◇SH0149◇消費者庁、「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」の成案を公表 佐藤喬城(2014/11/27)

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消費者庁、「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」

の成案を公表

岩田合同法律事務所

弁護士 佐 藤 喬 城

 消費者庁は、平成26年11月14日付で、不当景品類及び不当表示防止法(以下「景品表示法」という。)第7条第2項の規定に基づく「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」(以下「本ガイドライン」という。)の成案を公表した。

 平成 26 年6月、景品表示法の一部改正等に係る法律が成立したところ(同法は同年12 月1日に施行される)、同法により改正された景品表示法第7条第1項は、景品類の提供もしくは自己の供給する商品又はサービスについての一般消費者向けの表示を行う事業者に対し、それぞれの事業者内部において、商品やサービスの不当表示等を未然に防止するために必要な措置を講じること、言い換えれば内部統制システムを構築することを求めている。

 そして、本ガイドラインにおいては、構築すべき内部統制システムとして、以下の7種類の措置が定められている。

 

1

景品表示法の考え方の周知・啓発

2

法令遵守の方針等の明確化

3

表示等に関する情報の確認

4

表示等に関する情報の共有

5

表示等を管理するための担当者等を定めること

6

表示等の根拠となる情報を事後的に確認するために必要な措置を採ること

7

不当な表示等が明らかになった場合における迅速かつ適切な対応

 

  例えば、3から6の措置を講じた体制の概念図は、以下のとおりである(消費者庁「改正景品表示法に基づく政令・指針専用ページ」http://www.caa.go.jp/representation/keihyo/guidelines.htmlより引用)。

 

 

 但し、構築すべき内部統制システムの具体的内容が一律に定められているわけではなく、その具体的内容は、上記項目に沿った形で、事業者の規模や業態、取り扱う商品またはサービスの内容等に応じ、事業者自らが設定すべきものとされている(本ガイドライン第2の2)。例えば、上記の図の情報確認措置(3の措置)については、小売業であれば商品提供段階で表示の根拠となる情報を確認すれば足りる一方で、飲食業であれば、材料調達段階・加工製造段階・顧客への提供段階と、複数の段階における当該情報の確認を組み合わせて実施することを要すると考えられる(本ガイドライン第4の3)。このように、事業者ごとに構築すべき内部統制システムの内容は異なり得るが、本ガイドラインは別添において上記7種類の項目に沿った措置の具体例も掲げており、その具体例としては、例えば以下のものがある(あくまで「参考」とされている点に留意されたい。)。

 

1の措置

①朝礼・終礼において、関係従業員等に対し、表示等に関する社内外からの問合せに備えるため、景品表示法の考え方を周知すること。

②関係従業員等に対し、景品表示法に関して一定の知識等を獲得することができるよう構成した社内の教育・研修等を行うこと。

2の措置

①法令遵守の方針等を社内規程、行動規範等として定めること。

②禁止される表示等の内容、表示等を行う際の手順等を定めたマニュアルを作成すること。

3の措置

①企画・設計段階で特定の表示を行うことを想定している場合には、どのような仕様であれば当該表示が可能か検討すること。

②調達する原材料等の仕様、規格、表示内容を確認し、最終的な表示の内容に与える影響を検討すること。

③生産・製造・加工が仕様書・企画書と整合しているかどうか確認すること。

④企画・設計・調達・生産・製造・加工・営業の各部門の間で表示しようとする内容と実際の商品・役務とを照合すること。

4の措置

①社内イントラネットや共有電子ファイル等を利用して、関係従業員等が表示等の根拠となる情報を閲覧できるようにしておくこと。

②企画・設計・調達・生産・製造・加工・営業等の各部門の間で、表示等の内容と実際の商品若しくは役務又は提供する景品類等とを照合すること。

5の措置

①既存の品質管理部門・法務部門・コンプライアンス部門を表示等管理部門と定め、当該部門において表示等の内容を確認すること。

②社内資格制度を設け、表示等管理担当者となるためには、景品表示法等の表示等関連法令についての試験に合格することを要件とすること。

6の措置

①表示等の根拠となる情報を記録し、保存しておくこと。

②製造業者等に問い合わせれば足りる事項について、製造業者等に問合せができる体制を構築しておくこと。

7の措置

①表示等管理担当者、事業者の代表者又は専門の委員会等が、表示物・景品類及び表示等の根拠となった情報を確認し、関係従業員等から事実関係を聴取するなどして事実関係を確認すること。

②速やかに当該違反を是正すること。

③関係従業員等に対して必要な教育・研修等を改めて行うこと。

 

 景品表示法については、不当表示等について課徴金制度を導入する内容の改正法が、第187回国会(臨時会)において、衆議院解散直前の平成26年11月19日に成立しており(同日の参議院本会議による可決によって成立。)、公布の日から1年6ヶ月以内に施行するものとされている。現行法下では、不当表示等を行った事業者に対し用意されている制裁は措置命令に留まり、当該事業者は、不当表示等によって得た利益を剥奪されることがない。しかし、今後、上記改正法下においては、不当表示等を行った事業者は、課徴金による直截な経済的不利益を受ける。その意味で、内部統制システムを構築し不当表示等を未然に防止することは、事業者の経済的なリスクの回避に直結することとなる。

 不当表示等を未然に防止するための内部統制システムを構築することは、改正後の景品表示法上の義務として求められるものではあるが、課徴金制度を視野に入れたときには、事業者のリスク管理の観点からもより一層重要な意義を有するものといえよう。

(さとう・たかき)

岩田合同法律事務所弁護士。2009年東京大学法科大学院卒業。論考に、『各業務における反社勢力対応のポイント』(共著 銀行実務658号)『Q&Aインターネットバンキング』(共著 金融財政事情研究会)等がある。

岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/

<事務所概要>

1902年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。

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