項5号により有価証券とみなされ、金商法の適用対象となり開示規制や業規制等が課せられることになる。

 ただし、金融商品取引法第2条に規定する定義に関する内閣府令(以下「定義府令」という。)7条1項3号の要件を満たすものについては、公益又は出資者の保護のために支障を生ずることがないと認められることから、有価証券とはみなされず、金商法の適用除外となる。具体的な要件は以下のとおりである。

  1. ㋐ 法人・団体が他の法人・団体と共同して専らコンテンツ事業を行うことを約する契約に基づく権利であって、下記㋑から㋓の要件すべてに該当すること。(定義府令7条1項3号)
  2. ㋑ 出資者のすべてが、上記契約に係るコンテンツ事業の全部又は一部に従事すること。(同号イ)
  3. ㋒ 出資者のすべてが、当該コンテンツ事業に係る収益の配当又は財産の分配を受けることができる権利のほか、当該事業に従事した対価の支払いを受ける権利又は当該事業に係るコンテンツの利用に際し、自社の名称を表示し若しくは自社の事業の広告・宣伝をすることができる権利を有すること。(同号ロ)
  4. ㋓ 上記契約に基づく権利について、他の出資者に譲渡する場合及び他の出資者のすべての同意を得て出資者以外の者に譲渡する場合以外の譲渡が禁止されること。(同号ハ)

 金融庁の資料[2]では、製作委員会方式の構造や上記㋑のコンテンツ事業の一部に従事していると考えられる場合の例が以下のとおりまとめられている。

 

 

 「民法上の任意組合に関する金商法の適用関係の明確化」は、金融庁が平成22年12月24日に公表した「金融資本市場及び金融産業の活性化等のためのアクションプラン」[3]の方策の1つにも掲げられており、かかるアクションプランを踏まえて平成23年7月29日付で定義府令が改正されて同7条1項3号が新設されたという経緯がある。

 今般の「コンテンツ事業に関するQ&A」の公表により金商法の適用関係が一層明確化されることとなり、(事業としての実態を踏まえた個別的な判断も要求されるものの)コンテンツの製作委員会への適切な成長資金の供給が図られ、コンテンツ事業の成長の一助となることを期待したい。

 

タイトルとURLをコピーしました